タワーマンションの節税策は理屈上は今でも有効だが危険
タワーマンション購入による「相続税の節税策」は、理屈上では今でも確かに有効です。
ただ、とても相続税対策として、お勧めできるような状況ではありません。
タワーマンションによる節税が「租税回避行為と認定」される可能性があります。
タワーマンションの節税方法は時価と相続税評価額の乖離を利用
分譲マンションは階が違うたくさんの人が、その分譲マンションの土地を使用していることになります。
タワーマンションの場合、人数も多いのでたくさんの人が土地を使用することになります。
これは、一戸あたりの土地の持ち分(敷地権)が小さくなることを意味し、相続税評価額が低くなることを意味します。
また、マンションの建物の固定資産税評価額は、専有面積が同じ場合、「低層階・高層階に関係なく同じ」です。
例えば50階建ての50階で100㎡と、1階の100㎡の場合、固定資産税評価額が同じになるということです。
しかし、実際には低層階と高層階では「販売価額に大きな差」があります。
通常、高層階の方が眺望が良く高い価額になります。
マンションの相続税評価額は、1.建物(固定資産税評価額) + 2.土地の評価額(持ち分)です。
- 建物の評価額は面積が同じであれば低層階・高層階に関係なく同じ
- 土地の評価額は人数も多いため、持ち分が減り下がりやすい
このような理由で、タワーマンションの高層階ほど、【時価と相続税評価額が大きく乖離】しているため、相続税対策として有効になります。
時価(売却価格)では1億円だけど、相続税評価額は5000万円、というようなことです。
なので、タワーマンションは直近の相続税対策として有効でした。
例えば現金1億円を持っていて、相続が発生しそうだ。
現金のままだと、相続財産として1億円が計上されます。
そこで現金1億円でタワーマンションを購入し、相続税評価額を5000万円にし、その後直ぐに売却する。
タワーマンションの高階層は、将来の値下がりリスクも少なく、売却しやすいというメリットもあります。
高層階は固定資産税額の負担が増加
平成29年に税法が改正され、平成29年4月1日以降購入の高さ60mを超えるマンションは、高層階ほど「固定資産税額の負担」が増えます。
実際の価格に合わせて、高層階ほど高い税負担を課し、低層階では軽くするというためです。
ただ、これは固定資産税額の按分方法の改正であり、固定資産税評価額の改正ではありません。
なので、タワーマンションの高層階の購入は、
- 固定資産税の負担が増える
- 相続税評価額には影響しない
ということになります。
よって、理屈上では時価と相続税評価額が大きく乖離するタワーマンションの節税方法は、まだ有効とも言えます。
タワーマンションの節税が租税回避行為と認定
時価と相続税評価額が大きく乖離するタワーマンションの節税方法を、国税局も黙って見ていません。
いわゆるタワマン節税で、行き過ぎた節税策がなされていないかを国税局は厳しくチェックしています。
平成29年に税法改正による、固定資産税の負担割合の変更も、その一環と言われています。
そして、タワーマンション購入がそもそも租税回避行為と認定されれば、タワマン節税が否認されるという事例もあります。
特に
- 購入日と相続発生が近い
- 相続発生後に即売却している
などの場合、租税回避行為と見なされ、「タワーマンションの購入資金が相続財産」と税務署にみなされます。
そのような場合には修正申告をする必要があり、実際にそのような事例が発生しています。
タワーマンションの高層階の購入は、節税効果が高いのは事実です。
しかし、
- 国税局が厳しく見張っている
- 実際に否認されている例がある
ことや、平成29年の改正では相続税評価には影響がないものの、今後、直に相続税評価に影響がでる改正があるかもしれません。
タワーマンションによる相続税対策は黄色信号が灯っていると言えます。
タワーマンションによる相続税対策を動画で解説
タワーマンションの相続税対策について、都心綜合会計事務所の税理士・天野敬祐が解説しています。
字幕が付いておりますので、音を出さなくてもご視聴出来ます。
動画内容
タワーマンションを買うことが、相続税対策になるというお話しはご存知でしょうか?
今回は、なぜタワーマンションを買うと節税になると言われているのか
そして、タワーマンションの相続税対策は今後も安全なのか?ということについてお話しをしていきます。
相続税は財産の相続税評価額というもので決まります。
この相続税評価額が高ければ、負担する相続税も高くなります。
相続税評価額とは、財産の種類によって計算方法が決められています。
では、マンションの相続税評価額がどのように計算されるのかというと、建物の部分と土地の部分に分けて計算をします。
建物の部分は固定資産税評価額といって、市区町村が決める建物の価値を、そのまま相続税でも使用します。
これは戸建て住宅でも同じ計算方法です。
それでは土地の部分はどうでしょうか?
マンションの場合、そのマンション全体の敷地のうち、部屋の床面積に応じた部分を持ち分とします。
マンションで暮らす皆さんで、敷地の相続税評価額を分担できるイメージです。
このことからタワーマンションのようなマンションには、特に沢山の人が住んでいるため、土地の相続税評価額は意外と少額になります。
そして、タワーマンションの場合、低い階層より高層階のマンションを購入した方が、相続税対策になると言われています。
その理由は下の階と上の階で、相続税評価額の計算方法が同じだからです。
1階の部屋と50階の部屋で、床面積が同じであれば相続税評価額は同じになります。
でも、もしこのマンションを売却したとしたら、1階と50階では売却できる金額は全く違います。
高い階の部屋ほど高値で取引できるはずです。
このことから階層が上にいくほど、実際の価格と相続税評価がどんどんかけ離れていくのです。
もし1億円で売買できる50階の高層マンションがあって、その相続税評価額が5,000万円だったらどうでしょうか?
現金で1億円を相続するより、その現金でマンションを購入し、5,000万円の不動産として相続をした方が、相続税はうんと下がります。
これがタワーマンションを使った節税の仕組みです。
しかしながら、相続税を明らかに回避する行動は、国税庁からも常に警戒をされています。
そして、相続税の話しではありませんが、平成29年に高さ60メートルを超えるマンションについては、高層階ほど固定資産税の負担が大きくなるよう改正がありました。
この改正は相続税の計算に直接影響はないため、さきほどの節税のしくみはまだ有効です。
しかし、この改正が意味するところは、タワーマンションに関する税制の見直しが入ったということになります。
実際にタワーマンションによる相続税対策に、国税庁のメスが入った事例も発生してきています。
つまり、タワーマンションは、今、黄色信号の状態です。
今後はタワーマンションによる相続税対策には規制がかかるかもしれない、ということを考えていた方がよいでしょう。
相続税対策はタワーマンションによるものだけではありません。
相続税対策のことなら相続に強く、将来を見通した相続税対策を提案できる、都心綜合会計事務所にお任せください。