みなし贈与とは
贈与しているつもりがなくても「贈与税の対象になるという行為」があります。
これは贈与という形態をとっていなくても、実質的には贈与と同じで、贈与された側に経済的な利益が発生してるでしょ?ということです。
いわゆる【みなし贈与】というものです。
そして、「みなし贈与」に該当するものとして、特に注意していただきたいケースは以下の6つです。
- 債務免除
- 低額譲渡
- 生命保険金
- 住居購入資金
- 親族間の金銭貸借
- そして対価なしの名義変更
上記以外にも、信託の受益権や定期金なども「みなし贈与」に該当する場合があります。
このように「みなし贈与」には様々なものがあります。
相続税対策として生前中に資産を移したい。
そう考える方は少なくありません。
くれぐれも「みなし贈与」に該当しないように注意しましょう。
債務免除
債務者が債務を免除してもらったり、他人に債務の肩代わりしてもらった場合などです。

債務者が債務を免除してもらったり、他人に債務の肩代わりしてもらった場合は、みなし贈与の対象
債務の免除などがあった場合には、免除になる債務金額や肩代わりしてもらった債務金額が、債務免除した人や債務の肩代わりし人から、贈与されたものとして、贈与税の対象となります。
ただし、債務を返済する資力が無いことが明らかな場合には、返済不能な金額については贈与税の対象とはなりません。
低額譲渡
時価よりも低額での資産の譲り渡しを受けた場合、時価との差額分の金額は、贈与税の対象となります。
詳しくは、子供に破格の金額で土地等の財産を売却したら贈与税はかかる?に低額譲渡の注意点などを記載しています。
生命保険金
詳しくは相続対策として生命保険を活用する際の注意点にも記載していますが、保険料受取人が子供・保険料負担者が妻・被保険者が夫などの場合で、夫が亡くなり子供が死亡保険金を受取った場合には、その死亡保険金は贈与税の対象となります。
住居購入資金
親が子供の住宅等の資金を負担することはよくあります。
ただ、親が資金を負担しているのに、所有権の登記が子供になっている場合などには、その購入資金は贈与税の対象となってきます。

親が子供の住宅等の資金を負担することはよくあります。でも、みなし贈与の対象になる可能性があります。
また注意点として、共働きの夫婦が住宅等を購入した場合で、住宅購入のための借入金と住宅の名義が全て夫であるとしても、実際は妻も働いて借入金を共同で返済している場合には、妻が負担している金額については、夫に対する贈与として贈与税の対象となります。
また、どちらがいくら返済しているか不明な場合は、以下のような計算方法で贈与金額を計算します。
具体例
- 金融機関からの借入金:5,000万円
- 令和6年度の返済額:500万円
- 令和6年の夫の所得:630万円
- 令和6年の夫の所得:270万円
500万円(返済額) × 270万円/(630万円 + 270万円) = 150万円
妻からの贈与は150万円となります。
親族間の金銭貸借
親子間でも金銭の貸与が無利息の場合は、無利息部分は贈与したとみなされます。

たとえ親子間のお金のやりとりであっても、みなし贈与の対象になる可能性があります。
また金銭貸与に限らず、無償または無利子で土地・家屋などの貸与があった場合にも、その地代や家賃に相当する金額の経済的利益を贈与した(贈与を受けた)として、贈与税の対象となります。
ただし金額が少額であり、課税上問題がないと認められる場合には、贈与税は課税されません。
たとえ親子間でも、金銭貸与が贈与税の対象とならないように、以下のようなことをしておきましょう。
- 利息(金利)を定める
- 金銭消費貸借契約書の作成
- 銀行振込などで、返済している事実の証拠を残す
利息については、あまりにも世間一般からかけ離れて低い利息を設定した場合には、通常の利息との差額に相当する金額が、贈与税の対象になる可能性があります。
対価なしの名義変更
代金の支払いなしで、不動産や株式などの名義を自身に変更してもらった場合などには、贈与税の対象となります。
基本的に資金負担のない人の名義がある場合には、資金を負担した人から、資金負担をしていない名義人への贈与となります。
ただし、以下の場合には、この限りではありません。
- 名義人になっていることを知らなかった
- 名義人になっていても、資産の使用や運用などをしていない
- やむを得ない理由で名義になっている
動画で解説
みなし贈与!注意すべき6つのケースについて、税理士法人・都心綜合会計事務所の税理士・田中順子が解説しています。
字幕が付いておりますので、音を出さなくてもご視聴出来ます。
動画内容
今回は贈与したつもりがないのに、贈与税の対象とみなされる「みなし贈与」についてお話を致します。
みなし贈与に該当するものとして、特に注意が必要なのは、
- 債務免除
- 低額譲渡
- 生命保険金
- 住居購入資金
- 親族間の金銭貸借
- そして、対価なしの名義変更
の6つです。
1つずつご紹介を致します。
まずは債務免除からです。
債務免除とは借金や未払いの代金などを返済しなくていい状態にしてあげることです。
借金をチャラにしてあげるケースなどが考えられます。
財産をあげるわけではないのですが、お金を贈与したことと同じであるため贈与税の対象となります。
2つ目は低額譲渡です。
これは通常よりも低い価額で財産を譲ることです。
一応、代金は支払われていますが、その財産の時価と譲った金額との差額に対して贈与税がかかります。
3つ目は生命保険金です。
生命保険金を受け取った時は、その保険料の払い込みを誰が行っていたかによって発生する税金が異なります。
贈与税が発生するケースとはたとえば、お父さんの死亡保険について保険料の払い込みをおこなっているのがお母さん・受取人がお子さんというようなケースです。
このケースでお子さんが生命保険金を受け取った場合、その生命保険金は保険料を払ってきたお母さんからの贈与とみなされます。
4つ目は住宅購入資金です。
親が子どもに住宅購入費をプレゼントすることは、よくあることだと思います。
しかしながら親が購入費を負担しているのに、その住宅の所有者がお子さんの名前で登記されている場合などは、親が負担した費用に贈与税がかかります。
住宅購入資金の場合、非課税で贈与できる特例もありますが、この特例を使うための要件を満たしていない場合のほか、必要な手続きをしていない場合も贈与税の対象となってしまいます。
5つ目は親族間の金銭貸借です。
たとえ親子の間でも多額のお金を無利息や契約書なしで、貸し借りを行えば贈与税の対象になる可能性があります。
また、お金だけでなくたとえば、土地や建物を無償で貸し借りした場合も家賃相当額の贈与があったものとみなされます。
最後は対価なしの名義変更です。
タダで不動産や株式などの名義を自分に変更してもらった場合も贈与税の対象となります。
みなし贈与に該当するものとして、特に注意していただきたい6つのケースをご紹介しました。
どれも日常生活でありそうなものばかりだったと思います。
「もしかしてこれも贈与税の対象になるかも知れない」と心配になられた方もいらっしゃるのではないでしょうか?
中でも特に多いのは親族間のお金の貸し借りだと思います。

これについては贈与税の対象とならないよう工夫することが可能です。
たとえば親子間でも利息を払ってもらうことや、金銭消費貸借の契約書を作成すること、そして銀行振込などで返済している事実の証拠を残すことなどがポイントとなります。
他の例でも条件を満たせば非課税で贈与できるケースがあります。
黙って贈与したばかりに非課税にできなくなったのではもったいない話です。
贈与を計画中の方は専門家に相談しましょう。
そして生前贈与や相続税対策、相続手続や相続税の申告のことなら、税理士法人・都心綜合会計事務所にお任せください。