使用しない土地の相続は何かと不便
土地は保有しているだけで固定資産税や管理費用がかかります。
また、相続するたびに相続税がかかります。
そして不動産を相続するとなると、納税資金の準備など、相続した人に負担がかかるケースも少なくありません。
このことから【使っていない土地】については、相続前に処分することも検討してみましょう。
土地を相続開始前に売却するメリット
更地や荒れ地、使っていない土地をとりあえず相続開始時まで(亡くなるまで)保有しておき、相続の際に
- 売却し相続の納税資金に活用
- 土地の物納
などを検討される方は少なくありません。
あるいは相続税の申告期限から3年以内に売却し、譲渡所得税の軽減(相続税額の取得費加算)を図るという方法もあります。(詳しくは相続財産は3年以内の売却が有利に記載)
ただ、相続税額の取得費加算のメリットは平成26年12月31日以前に相続で取得した土地等はもっと有利だったに詳しく記載していますが、縮小されています。
現状においては、取得費加算のメリットだけを考えて、相続開始前・後のどちらで土地を売却するのかを決めることは得策とは言えないかもしれません。
それは土地を相続開始前に売却することにはメリットがあるからです。
土地は1円の収益を生まない空き地や更地でも、毎年固定資産税や維持管理費がかかります。
また、被相続人がいつ亡くなるのかは、ほとんど場合分かりません。
そうなると収益を生まない土地を保有し続けた経費と、譲渡所得税の節分に大差がない場合も想定されます。
そして土地を生前に売却するということは、土地⇒現金に変換するということを意味します。
土地を現金化すると
- 毎年、生前贈与ができる
- 資金を原資に生命保険に加入できる
など、生前に相続税対策がしやすくなります。
また、現金になっていると、その現金を使用することにより相続財産を減らせることもできます。
逆に現金を贈与された者がそれを使わずにとっておけば、相続税の納税資金対策にもなります。
これが土地のままだと、毎年贈与する場合、その都度司法書士の費用や登録免許税などが発生します。
また、生前の土地の贈与は基本的に共有名義になります。
共有での遺産相続は避けるべき!次世代にトラブルの元を残さないにも記載していますが、共有名義は基本的に避けるべきです。
このように土地を生前に売却することは、相続税対策などの観点から有効な場合があります。
土地を現金化するデメリット
土地を生前に売却し相続税対策を図る。
いわゆる土地を現金化することにはデメリットもあります。
それは現金の分けやすさが、見方を変えればデメリットでもあるからです。
スバリ、他の相続人から現金を要求されやすくなります。

現金だと要求されやすくなる
これが土地などの不動産の場合であれば、登記手続きや共有にするのか?など、簡単に不動産を要求できない面があります。
また、相続税評価額として現金の場合は額面で評価されますが、不動産の場合は現金化した場合より、ほぼ低くなります。
そして忘れてはならないのは、相続税の申告期限から3年以内に売却した場合の譲渡所得税の軽減です。
いくら軽減が縮小されたとはいえ、財産の状況によっては、やはり節税の観点から相続後に土地を売却したほうがいい場合もあります。
ただ、相続開始前に土地を売却するのも一つの手です。
どちらがいいかは、必ずシミュレーションをしてから決めましょう。
動画で解説
使用しない土地がある場合、相続前に処分するのが得か、相続後に処分するのが得かについて、税理士法人・都心綜合会計事務所の税理士・田中順子が解説しています。
字幕が付いておりますので、音を出さなくてもご視聴できます。
動画内容
先祖代々引き継いできた土地の中には、たとえば郊外にある土地や遠方の土地など、誰も使っていないものはないでしょうか?
土地は保有しているだけで固定資産税や管理費用がかかりますし、相続するたびに相続税がかかります。
また不動産を相続するとなると、納税資金の準備など、相続した人に負担がかかるケースも少なくありません。
このことから使っていない土地については、相続前に処分することも検討しましょう。
もし売却できれば、そのお金で生前贈与をしたり、生命保険の掛け金に充てたりした方がお得な場合があります。
生前贈与は1人に対して年間110万円まで非課税で行うことができます。
贈与税の非課税となる枠を活用するために、土地をあえて生前に現金に変えて、計画的に相続人に贈与をすれば税負担を大きく抑えることも可能です。
ただし現金化すると相続人同士で分けやすくなるため、他の相続人から相続の時に要求されやすくなる、ということが考えられます。
一方で相続した土地は、相続税の申告期限から3年以内に売却することで譲渡所得税を軽減することも可能です。
使っていない土地がある場合は生前に売却するか、相続後に売却するか、どちらがお得か一度シミュレーションをしてみましょう。