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「節税」が「損失」に変わるリスク

現金を不動産に換えることで相続税評価額を下げる手法は、今も昔も有効な対策です。

しかし、2024年(令和6年)1月から施行された新ルールにより、マンションの評価額は「時価の最低6割」まで引き上げられることになりました。

これにより、かつてのタワーマンション節税のような極端な圧縮効果は影を潜めています。

また、不動産を持つこと自体に付随するコストも忘れてはいけません。

  1. 将来必ず発生する建物の解体費用。
  2. 月々の管理費や修繕積立金の負担。
  3. 少子高齢化に伴う深刻な空室リスク。
  4. 10〜15年周期で訪れる大規模修繕工事。
  5. 物価高騰による修繕コストの上昇。
  6. 長期にわたる借入金の元利金返済。
  7. 金利上昇局面における利息負担の増加。

特に注意すべきは、空室部分には貸家としての評価減(借家権割合の適用)が認められない点です。

一時的な募集期間を除き、空室が続けば節税メリットは薄れ、維持費だけが家計を圧迫します。

人口減少社会において、戦略のない不動産投資は「負動産」を子世代に残す結果となりかねません。

少子高齢化
少子高齢化
需要が減り続ける時代、不動産選びにはより厳しい目が必要です。

税金が安くなっても、毎月のキャッシュフローが赤字であれば、それは対策として失敗です。

相続税を0円にできても、手元に現金がなく、借金と修繕が必要な古い建物だけが残るケースも少なくありません。

賃借人がいる物件はすぐには売却できず、急いで現金化しようとすれば足元を見られて安値で買い叩かれることもあります。

不動産での対策は、常に「もし明日、売却しなければならなくなったら」という視点が必要です。

空室リスク
空室リスク
立地条件の悪い物件は、空室リスクが最大の懸念事項となります。

空室が埋まらず、借金だけが残る「節税破産」は決して他人事ではありません。

ご遺族が本当に喜ぶのは、税金が安いこと以上に、安定して収益を生んでくれる「優良な資産」です。

喜ばない
喜ばない
管理の手間や負債ばかりが目立つ相続は、家族に負担を強いることになります。

対策を検討する際は、最悪のシナリオ(空室率の上昇や金利アップ)を含めたシミュレーションが不可欠です。

解体費用
解体費用
出口戦略として、将来の解体費用まで積み立てておくのがプロの視点です。

厳しいことをお伝えしましたが、正しく運用すれば不動産は非常に強力な味方になります。

失敗を回避し、メリットを最大化するための具体的なコツを見ていきましょう。

安定経営を支える「法人契約」の戦略

不動産対策の成功とは、相続時だけでなく、その後も長く利益を出し続けることです。

そのための強力な手段が、個人ではなく「法人(企業)」を相手にした賃貸経営です。

節税破産
節税破産
収支がプラスであれば、借入があっても健全な相続対策と言えます。

企業と契約を結ぶ際、以下の3つのポイントを意識することでリスクを大幅に軽減できます。

  1. インフレや景気に左右されない家賃固定。
  2. 突然の退去を防ぐ、あるいは補償する特約。
  3. ローンの完済時期と合わせた契約期間。

収益の安定化:長期家賃固定

個人向けの賃貸と違い、法人との一括借り上げ(サブリース)などでは家賃を長く固定できる場合があります。
(*ただし、サブリース契約であっても法律上、業者側からの家賃減額請求は可能です。「絶対に下がらない」わけではないため、途中で減額されても返済が回るかどうかのシミュレーションと、信頼できる業者選びが不可欠です。)

