税務調査の際の署名や捺印は避ける
相続税の税務調査対策について、解説しています。
相続税の税務調査が入ると約8割の方が追徴税を支払う
相続税の税務調査が入るとどうなるか?
正しく申告しているから何も問題はないはず・・。
しかし、現実には税務調査に入られた方の約8割の方が追徴税額、いわゆる罰金(ペナルティ)を受けるという現実があります。
そして追徴税額の平均は、
- 約500万(調査に入られたが追徴税額が0円だった方も含む)
- 約600万(追徴税額を受けた人の平均)
となっています。
そして相続税の申告をした方の大体20~30%の方が税務調査を受けます。
なお、どういう方が調査を受けやすいかは、税務調査はどういう場合に来やすいか?に記載しています。
しかし、なぜ8割もの方が追徴税を支払うことになるのか?
これには相続税特有の難しさが関係しています。
税務調査と一口に言っても、法人税の範囲である会社の税務調査、所得税の範囲である個人の税務調査などがあります。
法人や個人(個人事業主)の税務調査であれば、簡単に言ってしまえば、
- 収入はいくらか
- 経費はいくらか
ということになります。
本来、収入であるものを計上してない。
本来、経費でないものを経費に計上している。
このような調査が基本であり、比較的シンプルで分かりやすいと言えます。
もちろん各税法独自の難しさはありますが、その中でも相続税は税理士の知識と経験が特に求められる税法と言えます。
それは、例えば歪な土地の評価などは、ものすごく極端に言ってしまえば正解がないからです。
相続税は法人や個人の所得のように、収入は?経費は?という世界ではなく、適正な評価額か?という世界だからです。
また、土地の評価額だけではありません。
例えば、相続財産に絵画があったとします。
相続人の全員がその絵画には価値がないと思い、財産という認識もなく、絵画を財産に未計上で相続税の申告をしました。
でも実際は、ものすごく価値のあるものだったら?それが税務調査で判明したら?もうこの時点で追徴税額です。
逆の場合もあります。価値のある絵画として、鑑定結果の金額を相続財産として申告。
でも、後にその絵画が贋作と判明し、価値がないものになった。
(この場合は相続の申告をやり直し、払いすぎた税金を税務署から還付してもらいます。)
絵画の例は分かりやすかったかもしれません。
では、これが土地の評価だったら?
歪な土地であればあるほど、その土地を誰が評価したかによって、評価額は変わってきます。
(詳しくは、財産評価は税理士で激変!利用価値が低い土地は減額可能かも?に記載しています。)
では、その評価額は適正なのか?
そうです。相続税は簡単にコレが間違っているから修正してください。罰金です。といようなシモロノではありません。
土地の評価ひとつにしても、申告した税理士と税務署側で見解が分かれることはザラです。
相続税の税務調査対策には、税法の理解はもちろん、その他の幅広い知識や経験などが必要です。
相続人の方は、普通であれば相続人になるのは一生に1~2回です。
そして、相続税の申告をした税理士が相続に詳しくなかったら・・
国は資産税に力を入れてきていることもあり、優秀な人材が相続税(いわゆる資産税)に集まっているとも言われています。
また、ただでさえ税務調査官はその道のスペシャリスト(法人なら法人のスペシャリスト、相続な相続のスペシャリスト)です。
結果的に、調査に入られたかの8割の方が、平均約600万円もの追徴税額を受けるという事態になります。
税務調査の際に「脱税」しているのでは?と思われる事項
税務調査の際、以下のような事項が判明すると、脱税しているのでは?と疑われやすくなります。
- 死亡した人の預貯金から不明な出金がある
- 故人の過去の収入と比べて、遺産が少ない
- 専業主婦にもかからわず、預金や株をたくさん持っている
- 子供が遠方に住んでいるのに、故人の近くの銀行に子供名義の預金がある
税務調査の際に絶対してはならないこと
税務調査の際に絶対してはならないことがあります。ちなみに、以下のようなことではありません。
- 脱税をあきらめる
- 隠していた財産を明かす
- 生活費という名目で豪遊していたと正直に話す
ちなみに上記に該当するような方は、都心綜合会計事務所では相続税の申告はお断りさせて頂きます。
ここでいう、税務調査の際に絶対してはならないこと=脱税がバレない方法や税務職員をだます方法といった意味ではありません。
税務調査の際に絶対してはならないこと!それはズバリ、署名や捺印に応じないことです。
税務調査の際に、署名や捺印を求められることがあります。
ただ、その署名や捺印する文書は、
- 申告モレがある
- 相続人の反省の気持ちがある
など、相続人が申告モレをして申し訳ありません、というような内容になっている場合があります。
これは、本当に申告モレなのか微妙な時などに、後で税務署側が有利になるとするための行為です。
反省文のようなものに署名したからといって、調査が甘くなったり、仮に追徴税が発生した場合に、その金額が安くなるというものでもありません。
逆に税務署側に有利となる証拠を与えるようなものです。
