負担付贈与は税金面ではデメリットが多い

アパートやマンションなどの負担付贈与には、様々な注意点があります。

例えば、後で負担付贈与に該当したと判明しても、既に不動産登記が完了している場合などには、取り消しが出来ません。

また、同じ贈与でも、負担付贈与に該当してしまうと、税金の面ではデメリットが多いです。

デメリットが多い
デメリットが多い
負担付贈与は税金面ではデメリットが多い

今回はそんな、負担付贈与の注意点などについて、解説しています。

負担付贈与とは

負担付贈与とは、【義務や借金などを負担してくれるなら財産を贈与します】といったもので、もらった側に借金などを負担させることを条件にした、贈与などを指します。

たとえば、以下のような贈与は負担付贈与に該当します。

  • 財産をもらう代わりに、贈与者のペットの面倒を見る
  • アパートをもらう代わりに、そのアパートの建設費のための借金を負担する
  • 土地の一部を(贈与者に)駐車場として利用させることを条件に、土地を贈与してもらう

そして、この負担付贈与は【通常の贈与と異なる点】があります。

異なる
異なる
負担付贈与は通常の贈与と異なります。

それは、負担付贈与の場合には、相続税評価額ではなく時価で贈与財産の価額を計算します。

そして、その贈与財産の価額から、負担すべき債務の金額を差引いた額を基準にして、贈与税を計算します。

時価で計算
時価で計算
負担付贈与の場合には、相続税評価額ではなく時価で贈与財産の価額を計算します。

本来、贈与税の課税価格は相続税評価額で計算します。
(著しく低い価額で財産を譲り受けたときなどは除きます。詳しくは国税ホームページに記載されています)。

しかし、負担付贈与の場合には時価で評価します。

通常であれば、土地や建物等の不動産の相続税評価額は、時価より低い金額になります。

詳しくは、

に記載していますが、建物の相続の場合であれば、時価の半分くらいの金額で相続税評価されることもあります。

これが負担付贈与の場合には、時価で評価されるということです。

アパートやマンションなどの負担付贈与には注意

相続税対策の一環として、被相続人の資産の増加を抑えるという目的で、アパートやマンションなどの収益物件を生前に贈与することを検討される方も少なくありません。

抑える
抑える
相続財産の増加を抑えるために、収益物件を生前に贈与する。

また、書籍などでもその手法はよく紹介されています。

ただ、その場合には負担付贈与に注意しなくてはなりません。

敷金や保証金等にも注意

借入金がないから負担付贈与にはならない。

でも、ちょっと待ってください。敷金や保証金等はどうなっていますか?

そうです。この敷金や保証金等があると、負担付贈与に該当してきます。

負担付贈与に該当させないためにも、「敷金や保証金等に相当する現金」も、贈与者から受贈者に贈与する必要があります。

保証金や敷金
保証金や敷金
保証金や敷金に相当する金額も贈与しないと、負担付贈与に該当してきます。

贈与税は高い!なので、建物だけ贈与しよう

贈与税率は高い(累進課税の上がり方が急)です。

なので、一般的に贈与で財産をもらうよりも、相続税で財産をもらったほうが税金は安くなります。

しかし、収益物件は生前に贈与しておきたい。

その場合には、建物だけ贈与しましょう。

家賃収入は建物に帰属します。

なので、土地まで贈与する必要はありません。

土地の贈与
土地の贈与
家賃収入は建物に帰属するので、土地の贈与は必要ありません。

ただ、建物だけの贈与だとしても、受贈者(贈与される側)に贈与税を納める税金がない場合もあります。

そんな場合には、相続時精算課税制度の適用を検討しましょう。

相続時精算課税制度の詳しい内容は、

に記載しています。

負担付贈与をした場合、譲渡所得が課税される

贈与者(贈与した側)が負担付贈与で建物などを贈与し借金がなくった場合、その借金相当額で建物などを売ったとみなされます。

売った
売った
負担付贈与の場合、借金相当額で建物などを売ったとみなされます。

なのでこの場合、贈与者には【譲渡所得が課税】されます。

譲渡所得についての詳しい内容は、国税庁HPの譲渡所得(土地や建物を譲渡したとき)に記載されています。

また、借金が時価の2分の1未満の場合には、譲渡損失はないものとされ、他の譲渡所得との損益通算が出来ません。

負担付贈与を動画で解説

負担付贈与について、税理士法人・都心綜合会計事務所の税理士・田中順子が解説しています。

字幕が付いておりますので、音を出さなくてもご視聴出来ます。

負担付贈与とは

動画内容

贈与を受けた不動産の贈与税は、その不動産の評価額に贈与税率をかけて計算します。

この評価額は、通常は相続税評価額となります。

相続税評価額は、市場で売買される金額よりも安くなることが一般的です。

しかし贈与の中には、相続税評価額よりも、高く評価されてしまうケースがあります。

それが負担付贈与です。

そもそも負担付贈与とは何かというと、持ち主に代わって義務や借金などを負担することを条件に、財産を贈与してもらう契約のことです。

たとえば、住宅ローンを払ってもらう代わりに、自宅を贈与するケースや、賃貸用のアパートをもらう代わりに、その建設費などのローンを負担するようなケースが該当します。

もし負担付贈与により不動産をもらった場合、その贈与税は、通常の贈与とは異なるルールで計算されます。

通常の贈与では、不動産は相続税評価額に贈与税率をかけて計算します。

これに対して負担付贈与では、相続税評価額ではなく、時価に贈与税率をかけて計算されます。

正確にいうと、時価から借金の額を差し引いた額に贈与税率をかけます。

そして、時価は、一般的には相続税評価額より高くなります。

つまり、負担付贈与に該当する贈与を受けてしまうと、何らかの義務や借金を負わされる上に、税金も割高になるということです。

さらに贈与した側には、借金の肩代わりをしてもらったことで、所得税が発生します。

これは負担してもらった借金の額で、その不動産を売ったとみなされるためです。

それならローンのない不動産であれば、贈与しても安心かというと、そうではありません。

たとえば、敷金や保証金の支払いが必要になる不動産を贈与すると、それだけで負担付贈与となってしまいます。

このように、ローンがないからといって安心できないのが、負担付贈与の怖いところです。

とにかく同じ贈与でも、負担付贈与に該当してしまうと、税金の面ではデメリットが多いです。

しかしながら、どうしても生前に贈与したい不動産がある、というケースもあるかと思います。

収益物件のように家賃収入を生み出す不動産であれば、たとえローンがあっても、贈与を受ける側にもメリットがあります。

このような場合は、建物だけ贈与することを検討してみるとよいでしょう。

収益物件の家賃収入というものは、実は建物に帰属します。

つまり、家賃収入のため収益物件を生前に贈与したいのであれば、建物だけの贈与でよく、土地まで贈与する必要はありません。

これだけでも、贈与税の負担がかなり軽減できるはずです。

もし、建物をもらっても税金を用意することが難しい場合は、相続時精算課税制度を使って、相続の時まで税金の支払いを持ち越すことも可能です。

不動産の贈与は金額が大きいため、とにかく失敗が許されません。

不動産の贈与を検討されている方は、決めてしまう前に必ず専門家に相談しましょう。