災害で事業断念の場合は「事業継続意思の有無」で小規模宅地等の適用は変わる

災害で故人の引継いだ事業を断念した場合でも、小規模宅地等の適用は可能かどうか?について、解説しています。

事業の継続意思があるなら適用は可能

相続で取得した故人(被相続人)の事業用建物や施設が災害により消失した。

消失
消失
事業用建物や施設が災害により消失

その事業を相続税申告期限までに継続することが、到底不可能になってしまった。

特定事業用宅地等として、400㎡まで80%減額できる小規模宅地等の特例の適用条件としての、申告期限までその宅地を有し事業を営んでいること、を満たさない。

事業を再開するのにも、修繕費用など莫大なお金がかかり、事業の再開は無理そう。

ただ、相続開始の直前には確かに事業を営んでいた。

それに事業を辞めたくて断念したわけではない。

災害という不可抗力でどうしようもなかった・・。

せめて小規模宅地等の特例の適用を受けて、相続税だけでも節税したい。

このような場合、小規模宅地等の特例の適用は出来るのか?

結論から言いますと、【事業の継続意思がある】なら小規模宅地等の特例の適用は可能です。

再起
再起
事業を継続する意思があるなら小規模宅地等の特例の適用は可能

被相続人の事業の用に供されていた事業用建物や施設が災害により消失や損傷を受け、相続税の申告期限においてその事業が休業状態になっても、その事業用建物や施設を相続により取得した被相続人の親族が事業再開のために準備を進めているときには、その施設の敷地は、その申告期限においても、その相続人の事業の用に供されているものとして取り扱われます。

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申告期限までに事業内容を変更しても小規模宅地等の特例は使える?

事業の継続意思がない場合は厳しい?

事業の継続意思がなく、完全に事業断念をした場合はどうなるのか?

事業断念
事業断念
事業継続をあきらめたら?

これは小規模宅地等の特例の適用は「厳しい」と言えます。

そもそも特例の要件の一つとして、「申告期限までその宅地を有し事業を営んでいること」とありますが、この要件には以下のような目的があります。

  • 雇用の維持
  • 取引先等を含めた利害関係者への事業廃止に伴う悪影響の防止

そうなると、事業の継続をする意思がない場合には、上記のような目的を達することが出来ません。

雇用
雇用
事業継続をしないと雇用の維持が出来ない

事業の継続意思がない場合には、特定事業用宅地等として、小規模宅地等の特例で敷地の80%減額は「無理と考えるのが賢明」と言えます。

動画で解説

災害で故人の引継いだ事業を断念した場合の小規模宅地等の適用について、税理士法人・都心綜合会計事務所の税理士・田中順子が解説しています。

字幕が付いておりますので、音を出さなくてもご視聴出来ます。

災害で故人の引継いだ事業を断念した場合は小規模宅地等の適用は?

動画内容

小規模宅地等の特例が使える宅地は、被相続人の生前の用途によって、条件や減額率が分かれています。

この生前の用途の区分に、被相続人が生前に事業のために使っていた宅地、というものがあります。

この土地に特例を使うためには、相続したあと、少なくとも相続税の申告期限までその土地を保有し、事業を継続して営んでいることが条件となります。

今回は、災害による不可抗力で、申告期限までに事業を継続できなくなった場合、小規模宅地等の特例がどうなるのかについて、お話を致します。

災害によって事業用の建物や施設が消失してしまい、事業を続けることが不可能になってしまった。

事業を再開したいけれど、莫大なお金がかかるので難しい。

こうした場合でも、相続人に事業を継続する意思があるのなら、小規模宅地等の特例を適用することは可能です。

たとえ、災害の影響で休業状態でも、事業を再開するための準備を進めているのなら、事業を継続しているものとして特例の対象になります。

では、事業を継続する意思がなく、完全にあきらめた場合はどうなるのかといいますと、特例の適用は「難しい」と言えます。

あくまで「難しい」としているのは、あきらめたらダメという法律があるわけではないからです。

ただ、事業を継続するという条件が、何故わざわざ法律によって与えられているのか?

その背景を考えると、特例の適用は難しいと言わざるをえません。

事業を継続することが、一体なぜ特例の条件になっているのかといいますと、理由は事業を継続することで、利害関係者を守りたいという思惑があるからです。

経営者の死亡によって廃業になれば、従業員の生活や取引先などに悪影響を及ぼします。

そのために相続人が事業を承継しやすいよう、土地の税負担の大幅な軽減を行ってくれるのが小規模宅地等の特例です。

もし事業を完全にあきらめてしまったら、特例の目的を達成することが出来ません。

よって、税務署の判断は厳しいものになるはずです。