株式の価額の増加分は贈与税の対象
自分の会社(同族会社等を含む)に、個人的な私財を投入した。
あるいは、一般的な価額より低い価額で土地などを譲渡した。
これにより自社の株式の価額が増加した。
このような場合、株式の価額の増加分が
- 贈与者:自分
- 受贈者:会社株主(この場合、自分)
として、贈与税の対象になってきます。
自分の会社だから【関係ない】ということはなく、以下の行為で(同族)会社の株式の価額が増加した場合には、贈与により取得したものとしてみなされます。
- 無償での財産提供
- 無対価での債務免除
- 時価より著しく低い価額での現物出資
- 時価より著しく低い価額での財産譲渡
ちなみに、上記の場合の贈与者は以下のようになります。
- 財産を提供した者
- 債務を免除した者
- 現物出資をした者
- 財産を譲渡した者
贈与の時期は、実際に財産提供・債務免除・現物出資・財産譲渡があった時となります。
会社の債務超過額に相当する部分の金額は対象外
会社の経営状態がピンチだから私財を投入した。
このような場合には、たとえ上記の行為で株式の価額が増加したとしても、贈与税の対象にならないケースがあります。
贈与税の対象にならないケースとは、具体的には、会社が債務超過状態であり、以下のようなケースです。
- 会社更生
- 株主総会の決議
- 債権者集会の協議
等により、再建状態に入っている。
このような場合、会社の債務超過額に相当する部分の金額については、贈与税の対象にはなりません。
「債務超過額に相当する部分の金額だけ」という点に注意です。
全てが免除されるわけではありません。
また、一時的な債務超過の場合には、この適用はありませんので贈与税の対象になってきます。
自分の会社だとしても、私財投入の際には贈与税がかかるかもしれないと頭の片隅に置いておきましょう。
動画で解説
自分の会社に私財を投入したら、自分に贈与税がかかることがある、ということについて、税理士法人・都心綜合会計事務所の税理士・田中順子が解説しています。
字幕が付いておりますので、音を出さなくてもご視聴できます。
動画内容
自分の財産が自分への贈与になる、というのは変な話なのですが、同族会社を通じて行うとそれがあり得ます。
なぜこのような話になるかというと、会社の財産が増えると会社の株式の価額が増加することがあるからです。
もし会社に私財を投入したことで、結果的に株主がもっている株式の価額が増加したとなれば、それは株主に対する贈与とみなされます。
そして、それが自分の会社であれば、株主は自分自身です。
そのため自分の財産が自分への贈与になる、ということが起こってしまうのです。
私財を投入するほかにも、株式の価額を増加させる行為があります。
たとえば無対価での債務免除、時価より著しく低い価額での現物出資や財産の譲渡です。
債務免除や低額譲渡といった行為は、株主に対する贈与税の課税に加えて、会社側や財産を譲渡した個人側に法人税や所得税の課税が生ずることもありますので、どれも注意が必要です。
ただし、会社が債務超過の状態にあるときに私財を投入するのであれば、贈与税がかからないケースがあります。
これは一時的に債務超過となっているだけではダメです。
たとえば会社更生、株主総会の決議、債権者集会の協議などによって、会社が再建状態に入っていることが求められます。
もし、会社がこうした条件にあてはまるときは、経営を立て直すために社長が私財を投入したとしても、会社の債務超過額に相当する金額の分に限り、贈与税の対象にはなりません。
それを超える部分は贈与税の対象になります。
全てが免除されるわけではありませんので、誤解のないように注意が必要です。
このように自分の会社に私財を投入した際には、自分に贈与税がかかることがあります。
頭の片隅に置いておいて下さい。