共有財産にすると後に問題が起きやすい
相続税対策として、相続人間で不動産などを共有財産(共有名義)にすることがあります。

相続税の節税などを考え、不動産を共有にする
でも、共有財産にしてしまうと、後々その不動産を売却や処分するといった時に、面倒になります。
親族間の共有・他人との共有に関係なく、
- 共有名義の不動産を売却
- 共有名義の不動産を処分
- 共有名義の土地の上に建物を建てる
といった時には、名義人全員の同意が必要だからです。

共有名義の売却や処分には、名義人全員の同意が必要
相続発生直後には相続税の節税などを考え、相続人間での合意がとれて円満に財産を共有したとしても、月日が流れると【各相続人の事情】が変わってきます。
例えば、AさんとBさんが不動産賃貸用のマンションを共有名義で相続したとします。
それから数十年後。
そのマンションに売却の話が持ち込まれました。
共有名義人のAさんは、不動産収入が入ってくることなどから売却には反対。
共有名義人Bさんは、マンションの管理をするのが面倒なので売却には賛成。
この場合、Bさんがマンションを売却したいと思っても、Aさんの賛成がないと売却できません。
共有名義人がAさんBさんだけでなく、もっとたくさんいたら?
名義人全員の同意は容易ではありません。
相続発生直後には、このようなトラブルまで想定することはなかなか難しいです。
ただ、このようなトラブルも、本を正せば共有財産にしたことが原因です。
相続トラブルは相続発生直後ではなく、このように遅れてやってくるものもあります。
逆に言えば、共有財産にすることは相続トラブルの元を作るとも言えます。
相続税対策のことを考えて、共有財産にしたほうが有利というような場合でも、共有財産にした後のことを考える必要があります。
相続が発生すると共有名義人が増える?
先ほどAさん、Bさんの話がありました。
もしもBさんが亡くなり相続が発生し、Bさんの相続人がC~Fさんまでいたと仮定します。
C~Fさん達は節税対策などを考えて、先のマンションを共有財産(共有名義)としました。
この時点でマンションの共有名義人は、A,C,D,E,Fの5人となります。
もしもEさんが亡くなり、Eさんの相続人の方が節税対策などを考慮して、マンションを共有財産(共有名義)にしたら・・
Fさんが・・。
このように相続が発生すると共有名義人が増えやすくなります。

相続が発生すると共有名義人が増えやすい
このマンションの処分などは、共有名義人の全ての方の同意が必要です。
そして相続で共有名義人が増えるということは、見知らぬ人と財産を共有する確率が高くなることも意味します。
これは後に様々なトラブルの原因にもなりやすくなります。

共有名義人に見知らぬ人がいる
節税対策も大事ですが、共有財産に極力しないことも意識しましょう。
共有財産の共有を解除する方法
共有財産の共有を解除する方法は、主に3つあります。

主な方法は3つ
注意点としては以下の3つの解除方法全て、共有者(名義人)全員の同意が必要です。
- 分割する
- 共有者の持ち分を買い取る
- 第三者に売却して、売却代金を持分割合で分ける
上記の3つ方法をご紹介しますが、一番いいのは相続の時に共有財産を作らないことです。
各相続人が単独で所有する形で相続するのが賢明です。
分割する方法
持ち分割合などによって、土地だったら分筆する。
建物だったら区分所有することを検討しましょう。
なお、土地の分筆については、土地を分筆して評価額を減額する相続税対策にて詳しく記載しています。
共有者の持ち分を買い取る方法
共有者が現金などで他の共有者の持分を買い取るなどをして、名義を1人にします。
金額は持分割合などで計算します。
第三者に売却して、売却代金を持分割合で分ける方法
共有名義のまま第三者にまるごと売却し、売却代金を持分割合などで分けます。
当事者間で共有名義の解消の話がまとまらない場合には、裁判所で行う方法もあります。
動画で解説
共有財産は相続トラブルの元、ということについて、税理士法人・都心綜合会計事務所の税理士・田中順子が解説しています。
字幕が付いておりますので、音を出さなくてもご視聴出来ます。
動画内容
相続財産を分ける方法には、遺言書によって分ける方法、法定相続分によって分ける方法、遺産分割協議によって分ける方法がございます。
どのような分け方をしても、相続人同士で納得していれば、最終的には問題ありません。
それぞれが別の財産を相続しても構いませんし、ひとつの財産を複数人の相続人で、共有名義として相続することもできます。
みんなで分けることは、一見平等で何の問題もないように思えますが、相続財産を複数人の共有名義にすると、後の手続きが大変です。
たとえば共有名義の不動産は売却、あるいは処分をしたいときに大変です。
この時は、共有名義人全員の同意が必要になります。
共有名義人の中には相続後に気が変わってしまい、協力してくれない人が出てくることもあるでしょう。
連絡がつけばまだマシだと思います。
もし共有名義人の1人が亡くなってしまった場合、その共有名義人の、さらに相続人となる人が不動産の持ち分を相続します。
1つの不動産に対する権利がどんどん複雑化していくのです。
こうなると売却や処分は簡単にはできません。
連絡がつかない、売却に同意しない人が出てくるなど、トラブルが発生することが十分に考えられます。
このような後のトラブルが起こらないよう、相続財産はなるべく共有名義にしないことも大切になってきます。
もし今、共有名義で相続した不動産などをお持ちの方が、その共有状態を解除するには、土地の分筆や建物を区分所有して分割する、共有者の持ち分を買い取る、あるいは第三者に売却してその売却代金を分ける、といった方法があります。
もし共有状態を解除したい場合は、今以上に権利が複雑にならないよう、早めに共有名義人同士で話し合いを行いましょう。