相続財産を寄附しただけでは非課税になりません
相続や遺贈によって取得した相続財産を国や地方公共団体または特定の公益を目的とする事業を行う特定の法人などに寄附した場合、その寄附した相続財産は相続税の対象となりません。いわゆる非課税になる制度があります。
正式名は「国、地方公共団体又は特定の公益を目的とする事業を行う特定の法人などに寄附した場合の特例」と言いますが、これが認められるには、以下の条件を全て満たす必要があります。
なお、被相続人が【遺言により寄附した財産】も特例の対象になります。
- 寄附した財産が相続財産である
- 申告期限までに相続税の申告をしている
- 寄附した先が国や特定公益法人などで、公益に貢献すると認められている
1ですが、相続や遺贈で取得した生命保険金や退職金(みなし相続財産)でも可能です。
相続財産である必要があるので、以下のようなものは寄附しても非課税の対象にはなりません。
- 香典で頂いた金銭
- 相続人自身の財産
- 相続財産を換金したお金での寄附
注意点は現金以外の相続財産を換金して、そのお金を寄附しても特例の対象とはなりません。
2ですが、単純に相続税の申告書を期限内に提出していれば済むというわけではありません。
寄附をしたという【一定の証明書類を添付】する必要があります。これがないと特例の対象とはなりません。
証明書が申告期限までに間に合わなかった場合、特例の対象にならないということです。
この証明書は寄付先に発行してもらう必要があり、この発行手続きに1~2カ月かかることもあります。
遺産分割が難航して、申告期限ぎりぎりで寄附した場合には、この証明書が間に合わなくなる可能性が高くなります。
相続財産の寄附を考えている場合には、相続税の申告期限よりも「早い期限がある」ということを意識しましょう。
3ですが、特例の対象となるものは、独立行政法人や社会福祉法人などに限定されています。
また、寄附した時点で既に存在していないといけません。(これから設立します、という所への寄附は原則、認められません。)
こんな寄附は認められない
以下のような寄附は、期限内に一定の書類を添付して申告しても認められません。
- 寄附が公共の目的以外に使われる
- 寄付先から特定の相続人が恩恵を受けている
- 2年以内に寄付先が消滅することが判明している
寄付先には注意しましょう。また、回り回って「相続人自身が得する」ような寄附も認められません。
寄附で相続財産を非課税にする場合には、本物の寄附である必要があります。
動画で解説
相続財産の寄附について、税理士法人・都心綜合会計事務所の税理士・田中順子が解説しています。
字幕が付いておりますので、音を出さなくてもご視聴出来ます。
動画内容
国や地方公共団体、または特定の公益を目的とする事業を行う特定の法人などに、相続した財産を寄付した場合、その寄附した財産には、相続税は課税されません。
よって、相続財産の寄附には節税効果があります。
ただ、意図的に税負担を軽くするような寄付と認められれば、非課税とはなりません。
たとえば土地を寄付したのに、寄付後にその土地を、寄付した団体から安い賃貸料で借り受けるなど、自分に利益が還ってくるような行為は、認められないので注意しましょう。
また、寄付を非課税とするためには、いくつか条件がございます。
まず、相続税の申告期限までに寄付を行い、寄付を行った先から証明書を受け取ること、その証明書をその相続税の申告書に添付し、期限内に相続税の申告を済ませることです。
したがって、証明書を発行してもらう期間を考慮し、寄付は早めに行う必要があります。
また、寄付を受け取る側の団体については、その寄付の時に、現実に存在する団体でなければなりません。
さらに寄付を受けた後、2年以上引き続き事業を継続していること、なども必要です。
もし、2年以内に寄付を受けた財産が、異なる事業の用途に使用される場合、この非課税の適用はありません。
寄付による非課税を活用する場合は、条件を確認し、それを満たせるよう計画的に行いましょう。