「好景気で家賃が上がったときに損をする」と考えるのは、投資家の発想です。

相続対策においては、利益の最大化よりも「計算が狂わないこと」の方が価値があります。

安定重視
安定重視
確実な家賃収入があれば、次世代への引き継ぎもスムーズになります。

収入が確定していれば、そこから逆算して「いくらまでの修繕が可能か」が明確になります。

逆に、頻繁に家賃の減額交渉をされるような契約は、資金計画を根底から壊してしまいます。

「欲張らず、安定を取る」ことが、不動産相続税対策の鉄則です。

出口戦略:中途解約ペナルティ

法人契約で最も怖いのは、一斉退去による収益の断絶です。

これを防ぐため、中途解約時には残債相当額を違約金として支払うなどの厳しい特約を検討します。

あるいは、企業側が建設資金を融通し、家賃と相殺しながら返済する形態(建設協力金方式等)も有効です。

借金放棄
借金放棄
退去時には残りの債務を免除されるような契約形態も存在します。

相手方にとってもメリットのある契約内容を提示しつつ、自らの防衛線を張ることが大切です。

資金繰りの一致:借入と賃貸期間

ローンの返済が15年残っているのに、賃貸契約が10年で切れるようではリスクが残ります。

返済が終わるまでは必ず入居が続く、あるいは収益が保証される設計を目指しましょう。

法人一棟貸しは管理が楽な反面、空室になるときは一気に「100%空室」になる極端な性質を持っています。

100%の空室
100%の空室
特定の一社に依存するリスクを、契約という鎖でカバーする必要があります。

万が一の値下げ要請にも耐えられるよう、返済比率には十分な余力を持たせておきましょう。

再生手法「リファイニング建築」の利点

近年注目されている「リファイニング建築」は、既存の骨組み(スケルトン)を再利用しつつ、大規模な改修を行う手法です。

単なるリフォームとは異なり、建築確認申請を出し直すことで「新築同等の耐震性」を証明します。

  • 建て替えよりもコストを2〜3割程度抑えられる。
  • 既存の構造を活かすため、工事期間が短縮できる。
  • 建物の寿命が大幅に延び、銀行の融資期間を長く設定しやすくなる。

ただし、登記簿上の築年数は変わらないため、将来の売却時には市場の評価を丁寧に見極める必要があります。

古いアパートの建て替えに悩んでいる方には、非常に相性の良い選択肢と言えるでしょう。

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駐車場の貸し出しによる増税の罠

敷地内の駐車場をどう扱うかで、税金の額は劇的に変わります。

入居者専用の駐車場であれば、建物の敷地として「貸家建付地」の評価減を受けられます。

しかし、「空いているから」と外部の人に貸し出すと、その部分は独立した駐車場(自用地)とみなされます。

境界が曖昧な場合、たった数台の外部貸し出しが原因で、敷地全体の評価減が否定されるリスクさえあります。

さらに、住宅用地の特例(固定資産税が6分の1になる軽減)からも外れてしまう可能性があります。

駐車場の外部貸し出し
駐車場の外部貸し出し
安易な外部貸し出しは、得られる賃料以上の増税を招く「負の選択」になりかねません。

目先の数万円の賃料収入のために、数百万円、数千万円の評価減を捨てていないか、冷静な判断が求められます。

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現金投入か借入か、納税資金の重要性

「借金をしてまで建てるべきか」という悩みに対し、答えは常に「納税資金」にあります。

現金ですべて支払えば利息はかかりませんが、手元のキャッシュが枯渇します。

万が一、建設中に相続が発生した場合、ご遺族は多額の相続税を払う現金がないという状況に陥ります。

借入を利用することで、手元に「納税用」や「予備」としての現金を残しておくことが可能になります。

借入利息は一種の「保険料」と捉え、家族が困らないバランスを検討することが重要です。

ある程度の現金
ある程度の現金
「不動産はあるがお金はない」という状況を作らないことが、円満相続の第一歩です。

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税務署が厳視する「駆け込み対策」

相続が近くなってから慌てて不動産を購入する行為は、税務署から「租税回避」として狙われます。

最近の判例でも、明らかに節税目的のみで行われた不自然な購入は、国税庁の伝家の宝刀(総則6項)によって否認されるケースが出ています。

特に対策が必要なのは、以下のような「意思確認」と「継続性」の欠如です。

  1. 高齢で判断力が低下した被相続人に代わり、親族が主導して購入した。
  2. 相続後、節税効果を享受した直後にすぐ売却して現金に戻した。

税務署は、銀行の融資資料や生前のやり取りを詳細に調査します。

不動産対策はあくまで「資産の有効活用」という大義名分のもと、早めから準備を進めるのが正攻法です。

迷われた際は、まずは現状の評価額を知ることから始めてみてはいかがでしょうか。

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