条件を達成したら「遺産を相続させる」は可能

条件付き遺言について、解説しています。

遺言に条件を付けることは可能

結論から言ってしまうと、遺言の内容に条件を付けることは可能です。

例えば、

  • 長男が〇〇大学に入学したら遺産の半分を相続させる
  • 長女が医者になったら全財産を相続させる

このように具体的に条件を明示しているような遺言を、条件付き遺言といいます。

また、

  • 長男が家業を継いだら遺産の半分を相続させる
  • ペットの面倒をみるなら遺産の半分を相続させる

などの義務である条件の場合には、負担付遺言といいます。

条件付き遺言
条件付き遺言
条件によって遺産を相続させることは可能

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停止条件や期限を遺言に付けることが出来る

条件を守らなかった場合

  1. 条件付き遺言
  2. 負担付遺言

ともに有効な遺言です。

では、これらの遺言のもと、条件を守っていないのに相続した場合はどうなるか?

この場合、他の相続人が条件を守るように求めることができ、全く条件を守らなかったり、実行しなければ、家庭裁判所へ遺言書の取消を求めることが出来ます。

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条件付き遺言の場合の相続税申告

相続税の申告期限は相続開始から10か月です。

遺言に条件が記載されていても、この期間にそもそも条件が絶対に成立しない場合があります。

例えば、

  • 長男が中学生で、大学入学が遺産相続の条件になっている
  • 長女が未成年で、結婚が遺産相続の条件になっている
不可能
不可能
被相続人の死亡日しだいで、申告期限までに絶対に条件を満たせない場合がある

このような場合、相続開始から10か月以内に条件を満たせません。
(ちなみに遺言で相続することを遺贈と言います。)

そして条件を満たしていない限り、遺贈で相続したということにはなりません。

ではどうするか?

このような場合には、当初の申告期限において「未分割財産として相続税の申告」をします。

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遺贈の目的になっている遺産は、相続人が法定相続分によって、当該財産を取得したものとして計算します。

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法定相続分

そして未分割申告後、例えば長男が大学入学という条件を満たし当該遺贈財産を取得したら、相続人である長男は、その「条件が成就した日の翌日から4か月以内に更正の請求」などをします。

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また、この時の財産評価の基準は、大学入学日(条件も満たした日)ではなく、相続開始日となります。

条件付き遺言を動画で解説

条件付き遺言について、税理士法人・都心綜合会計事務所の税理士・田中順子が解説しています。

字幕が付いておりますので、音を出さなくてもご視聴出来ます。

条件付き遺言とは

動画内容

みなさん、遺言の内容に条件をつけること、できると思いますか?

例えば「長男が○○大学に入学したら、遺産を半分相続させる」などというものです。

そんな、まだわからないことを、遺言の条件にするなんて、と考えられるかもしれません。

今回は、このように条件を付けた遺言、条件付き遺言について、お話を致します。

さて、先ほどの例で、考えてみましょう。

長男が○○大学に入学するかどうかは、遺言を書いた時には、わかりません。

でも、具体的な条件でしたら、それを相続の条件として、付けることができます。

他にも、長女が医者になったら、全財産を相続させる、とか、孫が弁護士になったら、1000万円を相続させる、というのも可能です。

このように具体的に条件がわかるような遺言を、条件付き遺言といいます。

また、長男が家業を継いだら、遺産の半分を相続させる、とか、ペットの面倒を死ぬまでちゃんと見たら、その人に遺産の半分を相続させる、という義務が条件の場合には、負担付遺言といいます。

このように遺言に「何々をしたら、どれだけの財産を渡す」と書くことは、できるのです。

では、このような遺言で相続したのに、条件を守っていない場合は、どうなるのでしょうか。

この場合には、他の相続人が、その人に条件を守るように、言うことができます。

それでも全く条件を守らなかったり、実行しなかったりした時には、家庭裁判所に、遺言書の取り消しを求めることができます。

それでは、条件付き遺言で相続した場合に、相続税は、どのようになるのでしょうか。

相続税の申告期限は、亡くなった日から10ヶ月です。

10ヶ月以内に、遺言の条件を満たせれば、普通の相続税と同じように申告ができます。

例えば、家業を継ぐ、などです。

でも、どうしても10ヶ月以内に、遺言の条件を満たせない時があります。

例えば、長男はまだ中学生なのに、○○大学入学が、遺産相続の条件になっている。

孫は、まだ生まれたばかりなのに、弁護士になることが、遺産相続の条件になっている。

これらは、とても10ヶ月では無理です。

遺言の条件を満たせません。

このように、遺言を書いた人が、亡くなった日しだいでは、相続税の申告期限までに、遺言書に書かれた、相続の条件を、どうしても満たせない場合があります。

そして、条件を満たしていない限り、遺産相続した、ということにはなりません。

では、どうしたらいいのでしょうか。

このような時には、亡くなってから10ヶ月以内の申告期限内に、未分割財産として、一度、相続税の申告をします。

その時は、法定相続分で遺産を相続した、として計算をします。

その申告をしてから、例えば、長男が○○大学に入学、という遺言の条件を満たして、指定された財産をもらえることとなったら、長男は遺言の条件を満たした、大学入学の日の翌日から、4か月以内に更正の請求をします。

財産の評価は、大学に入学した日ではなく、相続を開始した日、つまり、お父さんが死んだ日が、基準となります。

更正の請求は「間違って税金の申告をしたので、訂正をします」という意味ですから、以前に支払った税額がわかるもの、そして、どうしてこうなったか、がわかるような書類を、準備しなくてはなりません。

ちなみに、納付すべき相続税が増えた場合には、修正申告をします。

ただ、この場合の修正申告には、加算税や延滞税は課税されません。

このような条件付き遺言で、その条件を満たせない時には、普通の遺産相続とは違う申告、そして、更正の請求などの手続きが必要になります。

自分達ではちょっと難しいな、と思ったら、迷わずに専門家に相談をしましょう。

税金と、相続という大きな問題が一緒になっていますから、専門家のきちんとした意見を取り入れて、間違えの無い申告や、手続きをすることをおすすめします。

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