がん保険の「入院給付金を誰にするか」で相続の取り扱いが変わる

相続税対策を考えると、がん保険の入院給付金の受取人は「配偶者や相続人」の方がいいと言えます。

がん保険に係る入院給付金は相続財産ではない

故人(被相続人)が、がん保険(被保険者、保険料負担者とも被相続人)に加入していて、亡くなりました。

被相続人の死亡後に、がん保険に係る入院給付金として、保険会社から受取人である配偶者に1,000万円支払われました。

この場合、この1,000万円は相続財産になるのか?

結論から言いますと、相続財産にはなりません。

なので、相続税の課税対象にはなりません。

これは相続税のみなし財産となる死亡保険金は、被相続人の死亡に伴って支払われる、いわゆる【死亡保険金】に限られています。

死亡保険金
死亡保険金
相続税のみなし財産となる死亡保険金は、被相続人の死亡に伴って支払われる、死亡保険金に限られます。

なので、被相続人の

  • 障害
  • 疾病
  • その他これらに類するもの

で死亡を伴わない、保険事故として支払われる保険金、又は給付金は相続財産になりません。

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事故の損害賠償金や会社の団体保険は内容によっては相続財産

ただし、入院給付金の受取人が、被相続人の場合には話が違ってきます。

受取人が被相続人の場合で、この入院給付金を被相続人の死亡後に、相続人等に給付された場合には、入院給付金の請求権を「被相続人から相続又は遺贈により取得」したものとされます。

なので、この場合は相続財産となり、結果、相続税の課税対象となります。

さらに注意点としては、課税対象となる入院給付金には、死亡保険金の非課税(法定相続人 × 500万円の非課税枠)の適用がありません。

相続税対策として、がん保険を検討される場合には、受取人は配偶者や相続人の方にしましょう。

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生命保険の受取人以外の相続人が保険金を受取ると贈与税が発生?

がん保険による生存給付金は贈与財産ではない

がん保険(被保険者、保険料負担者とも被相続人)に加入していた被相続人が、生存中に癌になり、配偶者に生存給付金が給付された。

この場合、配偶者に贈与税はかかるのか?

生存給付金
生存給付金
被相続人が生存中に癌になり、配偶者に生存給付金が給付された場合には、贈与税がかかる?

結論から言いますと、贈与税はかかりません。

保険金が傷害、疾病その他これらに類する保険事故で、死亡を伴わない場合、その給付は贈与とみなされません。

また、損害保険契約に基づく保険金、及び生命保険契約に基づく給付金で、身体の障害に基因して給付されるもので、

  • 障害を受けた者の配偶者
  • 直系血族
  • 生計を一にするその他の親族

が受取人である場合には、その保険金(給付金)は非課税となります。

よって、所得税の課税対象にもなりません。

また、給付を受けた後に、被相続人が亡くなったとしても、その保険金は被相続人の相続財産とはなりません。

日本人の2人に1人が癌にかかり、3人1人が癌で亡くなるとも言われています。

がん保険
がん保険
日本人の2人に1人が癌にかかるともいわれる時代

そう考えると、相続税対策として、がん保険を検討してみるのもいいかもしれません。

がん保険と相続の関係を動画で解説

がん保険と相続の関係について、税理士法人・都心綜合会計事務所の税理士・田中順子が解説しています。

字幕が付いておりますので、音を出さなくてもご視聴出来ます。

がん保険の入院給付金を誰にするかで相続税が変わる?

動画内容

今回は、保険の入院給付金が相続税の対象になってしまう、というお話をします。

入院給付金とは、医療保険やがん保険によって、入院した日数に応じて、支払われる給付金のことをいいます。

病気や怪我で支払われる保険金は、受け取る時に税金がかからないことがほとんどです。

しかしながら、亡くなった後に入院給付金を受け取る場合、次のようなケースについて注意が必要です。

がん保険に加入している夫が、亡くなるまで入院されていて、亡くなった後に、入院給付金を受け取ることになったとします。

この入院給付金は、もともと夫に支払われる契約になっていました。

しかし、夫が亡くなったため、保険会社は亡くなった人の妻に、入院給付金を支払ったとします。

このケースの場合、妻が受け取る入院給付金は、相続財産の対象となってしまいます。

理由は、入院給付金は、本来、亡くなる前に夫が受け取るはずのお金だったからです。

亡くなる前に退院し、夫が請求することで、夫に支払われていれば、夫の財産となるはずでした。

ところが、その夫が亡くなったことによって、妻に夫の入院給付金を、保険会社に請求する権利が、相続されたと考えられるからです。

ちなみに、入院給付金とともに、死亡保険金も支払われることがありますが、死亡保険の金額は、一定の金額まで非課税で受け取ることができます。

非課税になる金額は、500万円×法定相続人の数で計算されます。

ところが、入院給付金は死亡保険金と違って、非課税で受け取れる金額というものはありません。

妻が受け取った入院給付金は、他の財産と合算されて、遺産分割協議の対象となります。

入院給付金を、相続税の対象としないためには、入院給付金の受取人を配偶者などにしておくことが有効です。

もしさきほどのケースで、夫の入院給付金の受取人をもともと妻にしていた場合は、夫が亡くなったあとに受け取ったとしても、相続税の対象にはなりません。

その入院給付金は、もともと妻に請求権のあるものだからです。

日本人の2人に1人が癌にかかるともいわれる時代です。

がん保険に加入する場合は、入院給付金の受取人を誰にするのか十分に注意してください。