相続開始前3~7年以内の贈与は相続税の対象
毎年110万円までの非課税枠などを利用して、将来の相続人へ生前贈与していく。
そうすることで、相続財産を減らしていき相続税対策をしていく。
少しでも相続税対策を考えたことがある方なら、どこかで聞き及びしているかと思います。
詳しくは「生前贈与とは何?相続との関係は?」にて記載しています。
ただ、被相続人(亡くなった方)の死亡日から3~7年前までの贈与については、その贈与財産は相続財産に加算されます。
厳密には経過措置があり、以下のようになります。
また、亡くなる4~7年前の生前贈与については、100万円の控除があります。
駆け込み的な贈与は相続税対策にならない
これは何を意味するかと言いますと、被相続人が亡くなりそうだと分かった途端に、なんとか生存している間に財産を贈与させて、相続財産を減らすことは認めないよ、ということです。
このように駆け込み的な贈与は相続税対策とはなりません。
仮に3~7年以内の贈与で、贈与税を支払っていた場合、その贈与税額は相続税額から控除出来ます。
例えば被相続人の死亡日の2年前に、●●を贈与されて、贈与税を100万円支払った。
被相続人の死亡に伴い、相続税が200万円となった。
でも、支払う相続税は200万円ではなく、100万円(200万円-支払済の贈与税100万円)となります。
ただし、3~7年以内の贈与で「支払った贈与税額が相続税額を超える場合」には、その超える部分の金額は戻ってきません。
例えば、被相続人の死亡日の1年前に△△を贈与されて、贈与税を200万円支払った。
被相続人の死亡に伴い相続税が100万円となった。
では、200万(既に支払った贈与税)ー100万(相続税)=100万円は戻ってくるのか?
戻ってきません。
ただし、相続時精算課税制度を選択した場合には、支払済みの贈与税合計額で、相続税を超える部分の金額も「全額還付」されます。
相続税が課せられるか微妙?
でも、生前にある程度の財産を贈与しておきたい。
そのような場合には、相続時精算課税制度の選択も検討しましょう。
生前贈与加算のルールは孫には適用されない?
生前贈与加算のルールには、実は相続または遺贈(遺言によって財産を取得すること)によって、財産を取得した場合に限られる、という決まりがあります。
では、相続または遺贈によって財産を取得しなかったら?
そうです。
3~7年以内贈与でも、相続財産に加算しません。
これはどういう時に使えるのか?
普通、子供や配偶者は相続人となり、相続または遺贈で財産を取得するのが一般的です。
でも、孫やひ孫はどうでしょうか?
簡単に言ってしまえば、孫やひ孫で、相続財産を相続しなければ、孫やひ孫に関しては【生前贈与加算のルールが適用されない】ということです。
このように「相続又は遺贈により財産を取得した者以外」の人への贈与は、相続開始前3~7年以内の贈与であっても、相続財産に加算しません。
ただ逆に言えば、遺言書によって、あえて孫やひ孫に財産を相続させる場合は、孫やひ孫も相続人ですので、3~7年以内に贈与された財産も「相続財産に加算」されます。
また、生命保険金の受取人にすることも同じです。
それから孫やひ孫と養子縁組を行って、あえて相続人にする場合も同様で、3~7年以内に贈与された財産は「相続財産に加算」されます。
そして、お子さんが「先に亡くなってしまっている」場合も、お孫さんは「お子さんの代わりに相続人」となりますので、この場合も3~7年以内に贈与された財産は「相続財産に加算」されます。
孫やひ孫だから、必ずしも「生前贈与加算の対象にならない」わけではありません。
3~7年以内贈与でも相続財産に加算しない財産
配偶者や子、あるいは孫であっても、以下の贈与であれば、たとえ3~7年以内贈与でも、生前贈与加算の対象になりません。
(正確に言いますと、加算しなくてもよい財産ではなく、ある財産については「ある一定の金額までは加算しなくてよい」というものです。)
- 贈与税の配偶者控除の特例を受けている財産で、配偶者控除額に相当する金額(贈与税の配偶者控除のメリットや注意点に詳細記載)
- 実父母や祖父母から一括贈与を受けた結婚・子育て資金のうち、非課税の適用を受けた金額(結婚・子育て資金の一括贈与のメリットや注意点に詳細記載)
- 実父母や祖父母から一括贈与を受けた教育資金のうち、非課税の適用を受けた金額(教育資金一括贈与のメリットや注意点に詳細記載)
- 実父母や祖父母から贈与を受けた住宅取得等資金のうち、非課税の適用を受けた金額(子供や孫への住宅取得資金の贈与のメリットや注意点に詳細記載)
活用をご検討される場合には、複雑な要件等もございますので、必ず専門家と相談しましょう。
相続間近でも贈与した方がいい場合もある
相続税が多額になりそうだ。
このような場合、孫などの生前贈与加算の対象にならない方に、ある程度の贈与税が発生してでも、贈与した方がいいケースもあります。
以下の事例のように【 相続税のみ > (相続税 + 相続直前の贈与税) 】という関係にあるなら、相続間際でも贈与を検討しましょう。
事例
- 相続財産:3億円
- 相続人:子供の3人
- 孫:8人
➀直前に贈与をせず、相続税のみ支払いの場合の相続税負担額:5,460万円
計算過程
- 3億 - 基礎控除4,800万(3,000万 + 600万 × 3人)=2億5,200万
- 2億5,200万 ÷ 3人 = 1人あたり8,400万
- 8,400万 × 30% - 700万 = 1,820万
- 1,820万 × 3人 = 5,460万
②直前に孫一人に600万円贈与をした場合、相続税と贈与税の合計額:4,564万円
計算過程(贈与税)_贈与税の合計:544万
- 600万 - 110万 = 490万
- 490万 × 20% -30万 = 68万(孫一人あたりの贈与税)
- 68万 × 8人 = 544万(贈与税の合計額)
贈与税の計算と税率の参考(国税庁HP):贈与税の計算と税率(暦年課税)
計算過程(相続税)_相続税の合計:4,020万
- 3億 - (600万 × 8人) = 2億5,200万
- 2億5,200万 - 基礎控除4,800万(3,000万 + 600万 × 3人)=2億400万
- 2億400万 ÷ 3人 = 1人あたり6,800万
- 6,800万 × 30% - 700万 = 1,340万
- 1,340万 × 3人 = 4,020万
動画で解説
生前贈与加算が2024年から7年に変更されます。税理士法人・都心綜合会計事務所の税理士・田中順子が解説しています。
字幕が付いておりますので、音を出さなくてもご視聴出来ます。