空室リスクの高い負動産での相続税対策は危険
節税のために不動産を購入する。確かに相続税の節税には有効です。
ざっくり言って、現預金のままであれば100と評価されるものが、貸家などにすれば半分位の評価額になるからです。
ただ、この不動産投資。以下のようなデメリットがあります。
- 解体費用がかかる
- 管理維持費用がかかる
- 空室リスクが常につきまとう
- 大体15年前後で大規模な修繕が発生する
- 事業の採算性が合わなくなる可能性がある
- 借金をした場合、通常30年ほどの返済が発生する
- 借金をした場合、利息の支払いをしなくてはいけない
さらに、建物や土地の貸家としての相続税評価の減額は、空室の箇所は出来ません。
少子高齢化が叫ばれている中で、不動産が負動産になるともいわれる時代。

少子高齢化の時代。不動産が負動産になるともいわれる時代。
節税目的で始めた不動産投資が、採算が合わなくなり借金苦に・・。
確かに相続税は0円になった。でも、その代わりに借金と空室だらけの採算の合わない負動産が残った。
もしくは、相続税は確かに減った。でも、借金の返済と修繕などの管理費で納税資金の確保が出来ない。
そして、納税資金確保のために不動産を売却したくても買い手が見つからない。(一般的に賃借人の居住する物件は買い手が見つからないことが多いです。)
また、買い手が見つかったとしても、恐ろしく安い値段で・・。
不動産投資で節税を図ろうとした場合、これらのようなリスクがあります。
そして、空室リスクは年々高まっています。

空室リスクは年々上昇中
空室発生 → 事業の採算が合わない → 売りたいけど売れない → 解体したいけど解体費用も払えない → 借金と負動産が残ることに
いくら節税になるからといって、事業の採算が合わない不動産投資はするべきではありません。
不動産での相続税対策は、空室や解体費用まで、全てをシミュレーションする必要があります。

空室や解体費用までシミュレーションする
ここまで見ると、不動産での相続税対策は危険だらけで、やらないほうがいいと思われた方もいらっしゃるかと思いますが、節税効果があるのは間違いありません。
そして、100%成功する保証はありませんが、不動産での相続税対策を失敗しないためのコツはあります。
不動産での相続税対策のコツは採算と安定性を重視する
不動産での相続税対策の問題の元凶は、採算が合わなくなることです。
仮に採算が合うのであれば節税破産の心配はありません。

不動産事業の採算が合うのであれば、節税破産の心配はありません。
そうなると、長期的に安定して採算が合えばいいわけです。それには以下のような内容で、企業(法人)と長期賃貸契約を結ぶことです。
- 長期の家賃設定
- 中途解約特約の設定
- 借入期間と同じ賃貸契約期間の設定
1.長期の家賃設定
まずは、長期の家賃設定をすることにより、景気の影響を押さえます。ここでのポイントは家賃の値上がりを一切考えないことです。
長期の家賃設定をすると、好景気の時に家賃の値上げ交渉が出来ないので、不利ではないか?と思うかもしれません。
しかし、相続税の節税対策としての不動産投資です。儲かることよりも、採算が長期に安定するほうが重要です。

節税目的の不動産投資の場合は、儲かることよりも採算の安定を重視
賃料が長期間固定であるならば、初めの設計さえ間違えていなければ採算は合います。
また、企業(法人)との契約です。仮に景気が上向いたところで、企業(法人)が家賃の値上げをそうたやすく受け入れてはくれません。
逆に長期契約でない場合、家賃の値下げ交渉は頻繁に発生する可能性があります。
節税目的の不動産投資です。主目的が儲かることではありません。この意識が大事です。
2.中途解約特約の設定
これは契約期間中に企業(法人)が解約する場合、違約金を頂くというものです。
そして、最も有効的な方法は、銀行ではなく企業から建築費を借金し、その資金で建物を建設し、その企業に貸すという方法です。
もしも企業が途中で解約した場合、残りの借金を放棄するという契約にします。

企業が途中で解約した場合は、残りの借金を放棄
もしくは、中途解約時に残債相当の違約金をもらう。残存期間の賃料をもうら。といった方法もあります。
3.借入期間と同じ賃貸契約期間の設定
根幹をなす契約です。借金の返済が終わるまで、契約更新がないようにしましょう。
2のような中途解約特約の設定は、してもらえない可能が高いかもしれません。
しかし、借入期間と同じ賃貸契約期間の設定は、出来る限り盛り込みましょう。
法人相手の場合、出て行かれると100%空室になる可能性があります。

