名義株とは
名義株とは、法人の株主の名義が実際の株主(実質的な株主)と異なる株式のことです。
簡単に言いますと、名義預金の株式版です。
名義預金の詳しい内容は名義預金の認定を回避するには贈与を受けた本人が口座を管理するにて記載しています。
法人の株主は、法人税申告書別表2の「同族会社等の判定に関する明細書」で、
- 株主名
- 所有株式数
で確認出来ます。
名義株というのは、ここに【記載されている株主名と実際の株主が違う】ということです。
同族会社等の判定に関する明細書に記載されている株主であっても、【実際には出資金を拠出していない】ということもあるかです。
実際の株主の判定に法人税申告書別表2は証拠にならない
被相続人が法人税申告書別表2「同族会社等の判定に関する明細書」に記載されていなかった。
過去の法人税の申告書にも記載がなかった。
なので、相続税の申告で法人の株式については申告をしなかった。
でも、どう考えても生前に被相続人は、その法人に関与していたような・・
税務調査においても、法人税申告書別表2「同族会社等の判定に関する明細書」に【被相続人の名前が記載されていない】からと言って、素通り出来るほど甘くありません。
申告書に被相続人の名前が記載されているか、されていないかに関わらず、実態で判断されます。

法人税申告書別表2の名前に関係なく実態で判断
名義株と認定されたら
実質的の株主が被相続人と認定された場合には、その法人の株式は相続財産として申告する必要があります。
そして、税務調査で認定されるということは、申告期限を過ぎてからの申告となります。
そうなると修正申告ということになり、再計算された相続税に【加算税というペナルティ】も支払うことになります。

修正申告ということになり、加算税というペナルティも支払うことになります。
名義株と認定されないためには
被相続人は確かに会社経営に関与していたけれども、生前に株式を贈与していた。
あるいは本当に被相続人は、会社経営に関与していなかった。
この場合、税務調査で口だけで言っても証拠がありません。
客観的に認められるためにも、以下のようなことをする必要があります。
- 贈与税の申告を行う
- 被相続人以外が株主総会に参加して、議事録等を作成する
- 配当が生じた際には、(被相続人以外の)受贈者の管理する口座に入金する
- 配当が生じた場合には、(被相続人以外の)受贈者はそれぞれ確定申告をする

株主総会に参加して議事録等を作成する
また、1の場合には贈与時に贈与契約書を作成します。
そして、署名・捺印をして、贈与税が発生すれば、もちろん贈与税の支払いをします。
また、出来れば公証人役場で、贈与契約書に「確定日付を付与」しましょう。
- 贈与契約書もない
- 会社の議事録もない
- 贈与税の申告もしていない
この状態では、被相続人が法人の株式を生前に贈与していることや、経営にタッチしていないことを証明することが出来ません。
本当に被相続人は経営にはタッチしていないとしても、これでは名義株と認定される可能性も出てきます。
相続税対策や税務調査のトピックとして、名義預金は有名ですが、名義株にも注意しましょう。
動画で解説
税務調査で問題になりやすい、名義株というものについて、税理士法人・都心綜合会計事務所の税理士・田中順子が解説しています。
字幕が付いておりますので、音を出さなくてもご視聴出来ます。
動画内容
名義株とは、株主が実質的な株主と異なる株のことです。
よく相続では、名義預金というものが問題になりますが、問題となるポイントは同じです。
名義預金とは、親などが子ども名義の口座をこっそりと作って、そこにお金を入れるというものです。
口座のお金は、外見上は子ども名義の預金になりますが、実際に管理している人は親ですので、この場合、実質は親の財産として扱われます。
よって、親が亡くなれば相続財産となり、子どもは相続税を支払わなければなりません。
名義株もこれと同じです。
株主名簿や法人税申告書に添付する「同族会社等の判定に関する明細書」の上では、子どもが株主であっても、実質的な株主は親というようなケースです。
この場合、名義株は親の相続財産となるため、親が亡くなれば子どもに相続税がかかります。
注意が必要なのは、名義株であることが税務調査で発覚すると、修正申告が必要になることです。
このときは追加の税金に加えて、過少申告をしたことに対する加算税などのペナルティがあります。
では、どのようにすれば名義株とされずに、お子さんなどにスムーズに会社の株を贈与することができるのでしょうか。
まずは、名義株を疑われないための対策をとることが大切です。
ポイントは、きちんと贈与が行われていることや、新しい株主が株主としての実態を備えていることを記録することなどになります。
具体的にはまず、贈与について贈与契約書を作成します。
それによって贈与税が発生すれば、もちろん贈与税の申告も行います。
特に贈与契約書は、作成時に公証人役場で「確定日付」を入れてもらうことがおすすめです。
贈与契約は、贈与を行う前に交わされているはずですので、公証人役場に贈与契約書をもっていき、契約書が何月何日に存在していた、ということを担保してもらいます。
それから、株主として会社の意思決定に関わっている、という実態を記録することも大切です。
株主総会に参加して、議事録にそのことを記録しておきましょう。
なお、株式に配当が生じたときは、株主本人の口座に入金します。
これが別の人間だと、本当はその人が実質の株主ではないのか、と疑われるからです。
必要に応じて、配当金の確定申告をすることも有効です。
逆にこれらを一切せずに、名義株を疑われたときは大変ですので、十分注意をしてください。
それから事業承継対策として株式を贈与するときは、計画的に行えば、かなり有利に贈与できる税制もあります。
事業承継を見越して贈与を始めたいという方は、お早めに税理士に相談ください。
そして、生前贈与や事業承継、相続税の対策や相続税の申告など、相続に関することなら、税理士法人・都心綜合会計事務所にお任せください。
相続のワンストップサービスを提供しております。