
葬儀社からのお見積もりを見て、「思ったより費用がかからないな」と安心されるご遺族は少なくありません。しかし、実は葬儀社の見積書には、お坊さんへのお布施や参列者の飲食代が含まれていないことがほとんどです。そのため、お葬式の後になってから次々と追加の支払いが発生し、想定外の出費に慌ててしまうケースがよくあります。相続税の計算において遺産から差し引く(控除する)ことができるのは、葬儀社に支払う金額だけではありません。お寺への支払いなどを含めた「実際にかかった総額」から、控除できるものとできないものを正しく見極めることが重要です。この記事では、相続税の計算で控除の対象となる葬儀費用の内訳や注意点について、初めての方にもわかりやすく解説します。
葬儀費用は大きく分けて「葬儀社に支払う基本費用」「お寺などへの宗教費用」「参列者への飲食費用」の3つがあります。
相続税の計算では、これら3つを足した総額を遺産から差し引く(控除する)ことが可能です。
しかし、葬儀社の見積書には「基本費用」しか書かれていないことがほとんどです。
そのため、後から追加費用が発生し、当初の予算を大幅に超えてしまうケースが少なくありません。
ご家族を亡くされた悲しみの中で、慣れない費用の計算をするのは本当に負担が大きいものです。
不安なことがあれば、決して一人で悩まず、葬儀社や税理士などの専門家に相談してください。
ちなみに、これらすべてを含めた葬儀費用の全国平均は、100万円から150万円程度と言われています。
お通夜や告別式を行うための費用が、葬儀社の見積書に書かれている「基本費用」です。
ここで見落としがちなのが、病院からご自宅、斎場へご遺体を運ぶ「搬送費用」です。
この搬送費用も、お葬式に不可欠な費用としてしっかり控除の対象になります。
さらに近年では、専門家によるエンバーミング(遺体衛生保全)や、湯灌(ゆかん)・死化粧などの費用が含まれることも増えました。
これらも「ご遺体の取り扱いに直接欠くことのできない費用」として控除が可能です。
見積書には専門用語が多いため、控除できる主な項目を整理しておきましょう。
一方で、注意が必要な費用もあります。
思い出のビデオ上映や生演奏(献奏)などの特殊な演出にかかる費用です。
これらは「お葬式に直接欠くことのできない費用」とは認められず、控除対象外(否認)となるリスクが高いため気をつけましょう。
また、あまりにも豪華すぎる演出も「一般的なお葬式の範囲外」と税務署に判断され、全額を控除できなくなるおそれがあります。
なお、基本費用をクレジットカードで支払うケースも増えています。
カードの利用明細も支払いの証明になりますが、明細に決済代行会社の名前しか載らないことがあります。
そのため、葬儀社から発行されるレシートや売上票も必ずセットで保管しておくと安心です。
お坊さんにお渡しするお布施や戒名料なども、お葬式に必要な「宗教費用」として控除できます。
読経料だけでなく、お車代(交通費)や御膳料(お食事代)も対象です。
しかし、お布施には定価がないことが多く、いくら包めばいいか悩む方も多いでしょう。

相場が分からない時は、お寺に直接聞くか、ご予算を伝えて相談してみるのが一番確実です。
また、お布施はお寺から領収書が出ないのが一般的です。
その場合は、「いつ」「誰に(お寺の名称・住所・電話番号)」「何の目的で」「いくら」支払ったかをメモしておきましょう。
大学ノートはもちろん、スマートフォンのメモ帳やExcelで作成したデータでも、立派な証明資料になります。
さらに、お布施として渡す現金を銀行口座から引き出した際の「通帳の記録(出金履歴)」を残しておきましょう。
メモと一緒に保管しておくことで、客観的な証拠として税務署からの信用性がより高まります。
通夜振る舞いや精進落としなど、参列者への飲食代も控除の対象になります。
予算の目安は、参列者一人あたり5,000円から7,000円程度です。
予想以上に多くの方がお見えになり、急きょお弁当などを追加した場合の費用も控除できます。
そのため、故人様の交友関係から大体の人数を予測しておくことが大切です。
ここで最も注意したいのが、参列者にお渡しする「返礼品」と、親族などの「宿泊費・交通費」の扱いです。
数百円程度のお茶やお塩など、全員に一律でお渡しする「会葬御礼」は控除できます。
しかし、お香典をいただいた方へお渡しする数千円のカタログギフトなどは「香典返しの即日返し」となります。
この「香典返し」にかかる費用は、相続税の計算では一切控除できません。
また、遠方から来る親族の新幹線代やホテル代、遺族が斎場の仮眠室に泊まるための宿泊布団代などは「遺族や親族が負担すべきもの」とされ、控除の対象外となります。
なお、常識的な範囲のお香典であれば、受け取った側(ご遺族)に税金はかかりませんのでご安心ください。
また、最近は初七日法要をお葬式と同日に行う「繰り上げ初七日」が一般的です。
原則として、初七日や四十九日などの「法要」にかかる費用は控除対象外です。
見積書で葬儀費用と初七日費用が分かれている場合、初七日の部分は控除できません。
ただし、初七日と同日に行う会食(精進落とし)の飲食代は、お葬式の一部として控除が認められます。
請求書が複雑で判断に迷った場合は、自己判断せずに税理士へ相談することをおすすめします。
お葬式に関連する支払いには、様々な種類があることがお分かりいただけたかと思います。
このように、控除できるものとできないものが混ざっている点が、相続税申告の難しいところです。
葬式費用は相続財産から控除できる!対象になる費用と注意点の記事でも詳しく解説していますが、基本的なルールをあらためて整理すると以下のようになります。
ちなみに、自治体などから「葬祭費」や「埋葬料」を受け取った場合でも、そのお金に税金はかかりません。
また、受け取った補助金の分を、葬儀費用の控除額から差し引く必要もありません。
お支払いになった控除対象の葬儀費用は、そのまま全額を遺産からマイナスできます。
いざという時に慌てないよう、ご家族が元気なうちから葬儀費用の仕組みを確認しておくことをおすすめします。