外貨の相続税評価方法で使う為替レートは対顧客直物電信買相場(TTB)
外貨の「相続税評価方法や計算例」を記載しています。
為替レートは複数ある
外貨なので、相続税評価するためには、邦貨換算(円換算)する必要があります。
単純に為替レートで換算すれば済む話では・・。と考える方もいらっしゃると思います。
ただ、一口に「為替レート」と言っても、以下のように為替レートは複数あります。
- 証券会社のレート
- 金融機関の公表する為替レート
- 外国為替証拠金取引(いわゆるFX)のレート
また、金融機関の公表する為替レートには、さらに以下のようなものがあります。
- 対顧客直物電信売相場(TTS)
- 対顧客直物電信買相場(TTB)
- 外国通貨売相場(CashSelling)
- 外国通貨買相場(CashBuying)
- 一覧払い買相場(AtSightBuying)
そして、外貨の相続税評価(邦貨換算)には【対顧客直物電信買相場(TTB)、又はこれに準ずる相場】を使用します。

対顧客直物電信買相場(TTB)、又はこれに準ずる相場により評価する
この対顧客直物電信買相場(TTB)は、外貨を購入する(邦貨を支払う)際のレートとなります。
ちなみに、外国税額控除の邦貨換算の場合には、対顧客直物電信売相場(TTS)を使用します。
(詳しくは相続税の外国税額控除の邦貨換算方法は納税者側に有利に記載)
外貨の相続税評価方法の計算例
- 40,000米ドルを相続
- 外国通貨買相場(CashBuying)が112円
- 課税時期の取引金融機関の対顧客直物電信買相場(TTB)が111円
上記のような条件で相続した場合の外貨の相続税評価額は、4,440,000円となります。
計算式は「40,000米ドル × 111円」となります。
外国通貨買相場(CashBuying)の112円は、使用しませんので注意しましょう。
課税時期に相場がない場合
「課税時期に相場がない」という場合があります。
これは被相続人の死亡日が「土日や元旦などの為替相場のない日」に該当した場合です。
このような場合には、課税時期前(死亡日の前)の相場のうち、課税時期に最も近い日の対顧客直物電信買相場(TTB)を使用して、評価することになります。
注意点としては、【前】である点です。
似ているものとして、上場株式の相続税評価で、課税時期に最終価格がない場合には課税時期に最も近い日の最終価格を用いて・・、というものがありますが、同じではないので注意が必要です。
(詳しくは上場株式の相続税評価方法は納税者側に有利に記載)
例えば、以下のような場合には、115円で計算することになります。
- 死亡日の3日前の対顧客直物電信買相場(TTB):115円
- 死亡日の1日後の対顧客直物電信買相場(TTB):113円
動画で解説
外貨を相続したときの相続税評価額の計算方法について、税理士法人・都心綜合会計事務所の税理士・田中順子が解説しています。
字幕が付いておりますので、音を出さなくてもご視聴出来ます。
動画内容
外国の通貨、いわゆる外貨を相続したときも、日本の相続税はかかります。
そして、外貨を評価するには、為替レートで円換算をして行います。
意外と単純な話でよかった、と思われるかも知れません。
しかし、一口に為替レートと言っても、為替レートにはいろいろな種類があります。
証券会社のレート、金融機関の公表する為替レート、外国為替証拠金取引、いわゆるFXのレートです。
また、金融機関の公表する為替レートには、TTS、TTB、外国通貨売相場、外国通貨買相場、一覧払い買相場とさらにたくさんの種類があります。
では、どれを使って円換算すればよいのでしょうか。
それは、相続税評価額の計算ではTTB、つまり対顧客直物電信買相場か、又はこれに準ずる相場を使用することとされています。
TTBとは、外貨を購入する際のレートのことです。
ちなみに、外国の相続税との二重課税を防ぐために、外国税額控除をすることがあります。
このときも円換算を行うのですが、このときはTTS、つまり売るときのレートを使用します。
では早速、外貨の評価方法の計算例を確認してみましょう。
たとえば、4万米ドルを相続したとします。
金融機関のホームページ等から、被相続人が亡くなった日の為替レートを調べたところ、TTBが111円、TTSが110円、外国通貨買相場が112円だったとしましょう。
この場合、どのレートを使えばよいのでしょうか。
正解は、TTBですよね。
よって評価額は、4万米ドル×111円で444万円となります。
最後に、被相続人の死亡日が土日や元旦などの為替相場のない日の場合、どうなるのかについて、解説を致します。
このような場合、死亡日の前の相場のうち、死亡日に最も近い日のTTBを使用して、評価します。
死亡日の前、ということに注意をしてください。
たとえば、死亡日の3日前のTTBが115円、死亡日翌日のTTBが113円だった場合、3日前の115円で評価することとなります。