法人相手の場合、出て行かれると100%空室になることも
そして、この期間に家賃の値下げ交渉があり、家賃が低くなるという想定でシミュレーションもしておきましょう。
この家賃が低くなるタイミングを減らすためにも、1の長期の家賃設定は必要となってきます。
リファイニング建築の活用
リファイニング建築とは、リフォームでありながらも、建築許可を取り直し、法的には新築と同じにできるというものです。
通常の建替えやリフォームに比較して、以下のようなメリットがあります。
- 新築の耐用年数で借入が可能
- 工事期間が短いことなどによる空室リスクの軽減
- 建替えや新築と比べて、建築費が安い(元からあるものを活かすので)
注意点としては、法的には新築と同じですが、築年数は累積になりますので、入居者募集の時には築年数が長くなります。
もしも、建替えやリフォームをお考えの場合には、リファイニング建築を検討されるのもいいかもしれません。
駐車場を利用する場合の注意点
賃貸マンションなどに、駐車場を設置する場合には注意が必要です。
その賃貸マンションの居住者だけが利用する駐車場は、貸家建付地とみなされ(18%~21%)評価減出来ます。(貸家建付地の評価減についての詳しい内容は、貸家建付地の相続税評価に記載しています。)
ただ、居住者以外の外部の人間に駐車場の利用を認めると、仮に一人(一台)の外部利用だけだとしても、駐車場全体が更地として評価されます。
マンションの住人以外に貸し出したことにより、駐車場の土地がマンションの土地の一部として評価されるのではなく、独立して評価されます。
なので、マンションの土地は貸家建付地で評価されますが、駐車場は貸家建付地ではなくなり、評価減出来なくなります。
ちなみに相続税対策にデメリットが発生するだけでなく、固定資産税にもデメリットが発生します。
駐車場が住宅用地の場合、固定資産税は通常の1/6になります。
ただ、外部に貸し出すと住宅用地から外れ、本来の固定資産税の価格になります。

駐車場を外部に貸し出すと住宅用地になり、相続税対策や固定資産税にデメリットが発生
駐車場の収益悪化から、外部への貸し出しを検討される場合は、上記のことも考慮しましょう。
建物の建設は借入金ですべきか?
節税対策でアパート等を建てる場合に、
- 手持ち資金で建てるか?
- 借入れをして建てるか?
と悩まれる方は少なくありません。
えっ、手持ち資金があるのに、なんでわざわざ借入をする必要があるの?
と思われるかもしれません。
借入をすると、利息を払わなくてはいけません。
その分もったいないのでは・・
確かに利息の支払いなどを考えると、手持ち資金でしたほうがいいように感じます。
ただ、たとえ手持ち資金で全て賄えるとしても、借金をしたほうがいい場合もあります。
それは、相続税の納税資金に関係してきます。
もしも、手持ち資金でアパートを建設し、すぐに相続が発生したら・・
その時に納税資金が足りなかったら・・
いっそ土地を売却して納税資金に・・
いや、でも今まさに建物を建設中・・
いつ相続が発生するのかは誰にもわかりません。
結局、建物の建設では借入はしなくても、相続税の納税のために借入をする事態になるかもしれません。
手持ち資金で全てを賄うのかどうかは、相続税の納税資金や予期せぬ事態も考慮して決めましょう。
ある程度の手持ち資金は、残しておくことが賢明です。
賃貸用不動産の相続は遺族が喜ぶとは限らない
賃貸用不動産を活用した相続税対策の注意点やコツについて、都心綜合会計事務所の税理士・内田昌行が解説しています。
動画内容
相続税対策の一つに、不動産の購入というものがあります。
なぜ不動産の購入が相続税対策になるか、と申しますと、不動産の「相続税評価額」が市場の取引価格よりも安くなるケースが多いからです。
もし現金100万円を相続すれば相続税評価額も100万円ですが、もしそのお金で100万円の不動産を購入した場合、その相続税評価額は7割から8割ほどに下がることが多いです。
相続税評価額が低ければ、負担する相続税も下がります。
そして不動産の相続税評価額は他人に貸すことで、さらに安くなります。
したがって相続税対策に最も効果的なのは、賃貸用の不動産を購入することです。
うまくいけば、取引価格の半分ほどの価額で相続することも出来ます。
それなら現金をもっておくより、どんどん賃貸用不動産を買っておけばお得だと思われるかもしれません。
しかし、実態はそうとも言い切れません。
確かに賃貸用の不動産は、現金よりも相続税を安くする効果があります。
しかし、賃貸用の不動産を保有することによって、新たな費用も発生します。
固定資産税や都市計画税といった税金のほか、その不動産を管理するために必要な様々なコストです。
しかも、建物は時とともに老朽化します。
老朽化すれば修繕のための費用も上がりますし、建物自体の価値も、年数とともに少しずつ下がってきます。
そこで、不動産から得られる家賃収入が重要になってきます。
もともと不動産購入には節税メリットがあるため、家賃収入から得られる利益を追求しすぎる必要はありません。
しかし、少なくとも不動産の価値を維持するためのコストを補える家賃収入は必要です。
コストばかりがかさむ不動産を相続しても、遺族は喜びません。

コストばかりがかさむ賃貸不動産の相続は、遺族が喜ばない。
もし節税メリットを管理コストが上回ってしまったら、その相続税対策はやらない方がよかったということになります。
採算のとれる相続税対策にするためには、長く借りてくれる相手に、採算のとれる家賃で貸し出すことにあります。
長く借りてくれる相手といえば法人です。
たとえば事務所として貸し出せるビルなどを購入すれば、法人と長期の賃貸契約を結びやすくなります。
さらに、中途解約をした場合の違約金まで取り付けられれば、空き室リスクはかなり軽減できます。
最後に不動産で相続税対策をする上での注意点をお伝えします。
それは、手持ちの資金を全て不動産に充ててしまわないことです。
もし手持ち資金をすべて建築費用に充て、工事が終わらないうちに相続が発生してしまった場合、ご遺族は相続税を納めるための資金を、自分たちで工面しなければなりません。
どのような相続税対策でも遺族が納税することを考えて、ある程度、現金を残しておくことが大切です。

遺族が納税することを考えて、ある程度の現金を残しておくことは大切
相続税対策に不動産購入を検討してみたい方は、相続の専門家にご相談ください。
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