外階段のみ・玄関が別々・中で行き来できない二世帯住宅も評価減可能

二世帯住宅の土地は、小規模宅地等の特例の適用ができ、相続税評価額を大幅に減額できます。

ただし、注意点もあります。

今回は、二世帯住宅が相続税対策になる理由と注意点について、解説しています。

二世帯住宅でも小規模宅地等の特例は可能

親と同居して、ある一定の条件を満たせば、その土地は小規模宅地等の特例の適用が出来ます。

居住用であれば、【100坪(330㎡)まで8割りの評価減が出来る】という強力な特例です。

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小規模宅地等の特例は8割も評価減が可能な相続税対策の王様

そして、この小規模宅地等の特例は二世帯住宅でも適用出来ます。

二世帯住宅が構造上区分されていても問題ありません。

その敷地全体が特例の対象となります。

二世帯住宅
二世帯住宅
小規模宅地等の特例は二世帯住宅でも適用出来ます。

完全分離型の二世帯住宅でも大丈夫です。

例えば1階、2階の行き来きが、

  • 内階段
  • 外階段

に関係なく居住用であれば、その建物の敷地全体の330㎡まで80%減額出来ます。

ちなみに平成25年以前は、玄関が一つで、家の中で行き来が出来る二世帯住宅のみに、小規模宅地等の特例が適用できました。

外階段はダメ
外階段はダメ
平成25年以前は、二世帯住宅でも外階段の場合には、小規模宅地等の特例が適用出来ませんでした。

内階段・外階段などの二世帯住宅の構造上の違いで判断するのはおかしい、という苦情が多く寄せられたこともあり、平成26年1月1日に改正されました。

クレーム
クレーム
外階段だからといって、税金を多く取るとは何事だ!

今では完全分離型の二世帯住宅で、

  • 外階段のみ
  • 玄関が別々
  • 中で行き来ができない

これでも小規模宅地等の特例が適用できます。

区分所有登記の建物の場合は小規模宅地等の特例は使えない

外階段のみで玄関が別々の完全分離型の二世帯住宅でも、小規模宅地等の特例は適用出来ます。

このように平成26年にかなり条件が緩くなっています。

二世帯住宅が相続税対策として、使いやすくなったとも言えます。

ただ、一つ注意点があります。

それは建物が区分所有登記されている場合には対象外ということです。

例えば、

  • 1階は親名義
  • 2階は子供名義

になっている場合、小規模宅地等の特例は使えません。

区分所有登記
区分所有登記
1階は親名義で2階は息子名義の場合などには、小規模宅地等の特例は使えません。

意外と融資の関係などから、親子で二世帯住宅を区分所有登記している例は少なくありません。

ただし、区分所有登記がされているからといって、絶対に小規模宅地等の特例の対象にならないのか?というとそういうわけではありません。

例えば、

  1. 1階と2階を内階段で自由に行き来できる
  2. 2階にお風呂と台所があり、親子が一緒に使用している

このような場合には、親も2階を使用しないと生活できないため、生計を一にしていると認められる場合もあり、「認められれば小規模宅地等の特例の対象」になります。

同一生計
同一生計
生計を一にしていると認められる場合には、区分所有登記でも小規模宅地等の特例の対象になります。

基本的に建物内部で行き来が出来る場合は、区分所有登記は出来ません。

しかし、区分所有後の建物の改修などにより、実際には建物内部で行き来が出来るにも係わらず、区分所有登記されているという場合はあります。

また、区分所有登記の前に未登記だったらどうなるか?

未登記の場合は、区分所有登記がされていませんので、小規模宅地等の特例の対象になります。

小規模宅地等の特例は、頻繁に税制改正される分野です。

相続税対策として二世帯住宅を考える場合には、小規模宅地等の特例の動向には注意が必要です。

動画で解説

二世帯住宅を使った相続税対策について、税理士法人・都心綜合会計事務所の税理士・田中順子が解説しています。

字幕が付いておりますので、音を出さなくてもご視聴出来ます。

二世帯住宅は相続税対策になる?

動画内容

二世帯住宅にすると、二世帯住宅が建っている「土地」の部分で相続税対策を行うことが出来ます。

たとえば、お父さん名義の土地に二世帯住宅を建てて、1階にお父さん、2階に長男一家が住んでいるとします。

もし、お父さんが亡くなって、長男がお父さん名義の土地を相続する場合、その土地には小規模宅地等の特例という、相続税の特例が使えます。

この特例を使えば、土地の評価額を最大8割も減額して、相続税を計算できます。

5,000万円の土地なら、1,000万円の財産として相続税を計算できるということです。

かなり大きな節税ができますよね。

しかし、この特例を使うためには、クリアしなければならない条件がいくつかあります。

その中で、もっとも重要なのは、誰が土地を相続するかです。

細かい条件の説明はここでは割愛いたしますが、ざっくり言えば、特例が使えるのは、

  • 亡くなった人の配偶者
  • 生前に同居していた親族
  • 持ち家に住んでいない親族

などが土地を相続する場合になります。

もし長男一家が二世帯住宅ではなく、違う場所に家を建てて生活をしていれば、お父さんの土地に小規模宅地等の特例を使うことはできません。

生前に同居していた親族にも、持ち家に住んでいない親族にもあたらないからです。

これが二世帯住宅に住んでいる場合であれば、1階と2階に分かれて暮らしていても、今は同居として扱ってもらえますので、小規模宅地等の特例は使えます。

「今は」というのは、実はわりと最近まで、玄関が一つでないと同居にならないとか、家の中の内階段で行き来が出来ていないといけないとか、外階段ではダメ、といった制約がありました。

ただ、構造の違いだけで特例の適用を認めるのはおかしい、というクレームが多かったため、平成26年から普通の二世帯住宅でも特例の適用を受けることが出来るようになりました。

ただし、今でも二世帯住宅には注意しなければならない点があります。

それは、それぞれの世帯が区分所有登記をしているときです。

区分所有登記とは、マンションの101号室と102号室のように、建物の中で所有権を分けて登記していることをいいます。

区分所有登記をして住宅を買うことには、融資の面などでメリットもあるのですが、これでは同居とはいえません。

よって、区分所有登記をすると、原則、小規模宅地等の特例は使えなくなります。

ただし、区分所有登記をしていても、たとえば、1階と2階を建物内の階段で自由に行き来ができるとか、お風呂と台所が1階にしかなくて、親子が一緒に使用しているというようなときは、同居と認められる場合もあります。

そもそもこうした構造なら、最初から区分所有登記をしませんが、登記をした後に建物の構造を変更したようなケースがあてはまります。

最後になりますが、小規模宅地等の特例は使えると使えないとでは、相続税に雲泥の差が生じます。

今回ご説明した条件以外にも、クリアしなければならない細かい条件がありますので、土地の相続があるときは税理士に相談しましょう。

そして、相続税の対策や相続手続き、相続税の申告のことなら、税理士法人・都心綜合会計事務所にお任せください。