セットバックが必要な部分は70%の評価減が可能

セットバックとはそもそも何のか?

また、セットバックが必要かどうかの判断方法や、その相続税評価方法について解説しています。

セットバックとは

新たに建物を建築する場合、原則として道路幅員4m以上の道路に接することが義務付けられています。

しかし、現実には既に建物が立ち並んでいる、道路幅員4m未満の道路も多数あります。

狭い道路
狭い道路
現実には、道路幅員4m未満の道路も多数ある

ちなみに、4m未満の道路が多数ある理由は、自動車が一般的な存在でなかった頃に整備された道路が、現在も多く残っているからです。

このような道路幅員4m未満の道路でも、一定の要件の下に道路とみなします。

そして、このような道路を

  • 2項道路
  • みなし道路

などと呼びます。

以降は、2項道路として解説します。

この2項道路に面している宅地は、その中心線から2mずつ後退した線を、道路と宅地の境界線とみなします。

そして、建物の建て替えを行う場合には、その境界線まで、宅地を道路として提供する必要があります。

ちなみに、道路の片側が「がけ地や川」である場合には、境界線から道の側に4m後退する必要があります。

セットバックの事例
セットバックの事例

これをセットバックといいます。

セットバックが必要かどうかの判断方法

結論から言いますと、役所(建築指導課や道路管理課等)で2項道路に該当するのかどうか確認します。

そして、2項道路に該当する場合には、セットバックの距離について確認します。

現状を優先する

自分で計測すると、道路の幅員が4m未満である。

でも、役所で確認すると、2項道路ではない普通の道路(4m以上の道路)と言われる。

このような場合には、現状の状態を優先します。

なので、実測したら4m未満である場合には、セットバックが必要な道路と判断して評価します。

セットバックの相続税評価方法

セットバックが必要な宅地の評価額は、それ以外の宅地と比べて価値が減少することを意味します。

よって、セットバックが必要な部分については、通常の評価額から70%の評価減が可能です。

セットバックの評価減
セットバックの評価減

道路として提供するのだから「評価額は0円」ではないのか?と思われるかもしれません。

ただ、建て替えをしない限り、土地の所有者が、セットバックが必要な部分の土地も、自分の土地として使用できます。

よって、評価額の減額はあっても、0円にはなりません。

セットバックによる評価減は、小規模宅地等の特例のような大幅な評価減は見込めません。

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しかし、適正な申告という意味でも、しっかりとセットバックによる評価減ができる場合には、評価減して申告しましょう。

評価対象地が既に「セットバック済み」の場合の評価方法

宅地に面する道路が2項道路だからといって、必ずセットバックが必要とは限りません。

既に評価対象地が「セットバック済み」の場合もあり得ます。

もし、セットバック済みであれば、評価減はできません。

ただ、セットバック済みで、

  • 不特定多数の人が通行できる
  • 土地所有者が私的に使っていない

というような状態であれば、そもそも評価対象になりません。

そのような場合、そのセットバック済みの部分の土地は、評価額0円(評価しない)ということになります。

ただ逆に、形式上は道路用地として提供していても、

  • 自転車を置いている
  • 自販機を置いている
  • 駐車場の一部として使用している

などしている場合は、「セットバック済み」とはなりません。

なので、このような場合には、セットバックが必要な部分について、70%の評価減で評価することになります。

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動画で解説

セットバックの要件に該当する土地の相続税評価方法について、税理士法人・都心綜合会計事務所の税理士・田中順子が解説しています。

字幕が付いておりますので、音を出さなくてもご視聴出来ます。

セットバックの要件に該当する土地の相続税評価方法

動画内容

そもそもセットバックとは何か、というところからご説明いたします。

現在、建築基準法という法律では、新しく建物を建てるときは、その敷地が幅が4メートル以上ある道路に接していなければならない、というルールが定められています。

道が狭すぎて、災害時に消防車が入れず、被害が拡大するような事態を防ぐためのルールです。

しかし、この法律が適用される前に、建物を建てている人もいます。

そこで幅4メートル未満の道路に接する敷地に、今後建物を建てるときは「道路の中心線から2メートル下がった線より内側に建物を建ててくださいね」というルールがあります。

このルールが適用される道路を、2項道路やみなし道路と呼んでいます。

セットバックとは、この2項道路のルールに従って、敷地と道路の境界線を内側に後退させた部分をいいます。

セットバックが必要な部分は、次に建物を建て替えるときには、道路の扱いとなります。

言い換えると、将来、建物が建てられなくなる部分です。

そのため、この部分は通常の評価額の70%減、つまり通常の3割の評価額でよいこととされています。

では、相続した土地に将来セットバックが必要かどうかは、どうしたらわかるでしょうか。

まず、役所の建築指導課や道路管理課といった部署で、敷地に接している道路が、2項道路に該当するのかどうかを確認することができます。

ただ、役所で確認した結果では2項道路でなかったとしても、現地に行ってみると、明らかに道路の幅員が4m未満という場合があります。

このような場合は、現状が優先されます。

したがって、実測で4m未満であれば、セットバックの評価をしてもよい、ということです。

ところで、先ほどセットバックが必要になる部分は、70%の評価減ができると説明しました。

しかし、よくよく考えてみると、セットバックの部分は道路として提供しているようなものですから、評価額は0円にならないのか、という気がしないでしょうか。

ところが、セットバックのルールは新しく建物を建てない限り、セットバックが必要な部分も自分の土地として使用できます。

どういうことかといいますと、セットバックのルールは、すぐに強制されるものではありません。

法改正をしたからといって、今すぐセットバックの部分にある建物を壊せ、と言われたら困りますよね。

ですので、新しく建て替えるタイミングまで、セットバックの部分は、そのまま使っても違反にはならないのです。

よって、将来自由に使えなくなる部分という意味で、評価額の減額はできても0円にはなりません。

では、セットバックが完了していて、すでに道路として使われている部分はどうでしょうか。

もし、不特定多数の人が通行できる私道の扱いとなる場合は、評価額は0円、つまり評価しないことになります。

逆に、見た目は道路でも、自転車を置いていたり、自販機を置いていたり、駐車場の一部として使用していたりすると、0円の評価はできません。

セットバックによる評価減や、私道としての0円評価ができそうな場合は、しっかりと確認をして、余計な税金を支払わないよう申告しましょう。