事業内容を変更しても小規模宅地等の特例を適用できる場合がある

申告期限までに事業内容を変更しても、小規模宅地等の特例は使えるのかどうか?について解説しています。

被相続人の事業を承継した場合には申告期限まで内容変更はNG

被相続人の事業を承継し、申告期限までその宅地を有し、引き続き事業を営んでいる場合、特定事業用宅地として、その土地の評価額を400㎡まで8割減額出来ます。

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では、申告期限までの間に、事業内容を変更した場合はどうなるのか?

例えば、被相続人の事業である魚屋を申告期限までの間に辞めて、ホームページ制作業を始めた場合には、小規模宅地等の特例は適用できるのか?

魚屋からホームページ制作業へ事業内容変更
魚屋からホームページ制作業へ事業内容変更
申告期限までに事業内容を変更しても、小規模宅地等の特例は適用できる?

このように申告期限までの間に、事業内容を変更した場合には、、小規模宅地等の特例は適用できません。

相続したその敷地の「8割評価減が出来ない」ということです。

特定事業用宅地として小規模宅地等の特例の適用を受けるためには、被相続人の事業を引き継ぎ、申告期限まで継続し、かつ、その宅地を申告期限まで保有している必要があります。

条件として、被相続人の事業を承継した場合には、被相続人の事業そのものを、申告期限まで継続して営む必要があります。

申告期限までに事業内容を変更するということは、相続人が異なる事業を開始したことを意味します。

そうなると、

  • 被相続人の事業を引き継ぎ
  • 申告期限まで継続

という要件を満たしていません。

このため、小規模宅地等の減額特例制度の適用は受けられません。

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同一生計親族の事業であれば申告期限まで内容変更してもOK

では、被相続人の「生計一親族が営む事業用」の宅地等の相続の場合はどうなるのか?

例えば、被相続人の建物を使用貸借で借り受けて、八百屋を営む長男(相続人)が、その敷地を相続より取得した。

そして、申告期限の間までに、八百屋からコインランドリーに事業内容を変更した。

八百屋からコインランドリーに事業内容変更
八百屋からコインランドリーに事業内容変更
申告期限までに事業内容を変更しても、小規模宅地等の特例は適用できる?

この場合、結論から言いますと、小規模宅地等の特例を適用できます。

相続したその敷地の「8割の評価減が出来る」ということです。

被相続人と生計を一にする相続人等の事業用宅地等については、以下の条件を満たせば、小規模宅地等の特例を適用できます。

  • 同一生計親族が自ら事業をしている
  • その事業に係る宅地をその相続人等が取得
  • 申告期限までその敷地を保有している
  • 事業を申告期限まで継続して営んでいる

そして、被相続人の事業を承継した場合と大きく異なるのが、事業の内容についての限定がない点です。

なので、申告期限までに事業内容を変更しても、条件を満たすことになり、小規模宅地等の特例を適用出来ます。

動画で解説

相続税の申告期限までに、事業の内容を変更したとき、小規模宅地等の特例は使えるのか?ということについて、税理士法人・都心綜合会計事務所の税理士・田中順子が解説しています。

字幕が付いておりますので、音を出さなくてもご視聴出来ます。

申告期限までに事業内容を変更しても小規模宅地等の特例は使える?

動画内容

まず、小規模宅地等の特例について、少し整理をしておきましょう。

事業を行っている土地を相続した場合、小規模宅地等の特例を使うことによって、その土地の面積のうち400㎡まで、その評価額を80%減額することができます。

小規模宅地等の特例を使うためには要件がいくつかあるのですが、そのうちの1つに、申告期限まで事業を継続する、というものがあります。

ただ、申告期限といえば、相続の開始から10か月ありますから、途中で事業の内容を変えたいということもあるかも知れません。

もし、申告期限までに事業の内容を変えてしまったら、小規模宅地等の特例は使えるのか、というのが今回のお話です。

小規模宅地等の特例が使えるかどうかは、相続が開始したとき、その土地で行われている事業が誰の事業であるかによります。

考えなければならないパターンは、2つに分かれます。

まず1つ目は、亡くなった人が自分の土地で事業をやっていて、その親族が土地と事業を引き継ぐパターンです。

2つ目は、亡くなった人の土地を使って、生計を同じにする親族が事業を営み、その土地を相続するパターンになります。

まず、1つ目の亡くなった人の事業を引き継ぐパターンでは、事業の内容を変えてしまうと、小規模宅地等の特例は使えません。

すなわち、相続税の申告期限までは、亡くなった人から引き継いだ事業を、そのまま継続すれば、小規模宅地等の特例は使える、ということになります。

たとえば、亡くなった人が営んでいた魚屋さんを引き継ぐ場合は、申告期限まで魚屋さんを続ける必要があります。

これに対し、2つ目のパターンは、途中で事業の内容を変更しても構いません。

たとえば父親の土地で、父親と一緒に暮らす長男が八百屋さんをやっていたところ、父親が亡くなり、その土地を長男が相続したとします。

この場合、長男が申告期限を迎える前に八百屋さんを辞めて、コインランドリーに変更したとしても、小規模宅地等の特例を使うことができます。

ただし、どちらも申告期限まで、土地の保有を継続しなくてはなりません。

途中で誰かに譲って、事業だけ継続してもダメです。

小規模宅地(等)の特例は大きな減税が見込める分、たった1つの要件の見落としで使えなくなってしまう、ということも多々あります。

これは非常に、もったいないことです。

このようなミスをしてしまわないよう、小規模宅地等の特例を使うときは、必ず一度、相続専門の税理士にご相談ください。

そして、相続のことなら、税理士法人・都心綜合会計事務所にお任せください。