遺言では出来ない主な6つのこと

遺言にしても無効なものや、遺言では出来ないことは、主に次の6つです。

  1. 身分行為はできない
  2. 遺言で法定相続人を決められない
  3. 遺言書通りに遺産分割されるとは限らない
  4. 遺言書を二人以上の人が署名して作ると無効
  5. 法律で守られている相続人の権利を遺言で消せない
  6. 葬儀や香典等について、遺言で指定しても何の法的効力もない

このように、遺言書は絶対ではありません。

遺言に記載しても無効なものや、遺言で出来ないことはあります。

遺言書に記載しても全てその通りになるとは限らない

民法では、遺言は2人以上の者が同一の証書ですることができないと規定しています。

なので一つの遺言書に夫婦が連名で記載しているような遺言は無効となります。

また、遺言で身分行為をすることも出来ません。

例えば、遺言書に○○さんと結婚すること、▲▲さんを養子にすること、などと記載しても無効です。

このように遺言で「身分を作り出す」ことは出来ません。

また逆に、Aと離婚すること、Bと親子の縁を切ることなどの「身分関係の消滅」を遺言ですることも出来ません。

離婚や縁切り
離婚や縁切り
身分関係の消滅を遺言ですることは出来ません。

そして、相続人を決めることも出来ません。

例えば、妻は相続人とするが、子供は相続人としない、などは遺言で指定できません。

相続人(法定相続人)になるかどうかは法律で定められています。

そして、全ての財産を妻へ相続するなどの遺留分に侵害する相続分の指定も出来ません。
(正確に言いますと指定は可能ですが、遺留分の侵害額請求をされた場合、無効になる可能性が高いです。)

遺留分についての詳しい内容は、遺留分にて、詳しく記載しています。

また、葬儀や香典の指定も遺言で出来ません。

正確には遺言で指定をしても無効です。

例えば葬式は仏式で葬儀主宰者は長男にすること、香典などは全て辞退すること、お骨は○○山に埋めてくれなどの指定です。

遺言書に記載されているから、絶対にその通りにしないといけないわけではありません。
(ただ遺言通りにしても、もちろん問題はありません。)

例えばお骨は○○山に埋めてくれなら可能でも、お骨は宇宙に散布してくれと記載されていた場合はどうでしょうか?

出来ない方が大半かと思います。

また、遺言書があったとしても、「相続人全員の同意」があれば、遺言書通りに遺産を相続する必要もありません。

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遺言書に記載したから(記載されているから)といって、全てその通りにしないといけない、もしくはその通りになるとは限りません。

遺言書を作成する時に、上記のことを頭の片隅に入れておくといいかもしれません。

遺言書で出来る身分行為など

身分関係に関することでも、以下は例外で出来ます。

  • 婚姻外の子供の認知
  • 未成年者に対する後見人(及び後見監督人)の指定

また、被相続人の生前中に虐待などをしていた相続人に対して、遺言書で相続人から廃除するなどの「意思表示は可能」です。

意思表示
意思表示
遺言書で相続人から廃除するなどの意思表示は可能

そして、廃除が家庭裁判所で認められれば、その人は相続人でなくなります。

遺言で相続人の指定は出来ませんが、相続人から除くという意思表示は出来ます。

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推定相続人の「廃除」や「廃除の取り消し」は遺言書でも可能

遺言書で出来ないことを動画で解説

遺言書に記載しても無効なものや不可能なことを6つ、税理士法人・都心綜合会計事務所の税理士・天野敬佑が解説しています。

字幕が付いておりますので、音を出さなくてもご視聴出来ます。

遺言書に記載しても無効なものや不可能なこと

動画内容

みなさん、遺言というと、法的な手続きが必要な、なにかとても難しいもの、と考えているかもしれません。

でも遺言は、みなさんから、ご家族に向けた法的に有効な、重要な内容が書かれた手紙のようなもの、と考えることもできます。

遺言には、財産の分け方など、いろいろなことを書きますが、最後にみなさんの、ご家族への気持ちや思いを書くこともできます。

そしてご家族は遺言の内容をできる限り尊重して、相続手続きを行います。

では、なんでも遺言にしておけば、そのとおりになるのでしょうか?

そうではありません。

そこで今回は、遺言にしても無効なもの、そして遺言ではできないことを6つお伝えします。

遺言にしても無効なものや、遺言ではできないことは、次の6つです。

1つ目は、遺言書を二人以上の人が署名して作ると無効になります。

遺言書は一人一通が決まりです。

仲が良いご夫妻でも、必ず別々に遺言を作りましょう。

2つ目は、遺言書に花子さんは太郎さんと結婚すること、とか、次郎さんを養子にします、とか書いても無効です。

このように、結婚や離婚、養子縁組、のようなことを、法律では「身分行為」と言います。

遺言ではこの身分行為をすることはできません。

ですから、逆に花子さんは太郎さんと離婚すること、とか、次郎さんとは親子の縁を切る、こういったこともできません。

3つ目は、遺言で相続人を決めることはできません。

例えば子供2人のうち、太郎は良い子だから相続人、だけど次郎は親不孝ばかりしていたので、相続人にしない、と書いても無効です。

相続人は、法律で決まっています。

それを「法定相続人」と言います。

法定相続人はまず、生きていたら必ず今の配偶者、そして次は子供です。

ですから、「次郎は勘当して相続人にしない」と遺言書に書いても、それはできません。

4つ目は、法律で守られている相続人の権利は、遺言では崩せません。

相続人として太郎と次郎もいるのに、「遺産は全部、妻、花子に相続させる」という指定をしたとしても、太郎と次郎は「遺留分」という、法律で守られた最低限の遺産相続の取り分があり、これを遺言で無効にすることは出来ません。

5つ目は、葬儀や香典について、遺言で指定しても必ずしも守られないということです。

例えば、お葬式は仏式で、喪主は妻にして、香典は全部辞退すること、お骨は○○山に埋めてくれ、といった指定です。

遺言書に書いてあるから、絶対にその通りにしないといけない、という効力はありません。

もちろん、ご家族が遺言書のとおりにできる場合は、問題ありません。

でもお骨を宇宙に撒いてくれ、と書かれていたら、どうでしょうか?

できない人がほとんどです。

遺言書に書いてあることは必ず守らなければいけない、ということではないのです。

6つ目は、遺言書で指定されている遺産の相続でも、相続人全員の同意があれば、遺言書どおりに相続する必要はありません。

このように遺言書に書いたら、その内容が絶対に守られる、とは限らないのです。

遺言書を作る時には、このことを頭の隅においておきましょう。

さて、こんなにたくさんできないことがあるなら、遺言書を作る意味はあるのか、と思うかもしれません。

それでも遺言書は、法的な手続きであなたの気持ちを表すことができるものです。

例えば先ほど、結婚や養子縁組のような「身分行為」は遺言でできない、と言いましたが、例外があります。

婚姻外の子供の認知、未成年者に対する後見人、後見監督人の指定、これらは遺言でできます。

そして相続人廃除の意思表示も、遺言書でできます。

生前、ある相続人から虐待された、重大な侮辱を受けた、著しい非行があった、という場合には、遺言書でその相続人を廃除するという意思表示をすることが出来ます。

そして、その廃除が家庭裁判所で認められれば、その人は相続人でなくなります。

このように遺言にしても、無効なもの、できないものがある一方で、できることもあります。

どう書いたらいいか、お困りの場合には都心綜合会計事務所にご相談下さい。

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