死因贈与も「財産をあげる側・もらう側」両方の同意が必要
死因贈与とは「贈与者の死亡によって効力が生ずる贈与」を言います。
贈与は財産をあげる側、もらう側の両方の同意が必要です。
死因贈与も同じです。
ただ、財産をあげる・もらうタイミングが「贈与者が死んだら、という条件」で契約が決められる贈与です。
- 私が死んだら●●をあげます
- はい、あなたが死んだら●●もらいます
これが死因贈与です。
なので、財産を贈与される側の同意が必要ない(贈与者の単独で出来る)遺贈とは違います。
また、死因贈与で不動産を相続させる場合、始期付贈与として、被相続人の生前に不動産の仮登記ができます。
死因贈与と遺贈の相違点と共通点
贈与者の死亡によって、効力が発揮するという点においては
- 死因贈与
- 遺贈
も似ています。
ただ、遺贈は遺言という単独行為であるのに対して、死因贈与は贈る人ともらう人双方の合意が必要となります。
では、「死因贈与は贈与税がかかるのか?」というと違います。
名前が死因贈与なのに、死因贈与(遺贈も)は贈与税ではなく相続税の対象となります。
また、死因贈与により不動産をもらった際は不動産取得税がかかります。
遺贈の場合には不動産取得税が「かかる場合」と「かからない場合」があります。
詳しくは、遺贈とは遺言で「財産を特定の人」に相続させることに記載しています。
法定相続人が相続でもらった不動産には、不動産取得税はかかりません。
死因贈与や遺贈は、贈与税ではなく相続税の対象。
では、不動産取得税がかからないかと思いきや、法定相続人でも死因贈与でもらった不動産には、不動産取得税がかかります。
日本の税制は複雑です。
なお、民法・相続税法においては、死因贈与と遺贈は同様に取り扱うとなっています。
死因贈与の注意点
死因贈与は口約束が可能です。
だけれども、口約束の死因贈与は証拠能力が乏しく、相続トラブルに発展しやすいです。
遺言書もない中、遺産分割協議中にある日突然、私は被相続人と死因贈与を口約束で交わしている。
全ての財産は私にくれると言っていた。
私も同意している。
さぁ、全ての財産は私のものだー!
こんな場合、100%相続トラブルになりますよね?
なので、必ず贈与も死因贈与も書面にて贈与契約書を作成しましょう。
そして、贈与契約書に公証役場で確定日付などをもらいましょう。
死因贈与のメリットを動画で解説
死因贈与について、税理士法人・都心綜合会計事務所の税理士・田中順子が解説しています。
字幕が付いておりますので、音を出さなくてもご視聴できます。
動画内容
今回は死因贈与という、ちょっと変わった贈与についてお話を致します。
死因贈与とは、亡くなることを条件に贈与を行うことです。
たとえば「私が死んだら、この土地をあなたにあげます」という約束を生前にすることが死因贈与になります。
亡くなったら財産をあげる、という内容ですから、遺言ととてもよく似ています。
しかし死因贈与と遺言で本質的に異なるのが、遺言は亡くなった方が一方的に財産の相続人を決められるということに対し、死因贈与はお互いに内容を承諾していることです。
つまり死因贈与はお互いの承諾があって、初めて成立する契約だということです。
そのため死因贈与を行いたい人は、贈与したい相手に対して「私が死んだら、この土地をあなたにあげます」と意思表示をしておく必要があり、死因贈与を受ける人はそのことを承諾しておく必要があります。
続いて死因贈与を行うことで発生する、税金の話をします。
死因贈与では贈与する人が亡くなったことによって、財産が移転します。
このことから死因贈与で受け取った財産にかかる税金は、贈与税ではなく相続税です。
つまり死因贈与は相続税対策にはなりません。
しかも死因贈与で不動産を受け取った場合、発生する税金には相続で受け取った不動産よりも不利な取扱いがあります。
まずは不動産取得税です。
相続で不動産を受け取った場合、この不動産取得税はかかりませんが、死因贈与だと必ずかかります。
また登記を行う時にかかる登録免許税も、相続で不動産を受け取った時よりも死因贈与の方が高くなります。
ここまで聞くと死因贈与を行うことに、メリットを感じられないかも知れません。
死因贈与と同じ効果は遺言でも実現することができますから、わざわざ死因贈与をする必要はないと感じるかもしれません。
しかしながら死因贈与をした場合、贈与する方が亡くなる前にその不動産の仮登記をすることもできます。
仮登記を行えば、その不動産に対する権利の順位を保全することが可能です。
また、遺言にすると、どうしても遺言書の作成が必要になります。
遺言書は作成の仕方によって有効となるための条件が異なり、さらに作成方法によってはコストもかかるため準備が大変です。
もちろん死因贈与の場合にも、贈与契約書という書類を作成することをおすすめしていますが、この書類は遺言書に比べたら、はるかに作成しやすい書類になります。
最後になりましたが死因贈与で大切なのは、贈与契約書を早めに作成することです。
死因贈与の契約は口約束でも有効なのですが、口約束しかない状態で、そのことを相続の時に主張すれば争いになる可能性があります。
もし今、死因贈与の約束を交わしている方がいらっしゃる場合は、その内容を早めに書面化しておくことをおすすめします。