
土地の相続税評価額は、その土地を誰がどのように使っているかによって大きく計算方法が変わります。所有者自身が使っている「自用地」は評価額がそのまま適用されます。しかし、人に貸している「貸家建付地」や「貸宅地」は、土地を自由に処分できない制限があるため、その分だけ評価額が減額される仕組みです。この記事では、これら3つの宅地の違いと、それぞれの基本的な評価方法について初心者向けにわかりやすく解説します。
自用地(じようち)とは、土地の所有者自身が使っている土地のことを指します。
マイホームが建っている土地はもちろん、誰にも貸さずに放置している空き地や、自分で管理している青空駐車場なども自用地に含まれます。
自用地は他人に土地を使う権利を渡していないため、所有者がいつでも自由に売却したり家を建て替えたりすることが可能です。
そのため、貸家建付地や貸宅地のような評価額の減額措置はいっさいありません。
路線価方式や倍率方式で計算された土地の評価額が、そのまま自用地の相続税評価額となります。
なお、親族間などで地代を取らずに無料で土地を貸している場合(使用貸借)も、貸宅地のような減額はできず自用地扱いとなるため注意が必要です。

貸家建付地(かしやたてつけち)とは、所有する土地に自分がアパートやマンションを建てて、他人に貸し出している土地のことです。
土地と建物の名義はどちらも自分ですが、部屋には賃借人が住んでいる状態となります。
賃借人が住んでいる間は、地主であっても勝手に建物を壊したり土地を売ったりすることはできません。
このように土地の利用に制限がかかっているため、自用地に比べて相続税評価額が下がります。
具体的には、自用地の評価額から、賃借人が持っている権利の分を差し引いて計算します。
制約を受けて減額できる割合は、【借地権割合 × 借家権割合 × 賃貸割合】という計算式で求められます。
借地権割合は地域によって30〜90%の間で定められていますが、一般的な住宅街では60〜70%に指定されていることが多いです。
借家権割合は全国一律で30%と定められています。
賃貸割合は、貸し出している部屋の床面積の割合のことで、満室であれば100%となります。
たとえば、借地権割合が70%の地域で、アパートが満室だったとします。
この場合、「70% × 30% × 100% = 21%」となり、自用地の評価額から21%を減額することができます。
つまり、アパートを建てて満室にしておけば、土地の評価額を自用地の約8割に抑えられるため、有効な相続税対策となります。
なお、一時的な空室(すぐに次の入居者を募集しているなど、一定の条件を満たす場合)であれば、貸し出している部屋として計算に含めることができる救済措置もあります。

貸宅地(かしたくち)とは、自分の土地を他人に貸していて、その土地の上に他人が家を建てている状態の土地のことです。
土地の所有権は自分にありますが、建物の所有権は土地を借りている人(借地人)にある状態です。
土地を借りている人には、借地権という非常に強い権利が認められています。
地主の都合で一方的に立ち退かせることはできず、自用地のように自由に土地を扱うことはできません。
そのため、貸宅地の評価額は、自用地の評価額から借地権に相当する金額を大きく差し引いて計算されます。

貸宅地から減額される金額は、【自用地評価額 × 借地権割合】で計算します。
もし借地権割合が70%の地域であれば、自用地の評価額から70%も減額されることになります。
最終的な貸宅地の評価額は、【自用地評価額 - 減額される金額】となります。
つまり、自用地として1,000万円の価値がある土地でも、借地権割合70%なら評価額はたったの300万円になります。
評価額が大幅に下がるため相続税対策としては魅力的ですが、借地人との契約解除や立ち退き交渉は難しいため、将来を見据えて慎重に判断する必要があります。
宅地を相続したときの自用地・貸宅地・貸家建付地という宅地の種類や、その相続税評価方法について、税理士法人・都心綜合会計事務所の税理士・田中順子が解説しています。
字幕が付いておりますので、音を出さなくてもご視聴いただけます。
動画内容
なぜ宅地をこんなふうに分けるのかというと、評価するときの計算方法が変わるからです。
宅地の評価はその宅地を人に貸していたかどうか、あるいは人に貸している建物を建てていたか、それ以外かで変わってまいります。
宅地を人に貸して、貸した相手が家などを建てて使っていれば、それは貸宅地となります。
これに対して土地は貸してはいないけれど、アパートやマンションを建てて人に賃貸しているときは貸家建付地となります。
それ以外の土地、つまり自分で使っている土地や、誰にも貸したりせずに放置している土地は自用地ということになります。
さてここで問題です。
貸宅地、貸家建付地、それから自用地のうち、どれが一番評価額が高いと思われますか?
3つともまったく同じ条件の土地だとします。
正解は自用地です。
なぜなら貸宅地や貸家建付地を使っているのは、土地を借りている人や、その上に建てられたアパートなどを借りている人達だからです。
他人が使っている分、土地を使う権利が制約されているといえます。
このことから貸宅地や貸家建付地はその分を減額することができます。
特に土地を借りている人には借地権という権利が認められています。
これは地主さんが一方的に追い出したりすることができない、とても強い権利となります。
では2番目に高いのは、貸宅地と貸家建付地、どちらでしょうか。
正解は貸家建付地です。
貸家建付地は土地そのものを貸している、というわけではありません。
土地の持ち主が賃貸経営をするために土地活用をしている状態です。
もちろん明日から賃貸経営をやめて自分で使おう、というまでの自由さはありませんが、貸宅地よりは自由に土地を使っているといえます。
そのため貸宅地より貸家建付地のほうが評価額が高くなります。
では、貸宅地や貸家建付地はそれぞれどのくらい減額できるのでしょうか。
まず一番低い貸宅地から見てまいりましょう。
貸宅地の評価額は、まず自用地として評価した金額から借地権に相当する額を減額します。
借地権はさきほどちょっと出てきましたが、土地を借りている人の権利のことです。
借地権は地域ごとに決められた割合があって、この割合を使って計算をします。
これを借地権割合といいます。
これは具体例を聞いたほうがわかりやすいと思います。
たとえば自用地として評価したとき1,000万円となる土地が借地権割合70%の場合、借地権に相当する額は700万円です。
よって、この宅地の相続税評価額は1,000万円から700万円を引いた300万円になります。
借地権割合は地域ごとに30%から90%の間で、10%刻みで決められています。
もし使っていない土地を貸すことができたら、かなりの節税になりますよね。
ただ、借地権はとても強い権利ですので、後々の立ち退きのことなども考えて、貸すときは慎重に検討する必要があります。
ちなみに家族などにタダで貸しても、このような減額はできません。
続いて貸家建付地の解説をします。
貸家建付地から減額できる金額の計算は少し難しいです。
さきほども出てきた借地権割合に、借家権割合と賃貸割合をかけた金額となります。
借家権割合とは、家を借りている人に認められる権利で30%です。
賃貸割合とは建物を賃貸している部分のうち、実際に人が入っている部屋の床面積の割合です。
満室であれば100%、誰も借りていなければ0%となります。
もし満室なら貸家建付地から減額できる金額は18~21%となります。
つまり貸家建付地は、自用地のだいたい8割ほどの価額で評価することができます。