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相続税対策の壁となる「認知症リスク」

テレビや雑誌、インターネットなどで、相続税対策について調べたことがある方も多いでしょう。代表的な対策には次のようなものがあります。

  • 現金を不動産に換える
  • 生前贈与を毎年少しずつ行う
  • アパートを建てて借入金を作る
  • 資産管理会社を設立する

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生前贈与とは何?相続との関係は?会社設立で生前に財産を移転する相続税の節税方法とは?不動産購入での相続税対策は慎重に検討すべき時代

ご家庭の資産状況によって最適な対策は異なりますが、どれほど素晴らしいプランを立てたとしても、親(被相続人)が認知症になってしまうと、そのすべてが実行できなくなるという大きな落とし穴があります。

法律上、認知症が進行して「意思能力がない」と判断されると、財産の処分や契約行為(生前贈与や不動産の売買など)がいっさい行えなくなります。つまり、銀行口座が凍結され、どんなに有効な相続対策もストップしてしまうのです。

そこで現在、最も有効な予防策として注目されているのが「家族信託」です。

誤解されがちですが、家族信託を契約すること自体に直接的な相続税の節税効果はありません。しかし、親が元気なうちに家族信託の契約を結んでおけば、もし将来認知症になってしまったとしても口座凍結などを防ぎ、信頼できる家族の判断で生前贈与や不動産活用といった「相続税対策」を予定通り継続し続けることができます。つまり、節税対策を止めないための強力な防具(土台)となるのです。

財産管理
財産管理
家族信託を利用すれば、被相続人の財産を家族が代わりに管理・処分できる

ただし、ここで最も重要な注意点があります。
それは、「認知症になってからでは家族信託は始められない」ということです。必ず、意思能力がしっかりしている元気なうちに対策をスタートさせる必要があります。

高齢者の約7人に1人が認知症となる時代

団塊の世代がすべて75歳以上となった現在、厚生労働省の推計によると、高齢者の約7人に1人(約470万人)が認知症になると予測されています。

もはや認知症は誰にとっても人ごとではなく、いつ自分の家族に起きてもおかしくない身近な問題です。

認知症
身近な認知症
超高齢化社会において、認知症は誰の身にも起こり得る身近な問題

もし何の対策もせずに認知症になってしまうと、前述の通り財産が凍結されます。この状態を解決するための国の制度として「成年後見制度」がありますが、注意が必要です。

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認知症後の相続税対策は原則無効で成年後見人の選任が必要

成年後見制度は、あくまで「本人の財産を現状維持で守るための制度」です。

守ります
財産の保護
成年後見制度は認知症の方の財産を「守る」という目的が強い

そのため、子供や孫への生前贈与や、節税のためのアパート建築など、「本人の財産を減らす可能性のある行為」は家庭裁判所に認められないケースがほとんどです。さらに、一度後見人がつくと、定期的に裁判所への報告義務が生じるなど、家族への負担も少なくありません。

一方、「家族信託」は家族同士のプライベートな契約です。

個人間の契約
柔軟な契約
家族信託は家庭裁判所を通さない、家族同士のプライベートな契約

家庭裁判所の監督を受けず、あらかじめ家族で話し合って決めた目的に沿って、柔軟に財産を活用し続けることができます。だからこそ、認知症になる前の「早めの準備」が推奨されているのです。

ただし、ここで1つ注意点があります。家族信託で管理できるのはあくまで「財産」のみであり、老人ホームの入所手続きや医療・介護の同意といった「身上保護(生活面の契約サポート)」の権限はありません。そのため、ご本人の生活全般を幅広くサポートする場合には、任意後見制度と家族信託を併用するケースも多く見られます。

家族信託だからこそ実現できる画期的な財産管理

家族信託を利用すると、親が元気なうちに「財産の管理や処分の権利」だけを、信頼できる子供などに託すことができます。具体的には次のような大きなメリットがあります。

  1. 認知症発症後も、家族の判断で財産を動かせる
    親の介護施設入居費用を作るために、親名義の実家を子供の権限で売却することができます。また、修繕が必要なアパートの建て替えなどもスムーズに行えます。
  2. 「次の次の世代」まで財産の行き先を指定できる
    実は、一般的な遺言書では「長男に相続させる」という一代限りの指定しかできません。しかし家族信託なら、「まずは長男に相続させ、長男が亡くなった後は(長男の妻ではなく)次男に相続させる」といった、数世代先を見据えた指定(受益者連続型信託)が可能です。

先祖代々受け継いできた土地を守りたい場合や、特定の親族に財産が流れるのを防ぎたい場合など、遺言書では届かなかった願いを叶えることができます。※ただし、実際に次世代以降へ財産を承継させる際は、他の相続人に法律で保障された最低限の取り分(遺留分)を侵害しないよう、慎重な制度設計が必要です。

指定
数世代先の指定
家族信託を利用すれば、次の次の承継先まで指定できる

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遺言でできないことは主に6つ

家族信託は、単なる財産管理の手法を超えて、ご家庭の大切な財産と思いを守る「完全オーダーメイドのルール作り」と言えます。今後、相続対策のスタンダードになっていくことは間違いありません。

マイルール
マイルール
家族ごとに最適な相続のルールを自由に設計できる

ただし、家族信託は非常に専門的な法律手続きを伴います。
将来、家族間で「言った・言わない」のトラブルにならないよう、契約書の作成や設計は必ず相続に精通した専門家と一緒に進めるようにしてください。

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