賃貸マンション等を建て替え中の土地でも「条件しだいで評価減可能」

賃貸マンションやアパートを建て替え中の土地でも、貸家建付地として、「約2割ほどの評価減」が出来る可能性があります。

建て替え中でも条件しだいでは貸家建付地として認められる

賃貸アパートや賃貸マンションなどを建て替えている最中に相続が発生した。

この場合、その土地の相続評価はどうなるのか?

通常であれば、その土地の上に賃貸アパートや賃貸マンションがありませんので、更地として評価します。

なので約2割ほどの評価減が出来る、貸家建付地として評価しません。

貸家建付地などの詳しい内容は、貸家建付地の相続税評価に記載しています。

建て替えるかどうかは、相続はもちろんですが、今後の賃貸運営・キャッシュフロー・建て替え費用など様々なことを考える必要があります。

建て替えるべきかどうか?
建て替えるべきかどうか?
建て替えは、今後の賃貸運営・キャッシュフロー・建て替え費用など様々なことを考える必要があります。

さらに建て替え前に相続が発生していれば、貸家建付地として約2割ほどの評価減が出来ます。
(正確には評価減になるのは貸家建付地の面積に対して、実際に賃貸している割合についてだけです。)

こうなると、さらに賃貸アパートや賃貸マンションの建て替えに、二の足を踏むかもしれません。

ただし、以下の条件を満たしていれば、貸家建付地として認められます。

  1. 立ち退き料の支払いがない
  2. 新築物件の新たな権利金等の授受がある
  3. 建て替え前の賃借人が、引き続き新建物に入居する予定

この3つの条件を満たせば、賃貸借契約が成立しているものとみなして、貸家建付地として評価可能です。

より確実に、かつ上記の条件を証明するためにも、前の賃借人と契約書を交わしておくのがベストです。

契約書
契約書
賃貸借契約が成立しているものとみなされるためにも、契約書を交わしておくべき

しかし、建物が新築となります。

そうなると、必然的に賃料が上がるなど、条件が変更になる場合がほとんどです。

そして、建て替え前の賃借人がその変更になった条件で、引き続き新しい建物に入居するかどうか微妙になってきます。

そんな場合は、不動産管理会社でサブリース(不動産管理会社が一括賃貸)を利用すれば、個別に前の賃貸人と交渉する必要がなくなります。

不動産管理会社を活用した相続税対策の詳しい内容は、不動産管理会社で所得分散や不動産名義を法人にし財産圧縮を図るに記載しています。

短期間の一時的な空室であれば貸家建付地として認められる

建て替えるなどの大きな話ではありませんが、賃貸アパートや賃貸マンションを運営している限り、空室というものが発生します。

貸家建付地として評価減出来るのは、実際に賃貸している割合についてだけです。

そうなると、仮にすべてが空室の時に相続が発生したら、更地として評価しないといけないのか?

これも例外というか、以下の条件を満たせば、貸家建付地であると認められます。

  1. 短期間の一時的な空室である
  2. チラシなどで賃貸人を募集している
  3. いつでも入居できるように維持管理されている

1の短期間についての規定はありません。

国税不服審判所が2年6ヵ月空いていた部屋でも、一時的な空室と認めた判例もあります。

空き家が叫ばれる現代においては、空室が発生しても直ぐにうまるというのがなかなか難しい状況です。

なので、長い期間でもちゃんと募集をかけて、建物と維持管理していれば、貸家建付地であると認められる可能性は高いと言えます。

募集
募集
空室の期間が長くても、その期間しっかり賃貸人を募集していれば、貸家建付地であると認められる可能性は高い

ちなみに上記のような条件は賃貸マンションやアパートのみの話であり、一戸建てにはありません。

なので一戸建ての場合には、相続発生時に入居者がいなければ、無条件で更地として評価します。

一戸建て
一戸建て
一戸建ては相続発生時に入居者がいなければ、無条件で更地として評価

低額譲渡と贈与税の関係を動画で解説

賃貸マンションやアパートの建て替え中に相続が発生しても、その土地を貸家建付地として評価できる場合がある、ということについて、税理士法人・都心綜合会計事務所の税理士・田中順子が解説しています。

字幕が付いておりますので、音を出さなくてもご視聴出来ます。

建て替え中の土地は貸家建付地で評価?

動画内容

賃貸アパートや賃貸マンションが建っている被相続人名義の土地は、貸家建付地として、通常より2割ほど少ない額で評価することができます。

しかし、賃貸アパートや賃貸マンションを取り壊せば、当然そのような評価はできません。

貸家建付地として評価できるのは、実際に賃貸しているときだけだからです。

そうすると「建て替えをしたいけれども、もしその間に相続が発生したら…」と考えて、建物の建て替えに、二の足を踏むことが考えられます。

しかし条件次第では、建替え中であっても貸家建付地として評価できる場合があります。

その条件とは、

  • 立ち退き料の支払いがないこと
  • 新築物件の新たな権利金(等)の授受があること
  • 建て替え前の賃借人が、引き続き新建物に入居する予定があること

この3つです。

この3つの条件を満たせば、実質、賃貸借契約が成立していますので、貸家建付地として評価することができます。

条件を満たしていることを確実に証明するために、賃借人と契約書を交わしておくのがベストです。

それから建て替えほど大きな話ではありませんが、短期間の一時的な空室であれば、貸家建付地として認められる場合もあります。

たとえば、短期間の一時的な空室であること、チラシなどで賃借人を募集していること、いつでも入居できるように維持管理されていることなどを満たせば、貸家建付地として評価できます。

「一時的な空室」については、はっきりとした期間は定められていません。

ただ、国税不服審判所が2年6ヵ月空いていた部屋でも、一時的な空室と認めた事例もあります。

空室がでても、きちんと募集をかけて、建物と維持管理をしていれば、貸家建付地であると認められる可能性は高いといえます。

ちなみにこの話は、戸建ての貸家にはあてはまりません。

戸建ては相続発生時に入居者がいなければ、無条件で更地として評価しなければならないので注意をしてください。

最後に、建物が新築に変われば、必然的に賃料が上がるなど、賃貸するときの条件が変わります。

そのため、賃借人に引き続き借りてもらえるよう、それぞれと交渉をする手間が生じます。

そのような場合は、不動産管理会社によるサブリースの活用を検討してみるのもいいかもしれません。

サブリースとは、賃貸物件の一括借り上げのことです。

サブリースを活用すれば、貸家建付地としての評価を行いながら、管理会社に交渉を任せることができます。