受益者を【複数人・期間で変更・死亡後に次の受益者を指定】等も可能

受益者を「複数人にする方法」や「期間で変更する方法」、「死亡後に次の受益者を指定する方法」などについて、解説しています。

家族信託の受益権を複数人に分散する方法

戸建ての家賃収入がある。

認知症や相続税対策のことを考えた結果、家族信託を利用して、この家賃収入を家族に分配することにした。

しかし、妻・長女・長男と3人いる。

誰を受益者とするか・・?

このような悩みがある場合、受益者を複数人にする方法があります。

この場合で言えば、妻・長女・長男を受益者とするということです。

また、似たような方法として、

  • 信託契約~10年目までは妻が賃貸収入を受領
  • 11年目~20年目までは長女が賃貸収入を受領
  • 30年目以降は長男が賃貸収入を受領

といった信託契約を結ぶことも可能です。

このように受益権を複数人に分散することは可能です。

受益権の分散
受益権の分散
複数人に受益権を分散することは可能

また、似たようなものとして、受益者連続型信託というものもあります。

受益者連続型信託

受益者連続型信託とは、受益者が死亡したことにより、他の者が新たに受益権を取得する定めのある信託を言います。

上の例で言えば、1番目の受益者は妻で、妻が死亡したら次の受益者は長女、長女が死亡したら、その次は長男を受益者とする信託契約などを指します。

このように受益者は、必ず一人だけに決める必要はありません。

委託者≠受益者の場合、受益者は贈与税の対象

委託者≠受益者となる場合には、委託者から受益者への贈与という形になります。

なので贈与税も考慮した上で、受益者を誰にするのか決めましょう。

また、委託者=受益者の場合、その方は贈与税の対象にはなりません。

上の例で言えば、

  • 委託者:ご自身
  • 受益者:ご自身・妻・長女・長男

とした場合、ご自身は贈与税の対象にならないということです。

動画で解説

家族信託の受益者は複数人にしてもよい、ということについて、税理士法人・都心綜合会計事務所の税理士・田中順子が解説しています。

字幕が付いておりますので、音を出さなくてもご視聴出来ます。

家族信託の受益者は複数人可能

動画内容

「賃貸用不動産の経営をしているけれど、今後、認知症になってしまったときの対策を考えておきたい」というとき、家族信託を利用すると解決できる場合があります。

ただ、家族信託を利用するとき、誰を受益者にするかで悩まれる方がいらっしゃいます。

受益者というのは、その財産から利益を得る人のことです。

賃貸用不動産を信託する場合は、家賃収入を受ける人を受益者といいます。

悩まれる理由でもっとも多いのは、受益者にしたい人が複数いる場合です。

「妻と子供たち全員にしたい」といった場合や、「自分と妻で半分ずつにはできないか」といった場合があります。

その場合は、受益者を複数人にして問題ありません。

また、それだけではなく、期間を区切って受益者を変更することもできます。

たとえば、10年目まで妻、11年目からは長女というような決め方でも構いません。

さらに受益者が死亡した後の、次の受益者を指定することも家族信託を使えば可能となります。

「受益者連続型信託」なんていう言い方をするのですが、要は、次の受益者まで決めてしまう信託のことです。

たとえば1番目の受益者は妻で、妻が死亡したら次の受益者は長女、長女が死亡したら、その次は次女を受益者とする、というようなイメージです。

このように受益者は、一人だけに決める必要はありません。

ただし、受益者となったご家族にかかる税金のことは理解しておく必要があります。

家族信託を新しく始めるとき、財産の持ち主、つまり委託者のことですが、委託者以外の人物を受益者にすると、その時点で委託者から受益者への贈与があったとみなされます。

そのため、受益者になった奥様やお子様たちに贈与税がかかることになります。

その点も考慮した上で、受益者を誰にするのか決めることが大切です。

誤解されやすいのですが、委託者イコール受益者の場合は贈与税の対象にはなりません。

委託者がご自身で、受益者もご自身という場合ですよね。

自益信託という呼び方をします。

この場合は利益を得る権利が移転したわけではないので、贈与税はかかりません。

さきほど「自分と妻で半分ずつにはできないか」という話がありましたが、この場合、ご自身は贈与税の対象にはならない、ということです。