遺言書で「家族信託で出来ないこと」等をカバーする
家族信託をしておけば、「遺言書は書かなくてもいい」のでしょうか?
全部家族に任せているから、もう遺言書はいらないかな?と思うかもしれません。
ただ、家族信託をしていても、遺言書は書いておく方がいいです。
それは家族信託をするときに、「全部の財産を信託していない」かもしれないからです。
もともと、家族信託できない財産もあります。
また、家族信託の契約をした時には「なかった財産」が、お父さんが亡くなってから発見された、という場合もあります。

家族信託した後に、新たに財産を発見
こういうケースもあるので、やはり家族信託をして、また遺言書も書きましょう。
遺言書で家族信託で出来ないこと等をカバーすれば、残された家族が「円満に相続ができる可能性」が高まります。

家族信託していも遺言書は書く
確かに家族信託は万能的という側面はありますが、それは家族信託が対象にした財産に対してです。
そもそも信託財産にしていない財産は、家族信託でどうこう出来ません。
この信託財産にしていない財産は、遺言書できっちりと相続人を定めておくのが賢明と言えます。
家族信託で全ての財産を網羅しているから問題はない?
確かに信託契約をした時点において、被相続人の遺産全てを信託財産にしていれば、問題はないように見えます。
ただ、そもそも年金などは信託することが出来ません。
また、信託契約時にはなかった財産が、その後発生する・していることもあります。
そう考えると、家族信託をしつつも、遺言書は書くという姿勢で、相続に臨むがベストと言えます。
家族信託が優先される
家族信託をした。さらに遺言書も書いた。
相続人の立場から見れば、家族信託をしている信託財産に対して、遺言書でも記載されている。
どちらを優先すればいいのか?
この場合、家族信託が優先されます。
家族信託をすると、財産の名義が受託者に移ります。
もうその時点で、被相続人(委託者)の財産ではなくなります。
そして遺言書で定めるのは、被相続人(委託者)の財産を誰に相続させるかです。
自分の財産でないものを遺言書に書いても、その部分については無効となります。
逆に家族信託の対象にしていない財産で、遺言書に記載したものは有効です。
動画で解説
家族信託と遺言書はどちらが優先されるのか?について、税理士法人・都心綜合会計事務所の税理士・田中順子が解説しています。
字幕が付いておりますので、音を出さなくてもご視聴できます。
動画内容
家族信託、という言葉を聞かれたことはありますか?
まだ、あまり知られてはいませんが、これからの遺産相続では多くなるかもしれない手続きです。
なぜ家族信託がこれからの遺産相続で多くなるのでしょうか?
それは認知症と関係しています。
これからの日本では5人に1人が認知症になるかもしれない、と言われています。
認知症になると、前もって節税を考えたりすることができなくなります。
でも、誰がいつ認知症になるかはわかりません。

そこで認知症になる前に前もって、財産の管理や処分を家族に任せられるようにしておくのが家族信託です。
今回はこの家族信託と遺言書について、お伝えをします。
家族信託をしていると、仮にお父さんが認知症になっても家族が相続税対策をすることができます。
また、お父さんの財産を管理したり、必要だったら処分したりすることもできます。
では、家族信託をしておけば遺言書は書かなくてもいいのでしょうか?
全部家族に任せているから、もう遺言書はいらないかな、と思われるかもしれません。
でも、家族信託をしていても遺言書は書いておく方がいいのです。
それは家族信託をするときに「全部の財産を信託していない」かもしれないからです。
家族信託をしていない財産は、やはり遺言書で相続人を決めておく方が後で揉めずにすみます。
それなら漏れなく全部の財産を書き出して、家族信託をすればいいのではないか?
と思う方もいらっしゃるかもしれません。
しかし、家族信託できない財産もあります。
また、家族信託の契約をした時にはなかった財産が、お父さんが亡くなってから調べたら「あった」という場合もあります。
こういうケースがあるので、やはり家族信託をして、また遺言書も書く方がいいのです。
さて、では家族信託をした上に遺言書も書いた場合に、どちらが優先されるのでしょうか?
例えば家族信託では、実家の土地と家はあなたのものになっています。
でも、遺言書には弟(に)と書かれています。
この場合はあなたと弟さんのどちらが優先されるのでしょうか。
答えは家族信託が優先されます。
先ほどの例でいくと、あなたが実家の土地と家をもらうことになります。
実は家族信託はそれをした時に財産の名義が変わるのです。
先ほどの例でいくと、家族信託をした時に実家の土地と家はお父さんのものではなく、あなたの財産になっています。
そのため、お父さんが遺言に「実家の土地と家は次男に」と書いていても、もう、その実家の土地と家はお父さんのものではありませんから、弟さんにあげることはできません。
このように家族信託とお父さんの遺言で、同じ財産を違う人が相続するようになっている場合は、家族信託が優先されて、お父さんの遺言のその部分は無効になります。
もちろん、家族信託の対象になっていない財産は、遺言書に書かれた内容が有効になります。
認知症はいつ、誰がなるかわかりません。
発症する前に家族信託をして、さらに遺言書も書いておくと、残される家族は円満に相続ができて感謝されることになるでしょう。
しっかりとした相続税対策をたてるためにも、一度、専門家に相談しましょう。