相続・贈与税なしで「後継者に自社株を承継」できる
従来、中小企業の後継者への事業承継には、自社株式の贈与や相続に伴う、税金の問題がありました。
価値の高い会社ほど、自社株式も高くなり、贈与税などが多額になることから、簡単に後継者へ事業を譲ることが出来ませんでした。
この問題を解消するために、2018年度の税制改正で、従来の事業承継税制が大幅に変わりました。
以降は、変更後の事業承継税制についての解説となります。
事業承継税制とは
事業承継税制とは、簡単に言えば、自社株式に関する贈与税や相続税を全額免除しつつ、後継者に自社株を承継できる制度です。
この制度を利用すると、先代経営者から自社株式等を贈与により「後継者が取得」し、かつ「経営を継続」していく場合、本来であれば後継者が納付すべき贈与税を猶予できます。
さらに、贈与者である先代経営者が死亡した場合には、その猶予していた贈与税が【全額免除】となります。
これは実質的に、自社株の後継者への贈与に関しては「贈与税が発生しない」ことを意味します。
また、相続で自社株を後継者が相続し、経営を継続する場合、自社株式に相当する部分の相続税の納税も「次の後継者への相続まで」猶予することができます。
そして、次の後継者へ自社株式を相続すると、猶予されていた相続税は【全額免除】となります。
複数人からの承継・複数人への承継も可能
自社株式を「一人だけで保有」しているとは限りません。
例えば、80%を先代経営者、20%を先代経営者の妻が所有している等のケースがあります。
また、後継者も一人だけとは限りません。
長男に60%、次男に40%、自社株式を譲りたい等のケースもあります。
ただ、このような場合も、事業承継税制の対象となります。
なお、後継者が複数人の場合は、3人までが事業承継税制の対象となります。
事業承継税制の適用要件
この事業承継税制を利用するには、2018年4月1日~2023年3月31日までの間に、特例承継計画を都道府県に提出する必要があります。
適用期間は2018年1月1日~2027年12月31日までの間で、自社株式等に関する贈与や相続のみが対象となります。
そして、贈与や相続後の5年間の平均で、雇用の8割維持が条件としてあります。
ただ、絶対に満たさないとダメかというと、そういうわけでもなく、満たせない場合でも、後継者の死亡の日まで納税は猶予されます。
しかし、雇用の8割維持を満たせなかった場合、その理由などを記載した一定の書類を都道府県に提出しなければなりません。
そして、その理由が正当なものと認められない場合には、認定経営革新等支援機関から指導・助言を受けて、書類にその内容を記載する必要があります。
なお、都心綜合会計事務所は「認定経営革新等支援機関の認定」を受けております。
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動画で解説
事業承継税制について、税理士法人・都心綜合会計事務所の税理士・田中順子が解説しています。
字幕が付いておりますので、音を出さなくてもご視聴出来ます。
動画内容
このルールを知って活用すれば、自社株式を後継者が取得するときの相続税や贈与税の納税猶予が受けられ、しかも条件によっては納税自体を免除することも可能です。
では、まず、事業承継税制の概要をご説明致します。
事業承継税制では、先代経営者から後継者に自社株式を贈与するとき、本来なら後継者が納付すべき贈与税の支払いが猶予されます。
さらに、贈与者である先代経営者が死亡した場合には、猶予されていた贈与税が全額免除となります。
また、自社株式を後継者が相続したときも、次の後継者への相続まで、自社株式に相当する相続税の支払いが猶予されます。
そして、実際に次の後継者へ自社株式を相続すると、猶予されていた相続税が全額免除となります。
それでは、なぜこのような税制が誕生したのでしょうか。
中小企業の後継者への事業承継には、自社株式の贈与や相続に伴う税金の問題がありました。
上場していない会社の株式の評価額は、その会社の規模で計算方法が変わります。
主に配当、純資産、利益などから計算されるのですが、業績が順調に上がっている企業では、評価額が非常に高くなることがあり、後継者に多額の税負担が生じることが事業承継の障壁となっていました。
この問題を解決するために、2018年度の税制改正で、それまでの事業承継税制が大幅に変わりました。
どのように変わったのかというと、まず、複数人への承継が可能になりました。
それまでは1名の後継者にしか納税の猶予はありませんでしたが、新しい制度では、最大3人まで納税の猶予が適用されます。
それから贈与や相続後、5年間は雇用の8割維持が条件だったのですが、このルールが弾力化し満たせなければ、その理由を記載した一定の書類を都道府県に提出するなどの対応で、納税の猶予を続けられることになりました。
ただし、新しくなった事業承継税制を使うには、2023年3月31日までに事業承継に関する特例承継計画を策定し、認定経営革新等支援機関による所見を添えて都道府県知事に提出する必要があります。
贈与や相続自体は、2018年1月1日から2027年12月31日までの10年間のものが対象ですので、まずは、この特例承継計画の提出期限に注意が必要です。
ちなみに、税理士法人・都心綜合会計事務所は、認定経営革新等支援機関の認定を受けております。
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