本当に財産を隠していたり、もともと脱税するつもりという方は論外ですが、相続税では見解の相違が発生しやすい分野です。
税務署側の言っていることに納得できないけれども、調査を早く終わらせたいなどの気持ちで、気軽に税務署側が提示した書類に署名・押印をしてはいけません。
調査官が署名・押印を求めてくるということは、逆に言えば、それだけ課税する根拠が乏しいということでもあります。
なので、納税者に不正を認めさせ課税するということです。
そして、その文書のタイトルは確認書などといった場合が多く、中身を精査せずに署名や押印すると、後に大変なことになります。
税務調査に入られて、何かに署名・押印することは義務ではありません。
税務調査の際には署名・押印はしないようにしましょう。
申告漏れ注意チェックリスト
以下は、相続税申告の際に漏れやすい主な財産です。
税務調査でトラブルに発展しないためにも、相続税の申告前に必ず確認しておきましょう。
- 共有不動産
- 先代名義の不動産
- 別荘や遠方の不動産
- 借地権
- 出資金
- 取引相場のない株式
- 同族会社への貸付金や未収入金
- 相続開始直前に引き出したお金
- 相続開始3年以内の相続人への贈与
- タンス株
- 上場株式や単元未満株
- 私道
- 金地金
- 自動車
- 海外財産
- タンス預金
- 家財などの動産
動画で解説
相続税の税務調査対策について、税理士法人・都心綜合会計事務所の税理士・田中順子が解説しています。
字幕が付いておりますので、音を出さなくてもご視聴出来ます。
動画内容
相続税の税務調査が行われると、およそ8割が税金を追徴される、という現実があります。
追徴される額は、撮影している時点では、平均すると約600万円ほどです。
もちろん、ほとんどの方は脱税などといった悪いことはしていません。
それでも、税務調査の対象になってしまうと、何かしら間違いを発見されてしまうのです。
なぜ相続税は間違いが発見されやすいかというと、相続税ならではの、税金の計算方法に原因があります。
税務調査には、相続税の税務調査の他にも会社が払う法人税の税務調査などがあります。
法人税や、個人事業主が払う所得税の場合、収入から経費を引いた額が正しければ、大きな間違いが生じることはほぼありません。
もちろん、専門知識は必要ですが、これはダメ、これはいい、というルールが比較的はっきりしています。
これに対して、相続税の税額は、財産の評価額から計算されます。
したがって、この評価額が適正かという点が重要になってきます。
実は、これには正解がないものもあります。
もちろん、こうやって計算してください、という基本的なルールはあるのですが、それによって計算した結果が、かならずしも1通りではないということです。
たとえば、土地の場合、路線価方式と呼ばれる計算方法があります。
これは、土地が接している道路がある場合、その道路につけられた価格をもとに、土地を評価する方法です。
もし、土地が正方形や長方形ばかりであれば、評価が分かれることはありません。
しかし現実は、複雑な曲線で囲まれた、いびつな形をしている土地が沢山あります。
そして、いびつな土地を評価するときは、専門家によって評価が分かれることが多いのです。
税理士と税務署で見解が分かれる、ということもザラにあります。
極端かも知れませんが、正解がないのです。
あれがよくて、これがダメというようなものではありません。
さらに難しいのが、絵画などの美術品です。
絵画や骨董品などの評価は、売買実例価格や、その道に精通した人の意見などを参考にして評価します。
この時点で、1通りではないことがわかるかと思います。
もし、相続人からみて価値があるとわからなかった絵が、実は見る人が見たらすごく価値のあるものだった、としたらどうでしょうか。
通常ならとても嬉しい話ですが、これが税務調査でわかったら喜びは半減です。
当然、その価値の分だけ相続財産が増えるため、相続税を追徴されることになります。
このように相続税の評価は、答えが何通りにも分かれるものが沢山あります。
このことから税務調査を受けるときに、一つ気をつけていただきたいことがあります。
それは、税務署側から示された書類に、サインや捺印を気軽にしないということです。
税務調査では、調査に来た職員から「このような申告漏れをしてすみません」などと書かれた書類に、サインや捺印を求められることがあります。
これは「相続人が申告漏れを認めている」ことを担保するために作成する書類で、後に税務署側が税金の追徴を有利にすすめるために作成します。
素直に認めているからペナルティがなくなる、というようなものではありませんので、安易にサインすべきではありません。
それが財産の評価に関わるものであれば、なおのことです。
財産の評価は、もともと税理士と税務署でも意見が分かれやすい、あいまいな分野です。
逆に、サインを税務署側が求めてくるというのは、それだけ税金を追徴する根拠が乏しい、という場合もあります。
相続税の申告や、税務調査の立ち会いなどは、相続の専門家に依頼しましょう。
そして、相続のことなら、税理士法人・都心綜合会計事務所にお任せ下さい。
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