
離婚で財産を分けるとき、原則として贈与税はかかりません。しかし、状況によっては「あげる側」や「もらう側」に思わぬ税金がかかることがあります。この記事では、離婚の財産分与で注意すべき税金のルールや落とし穴をわかりやすく解説します。
夫婦の財産を分ける財産分与や慰謝料には、原則として贈与税はかかりません。
これは、夫婦の財産清算や離婚後の生活保障という意味合いがあるためです。

そのため、居住用の家や土地をもらったとしても、基本的には非課税の扱いとなります。
ただし、例外として贈与税がかかってしまうケースが大きく分けて2つあります。
1つ目は、もらった財産が夫婦の事情に対して「多すぎる」と判断された場合です。
社会通念上、適正と認められる額を超えた部分についてのみ、贈与税の課税対象となります。
2つ目は、税金逃れのための「偽装離婚」とみなされた場合です。
将来の相続税や贈与税の負担を逃れる目的で意図的に離婚したと判断されると、もらった財産すべてに贈与税が課せられます。
節税のつもりがかえって重い税負担を背負うことになるため、絶対にやめましょう。

財産分与で最も注意したいのが、不動産を渡すケースです。
マイホームなどの不動産を渡す場合、もらう側ではなく「あげる側」に譲渡所得税がかかることがあります。
これは、買ったときよりも不動産の価値が上がっている場合、その利益に対してかかる税金です。

税法上は、「今の時価で不動産を売却し、そのお金で財産分与を行った」とみなされるルールになっています。
また、買った時より家の価値が下がっていても、建物の価値の目減り(減価償却)の計算上、税務署からは「利益が出ている」とみなされるケースがあるため注意が必要です。
さらに、家を買ってから約5年以内に財産分与をすると、それ以上長く持っていた場合と比べて譲渡所得税の税率が倍近く高くなることがあります。
この「5年」の判定は、単純に買った日から丸5年ではありません。
「財産分与をした年の1月1日時点」で5年を超えているかどうかで決まります。
タイミングによっては5年以上待つ必要があるケースもあるため、気をつけましょう。
自分が住んでいたマイホームを渡す場合は、利益から最高3,000万円までを差し引ける「特別控除の特例」を利用できる可能性があります。
この特例を使うためには、必ず「離婚届を提出し、正式に離婚が成立した後」に名義変更の手続きを行ってください。
離婚が成立する前に名義を変えてしまうと夫婦間の譲渡となり、この特例が使えなくなってしまいます。
また、離婚前から長期間別居しており、住まなくなった年の3年後の12月31日を過ぎている場合も、特例の対象外となることがあります。

ここで非常に重要なのが、確定申告の必要性です。
この特例を利用して計算した結果、譲渡所得税が0円になる場合でも、あげる側は必ず翌年の確定申告の時期(原則2月16日〜3月15日)に申告手続きを行わなければなりません。
申告を忘れると特例が認められませんので、十分に注意しましょう。
確定申告をしっかり行えば、所得税だけでなく翌年の住民税への影響も抑えることができるため安心です。
不動産をもらう側は、贈与税以外の税金や実務上のトラブルに注意が必要です。
まず、不動産の名義を自分に変更する際、法務局での手続きにおいて「登録免許税」がかかります。
財産分与の場合、登録免許税は「固定資産税評価額の2%」と定められています。
まとまった現金が必要になるため、あらかじめ金額の目安を計算しておきましょう。
さらに、手続きを司法書士に依頼する場合は、数万円から十数万円程度の報酬も必要になることが多いので、多めに予算を見込んでおくと安心です。
また、婚姻中の財産を清算する通常の財産分与であれば、原則として「不動産取得税」はかかりません。
しかし、慰謝料の代わりや離婚後の生活保障として不動産をもらうケースでは、不動産取得税が課せられることもあります。
さらに、不動産に住宅ローンが残っている場合は特に注意が必要です。
金融機関に無断で名義変更をすると、住宅ローンの契約違反になる恐れがあります。
実務上、銀行は単なる名義変更(債務引受)を嫌がる傾向にあります。
そのため、もらう側に十分な収入がある場合は、自分名義で新たにローンを組み直して元のローンを完済する「借り換え」の手続きをとるケースが一般的です。
ローンが残っている家を財産分与する場合は、必ず事前に金融機関へ相談してください。
なお、2026年4月1日より、住所や氏名が変わった際の変更登記が義務化されました。
離婚に伴って苗字が旧姓に戻ったり、引っ越しで住所が変わったりした場合は、変更日から2年以内に手続きをしないとペナルティの対象になる可能性があるため注意しましょう。
最後に、税金の手続きとは別に、財産分与を請求できる権利自体が「離婚成立から2年」で消滅するという法的なタイムリミット(除斥期間)があることにも留意してください。
税金の計算や名義変更以前に、財産を分ける話し合いは速やかに進めることをおすすめします。