【公益法人設立のための寄附=非課税】ではない
公益法人設立のために、相続財産を全て寄附すれば、「一切相続税がかからない」と思われるかもしれません。
ただし、事はそう単純ではありません。
今回は、そんな【公益法人設立への寄附】について、解説しています。
新たな公益法人設立への寄付は原則課税
被相続人(亡くなった方)である父は、生前に自分の財産で公益法人の設立を考えていた。
父の意思を受け継ぎ、父から遺産相続した財産を、相続人は公益法人の設立のために寄付したいと考えている。
この場合の寄付は、相続税の課税対象から除かれるのか?(いわゆる非課税となるのか?)
結論としては否であり、原則は課税されます。(非課税となりません。)
通常、既に存在している(設立されている)特定の公益法人に対しての寄附であれば、非課税になる特例があります。
ただし、このケースのような新たに設立するための寄附は、特例の対象にはならず、原則課税となります。
ただし、絶対に特例の対象にならない、という訳でもありません。
ちなみに特例の正式名は、【国、地方公共団体又は特定の公益を目的とする事業を行う特定の法人などに寄附した場合の特例】と言い、公益法人であれば全て非課税となるわけではありません。
非課税になる条件は、相続財産の寄附は手続きを失敗すると非課税ではなく課税されるに記載しています。
設立許可申請中の相続の場合は非課税
公益法人の設立許可申請中に、被相続人が亡くなった場合は、公益法人がその遺産を、被相続人の遺言により取得したものとして、非課税の規定(いわゆる特例)の対象となります。
ただし、そもそも寄付先が
- 国や特定公益法人ではない
- 公益に貢献すると認められない
など、非課税となる条件を満たさない場合には、もちろん非課税とはなりません。
設立許可申請前の相続の場合は条件によっては非課税
設立許可申請前に相続が発生したとしても、以下の条件を全て満たす場合には、特例の対象となってきます。
- その公益法人が相続税の申告期限までに設立されている(注1)
- 公益法人設立のために遺産を提供することが、被相続人の意思であることが明らかである(注2)
- 被相続人の親族、その他特別関係者の相続税の負担を、不当に減少するための寄附(後で寄付先から恩恵を受ける等)でないことが明らかである
注1:期限までに設立が間に合わない、正当な理由があると認められる場合には、その期限までに設立許可申請がされていること
注2:被相続人の意思の確認は、以下により判定します。
- 被相続人の日記などで意思を確認出来る
- 被相続人から設立に係る寄附行為があった
- 被相続人の指示を受けた者が、設立の準備を進めていた
- その他、被相続人の生前の設立意思を確認できる事実がある
動画で解説
公益法人を設立するために、相続財産を寄附したときの相続税について、税理士法人・都心綜合会計事務所の税理士・田中順子が解説しています。
字幕が付いておりますので、音を出さなくてもご視聴出来ます。
動画内容
皆さんは、公益法人のために相続財産を寄附すると相続税が非課税になる、というお話を聞いたことはないでしょうか。
しかし、公益法人なら何でもよいかというと、そういう訳ではありません。
たとえば、新たに設立する公益法人への寄附は原則、非課税にならず、課税対象となります。
具体例で考えてみましょう。
たとえば、父が生前に自分の財産で公益法人の設立を考えていたとします。
その父が亡くなったので、お子さんたちが意思を継ぎ、父から相続した財産を公益法人の設立のために寄附するとします。
ところが、この場合は原則として非課税になりません。
理由は、まだ法人が存在していないからです。
しかし、例外的に認められる場合もあります。
たとえば、設立許可の申請中に、相続が発生した場合です。
この場合は、公益法人がその遺産を被相続人の遺言により取得したものとして、非課税の対象になる余地があります。
ただし、ここでも確実に非課税になるとは言い切れません。
そもそも、公益法人イコール非課税、というような法律にはなっていないからです。
相続税が非課税になるものというのは、法律にきちんと特例として定められており、公益法人に関する特例としては、「国、地方公共団体又は特定の公益を目的とする事業を行う特定の法人などに寄附した場合の特例」というものがあります。
もうこの時点で、公益法人だから非課税にしますよ、というような、わかりやすい話ではないことが推察できます。
では、設立許可を申請中の公益法人であれば、どのような条件を満たせば非課税になるのでしょうか。
条件は、全部で3つあります。
1つ目は、その公益法人が相続税の申告期限までに設立されているということ。
2つ目は、公益法人設立のために遺産を提供することが、被相続人の意思であることが明らかであること。
3つ目は、被相続人の親族や特別関係者の相続税の負担を、不当に減少するための寄附でないことが明らかであること。
この3つとなります。
1つ目は、設立の期限に関する条件になります。
もし、仮に設立が間に合わないというときは、正当な理由があると認められれば、その期限までに設立許可の申請がされていることでも良いとされています。
2つ目は、被相続人の生前の意思にかかわるものです。
亡くなった人の意思ですから、生前の行動で判定することとなります。
具体的には、生前の日記などで意思を確認できる、被相続人から公益法人の設立に関係する寄附が行われていた、被相続人の指示を受けた人がいて設立の準備を進めていた、その他公益法人の設立に関して被相続人の生前の意思を確認できる事実がある、といった点から判定することとなっています。
最後3つ目は、公益法人への寄附を相続税の脱税に利用していないか、ということです。
たとえば、寄附をした後に相続人が恩恵を受けるような状況があれば、非課税とは認められない可能性があります。