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新規開業のための建築中は適用不可

定年退職などを機に、新しく事業を始める目的で店舗や事務所を建築することがあります。

しかし、その建物の建築中に被相続人が亡くなった場合、その敷地に対して小規模宅地等の特例を使うことはできません。

なぜなら、この特例を利用するための絶対条件として、「相続開始の直前において、被相続人等の事業の用に供されていること」という厳格なルールが存在するからです。

相続開始時点において未完成の事業用建物
相続開始時点において未完成の事業用建物
その敷地には小規模宅地等の特例の適用はできません。

建築中の建物は未完成であり、当然ながら事業もスタートしていません。

そのため、要件を満たしていないと判断され、特例の適用対象外となってしまいます。

もし相続人が親の遺志を継いで建物を完成させ、その後に事業を始めたとしても、相続開始時点での事実が優先されるため結果は変わりません。

最大8割もの評価減という大きな恩恵を受けるためには、亡くなった時点で事業が稼働している必要があるのです。

なお、「急いで建物を完成させて事業を始めればいい」と考えるかもしれませんが、ここにも落とし穴があります。

税制改正により、原則として相続開始前3年以内に新たに開始した事業の敷地には、特例が適用できないという「3年縛り」のルールが設けられました。

(※ただし、建物の建築費などの設備投資額が、その土地の評価額の15%以上である場合などの例外はあります。)

駆け込みでの事業開始はかえってリスクを伴うため、慎重な判断が必要です。

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事業継続の建替えなら要件次第で適用可能

新規開業のための建築は特例の対象外ですが、すでに事業を営んでいる方が同じ敷地内で店舗を建て替える場合は、取り扱いが異なります。

既存の事業を継続するための建替えであれば、建築中の状態であっても特例の対象となる可能性があります。

ただし、適用を受けるためには、以下の6つの要件をすべてクリアしなければなりません。

  1. 事業を継続する目的の建替えのために、これまで事業に使っていた建物を取り壊したこと。
  2. 建築中の建物が、これまで使っていた建物の代わりとなるものであること。
  3. 建築中の建物が、被相続人または生計を一にする親族が建築を発注したものであり、完成後にその人の所有になる予定であること。
  4. その建築中の建物が、完成後に速やかにその事業のために使われることが確実だと認められること。
  5. 敷地を取得した親族が、亡くなった方の事業を引き継ぎ、相続税の申告期限までその事業を継続していること。
  6. 敷地を取得した親族が、相続税の申告期限までその敷地を所有し続けていること。

申告期限の時点で建物が未完成であっても、建替え後に事業を再開することが確実であれば問題ありません。

また、店舗兼住宅のようなケースも考えられます。

例えば、建物の半分を事業用の店舗とし、もう半分を居住用の自宅として建て替えている最中に亡くなったと仮定しましょう。

建て替え
建て替え
事業用の建物を建て替え中に、被相続人が亡くなった場合はどうなるでしょうか。

この場合、店舗として使用する予定だった床面積分(50%)の敷地については、「特定事業用宅地等」として最大400㎡まで80%減額される特例の対象となります。

さらに、残りの居住用部分(50%)についても、要件を満たせば「特定居住用宅地等」の特例と併用できる可能性があります。

特定事業用と特定居住用の2つの特例は、限度面積の調整計算をすることなく、最大730㎡(特定事業用400㎡+特定居住用330㎡)まで完全に併用できるという非常に大きなメリットがあります。

【注意】アパートの「建替え」など貸付事業は減額割合が異なります

ここまで、最大8割の評価減となる「事業用」の特例について解説してきました。

しかし、アパートや駐車場などの「貸付事業」については、異なるルールが適用されます。

大前提として、新規でアパートを建築している最中に亡くなった場合は、事業用と同様に特例の対象外となります。

貸付事業の場合でも、「これまで行っていた貸付事業を継続するための建替え中」であれば、要件を満たすことで「貸付事業用宅地等」の特例対象となります。

ただし、適用できる限度面積は「最大200㎡まで」となり、減額される割合も8割ではなく「50%」となる点に注意が必要です。

なお、この「貸付事業用」の特例と、先述した自宅の「居住用」の特例を併用する場合は、事業用との併用時のように単純な合算はできません。

限度面積を調整するための複雑な計算が必要となるため、適用時には注意が必要です。

また、貸付事業に関しても、原則として相続開始前3年以内に新たに始めた貸付事業には特例が使えない「3年縛り」のルールが存在します。

(※亡くなる前から3年以上、別のアパート経営などをアパート10室以上などの事業的規模で行っていた場合などを除きます。)

駆け込みでのアパート建築は、必ずしも節税に繋がらないケースも少なくありません。

ご自身の状況で特例が使えるかどうか判断に迷った場合は、相続税に強い専門家である税理士へ相談されることをおすすめします。

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