土地の相続税評価は登記面積or測量面積
基本的に相続税の申告にあたって、土地の面積を測量することは、必須(要件)ではありません。
なので、土地の登記簿に記載されている面積で、申告することが可能です。
ただ、相続税の決まりとして、土地の面積は課税時期における実際の面積で行う、とされています。
そして、登記簿と実際の面積に差異がなければ何の問題もないのですが、土地の面積が「登記簿に記載されている面積と異なる」という場合がよくあります。
ちなみに、登記簿記の面積より測量面積の方が広い場合のことを縄伸び(なわのび)といい、逆に狭い場合を縄縮み(なわちぢみ)といいます。
測量が必須でないからといって、縄伸びしている土地を測量せずに申告するのはダメです。
また、明らかに大きく縄延びしているような土地は、税務署が気づきます。
必ずしも測量が要求されていなくても、登記されている面積が異なる(もしくは異なると思われる)場合には、測量しましょう。
なお、縄伸び・縄縮みに関係なく、測量した場合には「登記簿の面積ではなく測量した面積」で申告します。
ただ、測量には費用がかかります。
特に登記簿の面積で、問題なそうであれば測量は不要です。
また、既に測量図があり、登記簿の面積と違う場合は、測量図の面積の方で申告します。
ただし、以下のような場合には、測量したほうが無難です。
- 境界線が不明瞭
- 物納の可能性がある
境界線はどこかで確定しておかないと、自分の相続でなく、相手方(隣の方)の相続発生の際にも問題になるかもしれません。
また、物納する場合には、測量済みでないと物納出来ません。
測量する・しないは、申告を依頼する税理士さんなどと、相談して決めるのがベストかもしれません。
なぜ縄伸びや縄縮みが発生するのか
そもそも、なぜ縄伸びや縄縮みが発生するのか?
それは、戦前は土地の広さに応じて税金が決められていたため、地主が実際の面積よりも少なく申告して、台帳に載せていた方などがいたからです。
また、口約束で境界線を設定していて、長い年月の間に境界線があいまいになったり、移動したことなども原因の一つです。
現実問題としては、縄縮み(実際より狭い)よりも「縄伸びのほうが多い」です。
特に山林については、縄伸びが多いと言われています。
相続税対策として節税することはもちろん必要ですが、正しく適正に申告することの方が重要です。
相続税の申告の際には、この縄伸びや縄縮みに注意しましょう。
動画で解説
土地の相続に関係する「縄伸び・縄縮み」について、税理士法人・都心綜合会計事務所の税理士・田中順子が解説しています。
字幕が付いておりますので、音を出さなくてもご視聴出来ます。
動画内容
「縄伸び・縄縮み」というのは、土地の面積が、登記された面積と実際に測量したときの面積で異なる時に使う言葉です。
実際の面積のほうが広いことを「縄伸び」、逆に実際の面積が狭いことを「縄縮み」といいます。
現実には、縄伸びのほうが多いです。
縄伸びや縄縮みが起こる原因には、色々とあります。
かつては土地の広さで税金が決められていたため、地主が実際の面積よりも少なく申告していたことが原因だったり、お隣の方と口約束で敷地の境界線を決めてしまい、長い年月でその境界線が曖昧になってしまうことが原因だったりします。
ところで相続税を計算するとき、土地ごとに評価額を計算しますが、この計算には土地の面積が必要です。
では、土地を相続したら測量をして、本当の面積を確認しなければならないのでしょうか。
答えはNOです。
土地の測量は義務ではありません。
登記簿の面積で問題がないようであれば、それで申告して構いません。
ただし、測量した上で相続税を申告したほうがいい土地というものもあります。
登記上の面積と実際の土地の面積が違って見えるときです。
私たちが違和感を覚えるほどのものであれば、税務署も当然、気が付きます。
そのまま黙って申告しても、後から調査される可能性が高いです。
調査の結果、もし縄伸びしていた土地であれば、過少申告として、余計な税金をとられてしまう可能性があります。
よって、おかしいなと思ったら測量したほうが無難です。
特に山林を相続したときは、縄伸びがよくあるので測量をおすすめします。
それから、土地の境界線があいまいな土地を相続したときは、境界線の確定測量をしてください。
これは相続税の申告を正しく行うためというよりは、境界線があいまいという状態は、いつかお隣の方とトラブルになったり、売却したいときにできなかったりすることがあるためです。
いつかハッキリさせる必要があることですから、相続税の申告をきっかけに、境界線の確定測量をしておいて損はありません。
縄縮みがあれば、相続税も安くなります。
最後に、相続税の物納を申請する可能性があるときも測量をしてください。
測量が済んでいない土地では、物納の申請ができませんので、物納の申請期限に間に合うように進める必要があります。