任意後見制度なら判断能力が低下した後も自分の意志を尊重できる

配偶者は既に死亡しており、子供もいない。

そして、頼れる親族も皆、亡くなっている。

あるいは、子供はいるが海外で暮らしており、とても老後の面倒は期待できない。

もしも、自分が認知症になった時、財産の管理はどうなるのか?

このような悩みや不安を解消する方法として、任意後見制度の活用が考えられます。

任意後見制度とは

任意後見制度とは、簡単に言えば、将来の自分の財産の管理方法を、認知症等を患う前(判断能力が低下する前)に決めておく制度です。

そして、任意後見制度では、財産管理を任せる相手(いわゆる任意後見人)を限定していません。

成人であれば、誰にでも任意後見人への就任を依頼できます。

友人への依頼も可能です。

任意後見制度
任意後見制度
誰にでも任意後見人への就任を依頼できる

任意後見制度の具体的な内容や利用の流れ

本人の判断能力が正常な段階で、将来任意後見人になってほしい人との間で、任意後見契約を締結します。

この任意後見契約で、本人の判断能力が認知症などにより正常でなくなった際に、任意後見人に任せる事務の内容や範囲等について、決めておきます。

任意後見人に任せる事務の内容や範囲等の具体例は、以下のようなものとなります。

  • 介護契約
  • 税金の申告
  • 不動産管理
  • 預貯金の取り扱い
  • 福祉施設への入所契約

そして、この任意後見契約は、本人の意思を明確にするため、公正証書で作成する必要があります。

ちなみに、任意後見契約の解約は、公証役場で自由にできます。

通常の委任契約も同時に結ぶリスク

任意後見人に就任する予定の人と、任意後見契約以外に、「通常の委任契約も同時に結ぶ」という方法があります。

なぜ、通常の委任契約も結ぶのかというと、本人の判断能力の衰えに関わらず、同一人物へ財産の管理を依頼し続けることができ、何かと便利なことが多いからです。

ただし、通常の委任契約を結ぶ、というのには注意点もあります。

それは、本人の判断能力が正常でなくなった際に、任意後見契約の効力を発生(下記に記載)させず、委任契約のもと、財産を自由に使われてしまう、といったリスクがあるからです。

信頼できる?
信頼できる?
あなたの判断能力が低下しても、本当に約束を守る人か?

本当に信頼できる人なのか迷う場合には、任意後見契約のみ締結しましょう。

任意後見契約の効力が発生するタイミング

任意後見人は、就任の承諾さえあれば、友人や知人はもちろん、親族や法律の専門家(弁護士や税理士)もなれます。

ただし、任意後見人は、家庭裁判所が選任した任意後見監督人の監督を受ける必要があります。

この監督を受けるというのは、任意後見人が権限を濫用していないか等のチェックを受ける、ということです。

誰でもなれる代わりに、監督(チェック)を受ける、ということです。

そして、任意後見人は誰でもなれるのに対し、任意後見監督人には、任意後見人の配偶者、直系血族(親や子供など)、兄弟姉妹はなることが出来ません。

この任意後見監督人は、任意後見契約に基づき、任意後見人が家庭裁判所に任意後見監督人の選任を請求し、家庭裁判所が選任します。

そして、この任意後見監督人が選任された時に、任意後見契約の効力が発生します。

また、任意後見監督人が選任された後は、任意後見契約の解約は自由にできず、正当な理由と家庭裁判所の許可が必要となります。

認知症になったら即、任意後見契約の効力が発生する訳ではありませんので、注意しましょう。

認知症発生
認知症発生
「判断能力の低下 = 任意後見契約の効力発生」ではありません。