
土地の測量は必須ではありません。ただし、登記簿の面積と実際の面積が異なる場合は、実際の面積で申告をします。
相続税の申告において、すべての土地を測量する義務はありません。
基本的には、登記簿に記載されている面積での申告を検討します。
しかし、相続税のルールでは、土地の評価額は「課税時期(亡くなった日)における実際の面積」で計算すると定められています。
登記簿の面積と実際の面積が一致していれば、問題はありません。
ところが、実際には登記簿の面積と異なるケースが頻繁に発生します。
登記簿の面積よりも実際の面積のほうが広い状態を「縄伸び(なわのび)」と呼びます。
反対に、実際の面積のほうが狭い状態を「縄縮み(なわちぢみ)」と呼びます。
測量が義務ではないからといって、明らかに縄伸びしている土地を登記簿の面積で申告してはいけません。
税務署の税務調査が入った際に、過少申告として指摘され、ペナルティを受けるリスクがあります。
見た目や資料から明らかに面積が違うと疑われる場合は、専門家に依頼してしっかりと測量を行いましょう。
また、縄縮みをしていて実際の面積で評価額を下げたい場合も、客観的な証明が必要になります。
口頭で「狭い」と伝えるだけでは税務署に認めてもらえないため、測量図などの確実な証拠を用意してください。
すでに最新の測量図があり、登記簿と面積が違うことが分かっている場合は、必ず測量図の面積で申告します。
さらに、面積の大小にかかわらず、隣地との境界線が不明瞭な場合は測量をしておいたほうが安全です。
境界線を確定させておかないと、将来的に土地を売却する際や、隣地の所有者とトラブルになる恐れがあります。

また、相続税を土地などの現物で納める「物納」を検討している場合も、事前に測量が済んでいることが条件となります。
境界が未確定でトラブルの火種を抱えた土地は、国が引き取ってくれないからです。
物納の申請期限は、原則として相続税の申告期限と同じ「相続開始を知った日の翌日から10か月以内」です。
測量には数か月の時間がかかることも多いため、早めの行動が大切になります。
測量にはまとまった費用や時間がかかるため、申告を依頼する税理士とよく相談して方針を決めることをおすすめします。
では、なぜ登記簿と実際の面積にズレが生じてしまうのでしょうか。
大きな原因のひとつは、戦前の税制の影響だと言われています。
当時は土地の広さに対して税金がかけられていたため、少しでも税負担を軽くしようと、実際の面積より少なく申告する地主が多く存在しました。
また、隣地との境界線を口約束で済ませていたことで、長い年月を経て境界線が曖昧になってしまったことも原因です。
このような時代背景から、現実には縄縮みよりも「縄伸び」になっているケースが圧倒的に多く見られます。
とくに山林などは、縄伸びしている可能性が非常に高い傾向にあります。
ここで、多くの方が不安に感じる「固定資産税」への影響についても触れておきます。
測量によって縄伸びが判明し、役所の台帳や登記を正しい面積に修正すると、翌年からの固定資産税が上がる可能性があります。
また、登記を修正しなくても、相続税を実測面積で申告した結果、税務署から市区町村へ情報が共有され、固定資産税が見直されるケースもあります。
しかし、固定資産税が上がることを恐れて相続税を過少申告してしまうと、のちのち重いペナルティを受けることになりかねません。
目先の節税も気になりますが、まずは正しい面積で適正に申告することが何よりも重要です。
一方で、縄伸びによる面積の増加が思わぬメリットを生むこともあります。
実際の面積が大きくなった結果、一定の広さ(三大都市圏では500㎡以上、それ以外の地域では1,000㎡以上など)を超えると「地積規模の大きな宅地の評価」という特例が適用できるようになるかもしれません。
この特例が使えると土地の評価額が大きく下がるため、かえってトータルの相続税が安くなるケースもあるのです。
さらに、2024年4月からは「相続登記の義務化」がスタートしています。
測量で面積の違いが確定した場合、登記簿の面積を直す「地積更正登記」も必要になるのではと心配されるかもしれません。
面積を直す地積更正登記自体は、法律上の義務ではありません。
しかし、後々の売却や境界トラブルを防ぐためにも、相続登記とあわせて地積更正登記を行っておくケースがよくあります。
相続が発生した際は、縄伸びや縄縮みの可能性に注意しながら慎重に手続きを進めていきましょう。
土地の相続に関係する「縄伸び・縄縮み」について、税理士法人・都心綜合会計事務所の税理士・田中順子が解説しています。
字幕が付いておりますので、音を出さなくてもご視聴いただけます。
動画内容
「縄伸び・縄縮み」というのは、土地の面積が、登記された面積と実際に測量したときの面積で異なる時に使う言葉です。
実際の面積のほうが広いことを「縄伸び」、逆に実際の面積が狭いことを「縄縮み」といいます。
現実には、縄伸びのほうが多いです。
縄伸びや縄縮みが起こる原因には、色々とあります。
かつては土地の広さで税金が決められていたため、地主が実際の面積よりも少なく申告していたことが原因だったり、お隣の方と口約束で敷地の境界線を決めてしまい、長い年月でその境界線が曖昧になってしまうことが原因だったりします。
ところで相続税を計算するとき、土地ごとに評価額を計算しますが、この計算には土地の面積が必要です。
では、土地を相続したら測量をして、本当の面積を確認しなければならないのでしょうか。
答えはNOです。
土地の測量は義務ではありません。
登記簿の面積で問題がないようであれば、それで申告して構いません。
ただし、測量した上で相続税を申告したほうがいい土地というものもあります。
登記上の面積と実際の土地の面積が違って見えるときです。
私たちが違和感を覚えるほどのものであれば、税務署も当然、気が付きます。
そのまま黙って申告しても、後から調査される可能性が高いです。
調査の結果、もし縄伸びしていた土地であれば、過少申告として、余計な税金をとられてしまう可能性があります。
よって、おかしいなと思ったら測量したほうが無難です。
特に山林を相続したときは、縄伸びがよくあるので測量をおすすめします。
それから、土地の境界線があいまいな土地を相続したときは、境界線の確定測量をしてください。
これは相続税の申告を正しく行うためというよりは、境界線があいまいという状態は、いつかお隣の方とトラブルになったり、売却したいときにできなかったりすることがあるためです。
いつかハッキリさせる必要があることですから、相続税の申告をきっかけに、境界線の確定測量をしておいて損はありません。
縄縮みがあれば、相続税も安くなります。
最後に、相続税の物納を申請する可能性があるときも測量をしてください。
測量が済んでいない土地では、物納の申請ができませんので、物納の申請期限に間に合うように進める必要があります。