純粋に「借金返済のためだけ」に受けた贈与は全額非課税
借金の肩代わりのための贈与について、解説しています。
借金返済のための贈与税の有無
事業に失敗した子供が、多額の借金を背負うことに。
親としては子供の借金返済のために、なんとか協力したい。
もしくは親しい身内や知り合いが、借金で困っている。
このように何かしらの理由で子供や身内、親しい人に借金があり、その「借金を肩代わりして助けてあげたい」と思う方もいらっしゃると思います。
ただし、たとえ身内であろうと「年間110万円以上の贈与には贈与税」がかかってきます。
ただ、財産が1円もなく、本当に借金しかなかったら・・
実はこのように借金した当人に財産がまったくない場合には、【借金の肩代わりのための贈与は全額非課税】になります。
借金した当人に財産がまったくなく、借金が1億円ある。
この場合、借金返済のための1億円の贈与は「全額非課税」となります。
借金はあるが財産も若干ある場合
先ほどの例で、実は借金した当人に1,000万円の財産がある状態で、1億円の借金がある場合には、1億円を借金返済のために贈与された場合には、1,000万円は贈与税の対象となります。
あくまでも、借金1億円のうち、1,000万円は「当人の財産で返済できる」と考えられるので、実質の借金は9,000万円と考えます。
9,000万の借金に対して1億円の贈与を受けたら、差額の1,000万円は「本当は贈与でしょ!」ということです。
ちなみに財産には、
- 株
- 車
- 不動産
なども含まれます。
これらの財産を処分した上で、本当に無一文のような状態になった上での、残りの借金返済のための贈与は非課税になります。
なので、現金はないが家や車もあり、それらを処分しないで借金返済のための贈与を受けた場合、その贈与は全額非課税とはなりませんので注意が必要です。
さらに言えば、もしも借金をした当人に、借金を全額返済できる財産(現金・不動産・車など)がある場合には、借金返済のために贈与を受けたとしても、その贈与は通常の贈与となり、全額贈与税の対象になってきます。
借金返済のための贈与を受けた場合の「贈与税の有無」をまとまめすと、
- 財産がなく借金だけの場合は全額非課税
- 若干の財産がある場合は、(贈与金額-若干の財産)が贈与税の対象
- 借金を完済できる財産がある場合は全額贈与税の対象
となります。
贈与ではなく金銭消費貸借契約という方法
贈与ではなく「金銭消費貸借契約を結ぶ」という方法もあります。
仮に親子の間でも金銭消費貸借契約を結べます。
この方法であれば、贈与ではなく貸したということになりますので、贈与税の対象にはなりません。
注意点としては、必ず親子の間であろうとも、金銭消費貸借契約書を作成しましょう。
そして、
- 日付
- 金額
- 利息
- 返済方法
を明記し、金銭消費貸借契約書には借入金額に応じた印紙も必要です。
このように、金銭消費貸借契約書をしっかり作成し、貸した本人にきっちり返済していけば、贈与税は一切関係ありません。
ただし、途中で借金返済をしなくなり、残額の借金を帳消しにした場合は、その残額分は贈与税の対象となります。
また、返済途中で相続になった場合は、残りの借金部分は相続財産に加えられ、相続税の計算の対象になります。
贈与税を負担せずに借金の肩代わりができるケースを動画で解説
贈与税を負担せずに借金の肩代わりができるケースについて、税理士法人・都心綜合会計事務所の税理士・田中順子が解説しています。
字幕が付いておりますので、音を出さなくてもご視聴出来ます。
動画内容
身内や親しい人が借金で困っている場合、金銭的に余裕がある方は、何とかその状況を助けてあげたい、と思われることもあるかと思います。
しかしながら、たとえ身内であっても、年間110万円以上の贈与を受けた人には、贈与税を支払う義務があります。
たとえば、1年間に1,000万円の贈与を受けた人は、もらったお金に、撮影している時点では、兄弟間や夫婦間の贈与では、231万円の贈与税がかかり、祖父母から孫や、親から子への贈与などであれば、177万円の贈与税がかかります。
贈与税は、贈与を受けた人が負担しますので、借金の返済にあてられる金額が、大きく減ってしまいます。
もし、助けてあげたいと思った方が、借金の肩代わりをして、直接、債権者に支払ったとしても、同じことです。
すごくもったいないことです。
今回は、このような場合でも、相手が贈与税を負担せずに、借金の肩代わりができるケースをご紹介いたします。
まず、借金で困っている方の財産次第では、肩代わりしても、贈与税がかからない場合があります。
それは、借金で困っている方に、財産がまったくない場合、つまり、無一文の状態のことです。
無一文の方が、借金を返済するためだけに受けた贈与は、全額非課税となります。
続いて、借金もあるけれど財産もある、という場合です。
財産には現金だけでなく、株や不動産、車なども含まれますので、一般的には、このケースが多いかと思います。
もし、財産が1,000万円で、借金が1億円ある方に対し、1億円の借金を肩代わりして支払った場合、贈与税は非課税とはなりません。
1,000万円に対してのみ、贈与税が発生します。
この理由は、あくまでも借金1億円のうち1,000万円は、借金をした本人の財産で返済できる、ということにあります。
つまり、実質の借金は1億円から、1,000万円を差し引いた9,000万円ですので、1億円肩代わりすると、1,000万円だけ贈与税の対象になる、というわけです。
借金をしていた人からみると、借金がなくなる代わりに、手持ちの財産から、贈与税を支払う結果となります。
もちろん、借金がなくなったのですから、文句を言われる状況は考えられませんが、税制では、一応このようになっている、ということを知っておきましょう。
それでは、財産がある人の借金を肩代わりすれば、必ず贈与税が発生するのか?というと、そうではありません。
「金銭消費貸借契約を結ぶ」という方法があります。
この契約を活用すれば、贈与税は発生しません。
金銭消費貸借契約とは、簡単にいうと、金銭の借用書のことです。
相手が身内でも他人でも、必ず作成をしてください。
契約書には、日付、金額、利息、返済方法を記載する必要があり、専門家に作成の相談をすることをおすすめします。
また、金額に応じた収入印紙も貼らなければなりません。
収入印紙を貼らなくても、書類の効力に影響はないのですが、印紙税を納めていないことになってしまうため、後に過怠税というペナルティが課されることがあります。
今回は、借金の肩代わりを何も対策せずに行えば、多くの場合は贈与税がかかる、ということを知っていただければ幸いです。
借金の肩代わりは、実行する前に、まず専門家に相談をしてください。
そして、贈与や相続でお悩みなら、税理士法人・都心綜合会計事務所にお任せください。