信託監督人を選任するか・受託者解任の規定を設ける

受託者が信用できない場合の【対処法や解任方法】について、解説しています。

受託者が信用できない場合には信託監督人を選任する

受託者を誰にするか・・?

これは非常に重要な問題です。

たとえば、父から見れば仲の良い兄弟に見え、しかも年の差のある兄弟がいたとします。

父としては、長男がしっかり次男のために信託財産の管理・処分をしてくれるだろう、という考えがあり、委託者(父)・受託者(長男)・受益者(次男)とした信託契約を結んだ。

しかし、いざ信託が始まったら、長男(受託者)が自分の都合のいいように、巧みに信託財産を管理・処分しだした。

あるいは弟(受益者)の不利益になるようなことを、巧みにし始めた。

しかし、受託者は長男であり、信託財産の管理・処分をする権利があります。

確かに、受託者には「信託財産を分別管理する義務」があります。
(詳しくは受託者は信託財産を分別管理する義務があるに記載)

しかし、弟(受益者)のためと偽り、自分の都合のいいように信託財産を管理・処分しだしたら・・。

このように、信託財産を分別管理する義務があるからといって、受託者が本当にしっかりと信託財産を管理・処分してくれるのか?という問題は残ります。

そこで、受託者を任せられるような信頼できる人がいない、もしくは心配が消えないという場合には、信託監督人を選任するという方法があります。

信託監督人とは受託者を監督する者です。

信託監督人
信託監督人
受託者に心配がある場合、信託監督人を選任する

信頼できる第3者を信託監督人として選任し、受託者を監督してもらうということです。

受託者が信託財産の管理・処分に適さないと、信託監督人が判断した場合には、受託者を解任できる、という既定を設けることも可能です。

関連記事へのアイコン関連記事

受託者の責任を限定する方法

委託者と受益者が合意すれば受託者の解任は可能

信託監督人が受託者を解任できる、という既定を設けることは可能です。

では、信託監督人を選任し規定を設けないと、受託者の解任はできないのか?
というと、そういう訳でもありません。

信託監督人を選任していなくても、委託者と受益者が合意すれば受託者の解任は可能です。

受託者の解任
受託者の解任
委託者と受益者が合意すれば受託者の解任は可能

また、例えば「受益者は受託者を解任できる」などの規定を信託契約に設ければ、受益者の意思だけで解任することも可能です。

もしも、受託者の解任に特段の規定を設けていなければ、委託者と受益者が合意が必要となります。

では、委託者がいない(既に死亡している)場合には解任できないのか?

原則は出来ません。

しかし、明らかに受託者が信託財産に損害を与えている等の場合には、受益者が裁判所に申し立てを行うことにより解任することが出来ます。

ただ、裁判所に申し立てる等の大掛かりにならないためにも、信託契約に受託者の解任ついて、規定を設けておきましょう。

関連記事へのアイコン関連記事

家族信託で受託者が死亡したり認知症になったら?

動画で解説

受託者が信用できないときの信託監督人の制度や解任方法について、税理士法人・都心綜合会計事務所の税理士・田中順子が解説しています。

字幕が付いておりますので、音を出さなくてもご視聴出来ます。

家族信託の受託者が信用できない

動画内容

信託を活用するとき、誰を受託者にするかはしっかり考えて決めなければなりません。

受託者とは、託された財産を管理・運用する人のこと、つまり、大事な財産を預ける相手のことです。

信託という名称のとおり、信じて財産を託す相手がいることが信託の大前提となります。

ところが受託者に選んだ人が、自分のために財産を使い込んでしまう可能性はゼロではありません。

そうなれば、せっかく始めた信託が無意味なものになってしまいます。

「そもそも、受託者になった人がそんなことしていいの?」と思われますよね。

当然ですがダメです。

信託法という法律には、受託者は託された財産を自分の財産と、分別して管理しなければならない義務がある、と明記されています。

しかし、明らかにダメだとわかる行為を堂々とする人はいません。

ですので、そういう行為を相手がこっそりしないようにする、抑止対策があったほうがいいですよね。

受託者への抑止対策として有効なのは、まず信託監督人を選任する方法です。

信託監督人とは、受託者を監督する人をいいます。

信頼できる第三者を信託監督人として選任し、受託者を監督してもらえば、不正に対する抑止力になります。

このとき「受託者が信託財産の管理・処分に適さないと、信託監督人が判断した場合には、受託者を解任できる」というルールを設定しておくと、より効果的でしょう。

では「信託監督人を選任したり、こうしたルールを作ったりしておかないと、受託者はずっと解任できないのか?」と思われるかも知れません。

実は信託監督人がいなくても、委託者と受益者が合意すれば、受託者の解任は可能です。

また「受益者は受託者を解任できる」といったルールを設定しておけば、受益者単独の判断で受託者を解任することも可能です。

こうした方法も、不正に対する抑止力になるでしょう。

もちろん、こういうルールがなくても、先ほど説明したように、委託者と受益者の二者が合意すれば、受託者の解任は可能です。

では、この場合、もし委託者が亡くなっている場合は解任できないのでしょうか。

原則は出来ません。

受益者が裁判所に、受託者が財産に損害を与えている状況について申立てをすれば、解任できる余地はあります。

ただ、これはいってみれば最終手段です。

こうしたことにならないよう、あらかじめ信託監督人の制度を利用する、あるいは、受託者の解任ルールを設定しておくなどの対策を講じておくほうがよいでしょう。