特別夫婦年金保険は「相続の取り扱い」が少しややこしい

特別夫婦年金保険と相続の関係について、解説しています。

特別夫婦年金保険とは

㈱かんぽ生命保険が販売している特別夫婦年金保険制度とは、配偶者の死亡後に年金支給が開始される保険制度です。

年金の支給期間は、契約で定めた保証期間となります。
(年金支払開始年齢に達する前に配偶者が死亡した場合には、年金支払開始年齢に達した日から支給されます。)

特別夫婦年金保険
特別夫婦年金保険
㈱かんぽ生命保険が販売している特別夫婦年金保険制度とは、配偶者の死亡後に年金の支給が開始

夫婦のうちいずれか一方が保険契約者(主たる被保険者)、もう一方が「配偶者たる被保険者」となります。

特別夫婦年金保険の大きな特徴は夫婦のうちいずれか一方が死亡したら、残されたもう一方に年金が支払われます。

例えば保険契約者(主たる被保険者)を夫、配偶者たる被保険者を妻として契約。

この契約で妻が先に亡くなっても、夫に年金が支給されます。

このように特別夫婦年金保険は特徴的な保険制度です。

特徴的な保険制度のために、相続の取り扱いが少しややこしくなります。

以下、保険契約者(主たる被保険者)及び保険料負担者を夫、配偶者たる被保険者を妻とした場合の課税関係を説明します。

相続税の課税対象となるケース

ケース1
夫が先に死亡し、既に妻が年金を受給している場合

この状態で妻が亡くなった場合、妻の相続人に継続して年金が支払われます。

この場合は相続税の課税対象となります。

ケース2
年金支払開始年齢に達する前に夫が死亡した場合

妻は夫から保険契約者の地位を承継します。

これは甲から生命保険契約に関する権利を相続したことになり、相続税の課税対象となります。

保険の契約自体も相続財産になるからです。
(詳しくは生命保険契約の権利も相続財産に記載)

ケース3
年金支払開始年齢に達した後に夫が死亡した場合

妻は夫から生命保険金を相続により取得したものとして、相続税の課税対象となります。

相続税の課税対象とならないケース

ケース4
妻が夫より先に死亡した場合

本人(保険契約者である夫)が受取人となる場合には、相続税の課税対象にはなりません。

ケース5
ケース4の状態で、夫が年金を受給中に死亡した場合

保証期間付定期金に関する権利を夫の相続人が相続により取得したものとみなされて、相続税の課税対象となります。

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特別夫婦年金保険のケース別の相続税の扱いについて、税理士法人・都心綜合会計事務所の税理士・田中順子が解説しています。

字幕が付いておりますので、音を出さなくてもご視聴出来ます。

特別夫婦年金保険の相続

動画内容

そもそも特別夫婦年金保険とはどういう保険なのか、ポイントを押さえて参りましょう。

特別夫婦年金保険とは、かんぽ生命保険が販売している商品です。

通常の生命保険は、特定の人物が亡くなったときに保険金が支払われます。

これに対して特別夫婦年金保険は、夫と妻のどちらかが亡くなると、遺されたほうに保険金が年金で支払われます。

ただし、この年金では、年金の支払いを始めることができる年齢というものも決められていて、その前に配偶者が亡くなったときは、開始年齢に達した日から支給されます。

では、この保険金を受け取ったときや、受け取っている最中にある人が亡くなったとき、あるいは年金の支払いが始まる年齢の前に亡くなったとき、相続税はどうなるのでしょうか。

通常の生命保険であれば、保険料を負担している人が亡くなると、受取人に相続税がかかります。

しかし、特別夫婦年金保険は、通常の生命保険とは異なる特徴がいくつもありますので、相続税の取り扱いが少しややこしくなります。

ここからは具体的に5つのケースに分けて、相続税の取り扱いを解説します。

わかりやすいように、保険契約者は夫で、保険料の負担者も夫という例で解説します。

まず、1つ目のケースは、年金が支払われる年齢に達した夫が死亡した場合です。

この場合、遺された妻に保険金が支払われます。

妻に支払われるこの保険金は、夫が保険料を負担したことによるものです。

よって妻は夫から相続によって、保険金を取得したものとみなされ、妻に相続税がかかります。

2つ目は、夫が先に死亡して妻が年金を受給している最中に、妻が亡くなったケースです。

この場合、妻の相続人に引き続き年金が支払われます。

妻の相続人には、保証期間付きの定期金を受け取る権利の相続があったものとして相続税がかかります。

3つ目は、年金が支払われる年齢に達する前に夫が死亡したケースです。

このとき、妻は夫から保険の契約者としての地位を相続します。

金銭を受け取っているわけではないため、何の税金もかからないように思えますが、実際のところ、妻は夫がこれまで負担した保険料に基づく保険契約者としての権利を取得しています。

よって妻は、その保険の解約返戻金相当額の財産を相続したものとみなされて、相続税を負担することになります。

4つ目のケースは、夫より先に妻が死亡した場合です。

夫には保険金が支払われますが、この保険金に相続税はかかりません。

5つ目は4つ目のケースで、夫が年金を受給中に死亡した場合です。

この場合は、夫の相続人に保証期間付きの定期金を受け取る権利の相続があったものとみなされます。

よって、夫の相続人に相続税がかかります。