上場株式を購入しての贈与は「贈与税の節税」になる場合がある

現金を贈与するよりも、上場株式を購入して贈与するほうが、有利な場合があります。(不利な場合もあります。)

上場株式の贈与税評価額は贈与日と3カ月平均終値の最も低い価額

上場株式の贈与税の評価額は、以下の中から最も低い価額で評価します。

  1. 贈与日の終値
  2. 贈与月の毎日の終値の平均額
  3. 贈与月の前月の毎日の終値の平均額
  4. 贈与月の前々月の毎日の終値の平均額

この評価額の計算方法により、現金で贈与するよりも、その現金で値上がりしている上場株式を購入し、その株式を贈与した方が贈与税の節税になる、ということがあります。

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上場株式の相続税評価方法

値上がり中の株式なら贈与税の節税効果あり

上場株式の贈与
上場株式の贈与
値上がり中の株式なら贈与税の節税効果あり

例えば祖父母から孫へ現金1,000万円を贈与した場合、贈与税は以下のようになります。

贈与税額:177万円
【計算式:(1,000万円-110万円)×30%-90万円】
(贈与税率の詳しい内容は国税庁HPの贈与税の計算と税率(暦年課税)をご参照)

これを現金1,000万円の贈与ではなく、その現金1,000万円で以下のような上場株式1万株(1株1,000円)を購入して、その上場株式を贈与した場合の贈与税は以下のようになります。

贈与税額:132万円
【計算式:(1万株×850円-110万円)×30%-90万】

  1. 贈与日の終値:1,000円
  2. 贈与月の毎日の終値の平均額:950円
  3. 贈与月の前月の毎日の終値の平均額:900円
  4. 贈与月の前々月の毎日の終値の平均額:850円

現金1,000万円を贈与するのと、現金1,000万円で上場株式【1万株×1,000円】を購入して贈与する場合では、上記の例の場合、45万円(177万円-132万円)の贈与税の節税になります。

上記の例のように、現金を贈与するよりも、その現金で上場株式を購入し、その上場株式を贈与したほうが「贈与税の節税」になる場合があります。

ただし、贈与税の節税になったとしても、株価そのものが暴落したら・・

業績下降
業績下降
株価暴落

仮に上記の例の株式が1株100円になった場合、その株式を売却しても100万円にしかなりません。

これであれば、贈与税が多少高くなろうとも、現金1,000万円で贈与されたほうが良かったと言えます。

このように贈与税の節税に使える上場株式の贈与は、値下がりリスクがあります。

贈与税の節税になっても、株価が暴落しては元も子もありません。

  • 現金を贈与するか?
  • 現金で上場株式を購入して、その株式を贈与するか?

は贈与税の節税という観点からだけではなく、値下がりリスクや配当なども十分考慮して行いましょう。

なお、贈与された後に直ぐに売却するなど、「明らかに節税対策を目的した上場株式の贈与」であるとみなされた場合は、売却時の価額により贈与があったものとして課税される場合もあります。

動画で解説

現金を直接贈与するのではなく、その現金で上場株式を購入し、その株式を贈与する節税メリットについて、税理士法人・都心綜合会計事務所の税理士・田中順子が解説しています。

字幕が付いておりますので、音を出さなくてもご視聴出来ます。

上場株式の贈与メリット

動画内容

なぜ現金を贈与するよりも、わざわざ上場株式を購入して、その株式を贈与することに節税のメリットがあるのかというと、上場株式を贈与したときの評価額は、贈与をした日のものでなくてよいからです。

まず、現金を贈与した場合で考えてみましょう。

仮に親から子供(20歳以上)に現金1,000万円を贈与した場合、発生する贈与税は177万円になります。

では、そのお金で上場株式を1,000万円分購入して贈与した場合も、贈与税は177万円になるかというと、そうではありません。

上場株式の場合、贈与税を計算するときに使う評価額を、次の4つの価額から選ぶことができます。

1つ目は贈与をした日の終値、2つ目は贈与をした月の毎日の終値の平均、3つ目は贈与をした月の前月の終値の平均、最後は贈与をした月の前々月の終値の平均です。

たとえば、ある銘柄の株式を1万株購入して贈与したとします。

贈与をした日の終値が1株あたり1,000円だとしたら、この日の評価額は1,000万円です。

現金1,000万円を贈与したのと、一見変わりません。

しかし、もしその月の平均が950円だった場合、950万円の株を贈与したとして、贈与税を計算することができます。

さらに前月の平均は900円、前々月の平均は850円だった場合、この4つの価額の中で、もっとも有利に贈与税を計算できるのは前々月の850円です。

よって、今は1,000万円に相当する株式の贈与なのに、850万円の贈与として贈与税を計算することができます。

ちなみに、850万円の贈与を親から受けた場合の贈与税は132万円です。

1,000万円のときは177万円でしたから、かなりの節税になります。

このように現金を贈与するときは、過去3ヶ月間で値上がりをしている株式で贈与すると、贈与税の節税になる、ということになります。

ただし、この方法で節税したいときには注意点が2つございます。

1つは金融商品ですので、値下がりのリスクがあるということです。

株式を持っていて価額が上がり続ければよいのですが、株式の贈与である以上はマイナスになってしまう、というリスクも受け入れなければなりません。

そしてもう1つは、贈与された後にすぐに売却するなど、明らかに節税対策を目的とした上場株式の贈与であるとみなされた場合、売却時の価額により贈与があったものとして課税される場合もございます。