建物の相続税評価額は建設費の約半分?
相続税対策として、建物の購入が有効であると耳にした方も少なくないかと思います。
それは建物の相続税評価方法に関係があります。
建物の相続税評価額は固定資産税評価額で評価します。
固定資産税評価額は、市区町村(東京23区の場合は都税事務所)で発行されている「固定資産評価証明書」に記載されています。
そして、この固定資産税評価額は時価の7割の金額とされています。
時価で1億円の建物であれば7,000万円位で評価されるということです。
ただ、実際には7割未満の評価になることが多く、東京では建設費の5割程度の評価になる場合が多いです。

実際には固定資産税評価額は7割未満の評価になることが多く、東京では建設費の5割程度の評価になる場合が多い
そして、その建物を貸し付けた場合には借家権割合分も減額となります。
貸家(貸付のように用いた建物)の相続税評価は、固定資産税評価額×(1-借家権割合)となります。
その借家権割合は全国で一律30%です。
よって、貸家の場合には固定資産税評価額×70%となります。
貸家用に建物を購入した場合には【購入金額×70%(固定資産税評価額)】×【70%(1-借家権割合)】となり、購入金額の49%として試算することができます。
固定資産税評価額は、実際には建設費の5割程度の評価になる場合が多いことや、貸家の場合には購入金額の49%として試算できることなどから、購入金額の大体半分以下の金額になると言われます。

賃貸マンションや賃貸ビルの建物は【購入金額×70%(固定資産税評価額)】×【70%(1-借家権割合)】となり、購入金額の49%として試算可能
ただし、相続税対策として試算する時は、ざっくりと半分以下とかではなく
- 自用家屋の場合は購入金額の7割
- 貸家の場合は購入金額の49%
で試算しましょう。
賃貸物件で空室がある場合はどうなるのか?
なぜ貸家などの賃貸物件の建物の評価額に借家権などが考慮されて減額されるのかというと、借家人を立ち退かせる必要が生じたときに、支払わなければならない【立ち退き料相当額などが考慮】されているからと言われています。

借家人を立ち退かせる必要が生じたときの立ち退き料相当額が考慮されて、減額されていると言われています。
なので、自分で使う建物よりも評価を下げるということです。
では、賃貸物件として購入したが、そこの一部に自身が住んだり、空室が発生したりしたら・・
そのような部屋には、立ち退き料は必要ありません。
よって
- 自身が住んでいる
- 空室である
ような部屋には減額する理由がありませんので、自身が住んでいる部屋や空室の部屋は【自用家屋として計算】します。

自身が住んでいる部屋や空室の部屋は自用家屋として計算
なので、貸家の厳密な相続税評価は固定資産税評価額×(1-借家権割合×賃貸割合)となります。
たとえば、まったく同じ面積の部屋が10室があった場合で
- 1室は自身で住んでいる
- 4室は空室である
- 5室は埋まっている
場合の建物の評価は、半分は自用地、半分は貸家として評価することになります。
- 自用地部分:固定資産税評価額×50%
- 貸家部分:固定資産税評価額×(1-30%×50%)
のようになります。
動画で解説
建物の相続税評価方法について、税理士法人・都心綜合会計事務所の税理士・田中順子が解説しています。
字幕が付いておりますので、音を出さなくてもご視聴できます。