
海外にある財産をもらったとき、日本の贈与税がかかるかどうかは、贈与する人(あげる人)ともらう人の居住地や国籍によって異なります。日本に住んでいる人が海外の財産をもらう場合や、海外に住んでいる人が海外の財産をもらう場合など、状況によって税金のルールは変わるのです。
たとえば、アメリカなど海外に住んでいる親族から、現地の銀行口座にある預金を贈与された場合、日本の贈与税はかかるのでしょうか。

結論からお伝えすると、贈与税がかかるケースとかからないケースが存在します。
なぜなら、贈与する人と、もらう人の置かれた環境によってルールが大きく異なるからです。
原則として、贈与者と受贈者の両方が海外に住んでおり、かつ両方とも過去10年以内に一度も日本に住所を有していない場合には、海外財産の贈与は日本の贈与税の対象になりません。
また、過去10年以内に贈与者が日本に住んだ時期がなく、もらう人が外国籍で海外に住んでいる場合も、海外財産の贈与は対象外となります。
裏を返せば、以下のような場合には、海外にある預金などの資産であっても、日本の贈与税の対象になってしまいます。
なお、上記のルールは主に日本国籍の方を前提としたものです。
外国籍の方や、就労ビザなどで一時的に日本に居住している方は取り扱いが異なりますのでご注意ください。
また、国内に「住所」があるかどうかの判定は、単純な海外への滞在日数のみでは決まりません。
これらを総合的に見て判断されるため、慎重な確認が必要です。
ちなみに、海外在住で海外の財産を「相続」した場合については、「海外在住で海外の財産を相続しても相続税がかかる?」のページに記載しています。

現在、日本にお住まいの方(居住者)で、一定以上の海外財産を持つ方には「国外財産調書」の提出が義務付けられています。
具体的には、その年の12月31日において、保有する国外財産の合計額が「5,000万円」を超える場合が対象です。
なお、提出期限は翌年の6月30日となります。
海外にある財産を贈与したり、名義を書き換えたりする場合には、こちらの申告義務にも注意が必要です。
特に注意したいのは、財産をもらった側(受贈者)が日本に住んでいる場合です。
海外財産をもらったことでご自身の海外財産が5,000万円を超え、新たに調書の提出義務が発生する可能性があります。
ここで陥りやすい落とし穴が、為替変動による影響です。
調書の提出義務は、その年の12月31日時点の為替レートで判定されます。
そのため、外貨建ての預金残高が変わっていなくても、急激な円安の影響で日本円での評価額が跳ね上がり、意図せず5,000万円を超えてしまうケースが実際に多く発生しています。
「海外の口座なら日本の税務署にはバレないのでは?」と考える方もいるかもしれません。
しかし、現在は国際的な情報交換ネットワーク(CRS)があり、日本の税務署は海外の口座情報も容易に把握できるようになっています。
詳しくは「海外の不動産は申告しなければバレない?」に記載しています。
相続税対策として生前贈与を考えており、海外にある財産を贈与したいと考える方もいらっしゃるでしょう。
ただし、令和6年(2024年)1月からのルール変更により、生前贈与の加算期間が3年から段階的に最長7年へと延長されました。
仮に贈与税を払って海外財産を贈与しても、贈与から一定期間内(最長7年以内)に贈与者が亡くなった場合は、相続財産に足し戻されて相続税の対象になる点にも注意が必要です。(※すでに支払った贈与税は相続税の計算時に差し引かれるため、二重課税にはなりません。)
なお、延長された4年前から7年前までの期間に行われた贈与については、負担軽減のルールが設けられています。
具体的には、財産をもらった人(受贈者)1人につき、4年間のトータルで合計100万円まで相続財産に加算しなくてよい仕組みです。
ただし、この生前贈与の足し戻しルールは、原則として相続で財産を受け取る人(法定相続人など)のみが対象となります。
そのため、相続人ではないお孫さんへの贈与であれば、原則としてこの足し戻しの対象にはなりません。
※ただし、お孫さんが遺言によって財産を受け取る場合や、「相続時精算課税制度」を利用して贈与を受けていた場合(年110万円の基礎控除を超える部分)は、足し戻しの対象になるため注意が必要です。
いずれにせよ、海外財産の非課税要件は非常に厳しいため、ほとんどの方は「日本の贈与税の対象になる」と考えておいたほうが賢明と言えます。