遺留分侵害額請求がないものとして申告する
被相続人の遺言書が遺留分を侵害している。
そして、遺留分侵害額請求をされた。
なお、遺留分については遺留分、遺留分侵害額請求については遺留分侵害額請求とは?時効や手続き方法を解説に詳しい内容を記載しています。
この場合の相続税の申告はどうなるのか?
結論から言いますと、遺留分侵害額請求がされている場合には、その請求が無いものとして、遺言書に基づき相続税を申告します。
なので、未分割申告とはなりません。
遺留分侵害額請求がないものとして、各相続人の相続分を基礎として課税価格を計算します。
民法においては遺留分侵害額請求権の行使により、その遺留分の対象財産は共有状態になるという考え方がありますが、相続税申告においては異なります。
遺留分侵害額請求をされていても税額軽減等の各種特例適用は可能
相続税の未分割申告とはなりませんので、以下のような各種税額軽減措置を選択適用することも可能です。
- 配偶者の税額軽減
- 小規模宅地等の特例
配偶者に対して遺留分侵害額請求されていても、遺言書通りに申告して、配偶者の税額軽減を適用することが可能です。
また、遺言により相続した小規模宅地等の特例対象宅地等に対して、遺留分侵害額請求がされている場合でも、当初の相続税申告において小規模宅地等の特例の適用は可能です。
逆に当初の相続税申告において小規模宅地等の特例を適用しなかった場合、遺留分侵害額請求により返還や弁償すべき金額が確定した後に、更正の請求等によって特例の適用を受けようとしても受けられません。
遺留分侵害額請求がされていても、未分割申告にはなりませんので、各種税額軽減の特例等は必ず当初の申告時において適用するべきです。
遺留分の問題が片付いてから、後で適用しようとしても適用できませんので注意が必要です。
ただ、遺留分侵害額請求の対象となっている財産は、所有権が未確定のため管理処分不適格財産に該当し、物納は認められません。
遺留分侵害額請求をされている場合の相続税申告方法
遺留分侵害額請求をされている場合の相続税の申告方法について、税理士法人・都心綜合会計事務所の税理士・田中順子が解説しています。
字幕が付いておりますので、音を出さなくてもご視聴出来ます。
動画内容
遺産の分割に当たって、遺言書通りに分割したら、ある相続人の遺留分(法律で守られた最低限の取り分)を侵害してしまった。
そして遺留分を侵害されたと気づいた相続人が、自分の遺留分をくださいと請求(いわゆる遺留分侵害額請求)してきた。
この遺留分侵害額請求がされた場合、みなさんは相続税の申告はどうしたらいいと思われますか?
遺留分を戻してあげる時間がかかるので、未分割申告をするのでしょうか?
それとも遺言書通りに、遺留分侵害額請求を無視して申告しますか?
どちらもちゃんとした理由がありそうで、選ぶのが難しいです。
この場合には、結論から申し上げますと、遺留分侵害額請求がされていても、その請求は無いものとして、遺言書に基づいて相続税を申告します。
未分割申告は致しません。
実は民法では、遺留分侵害額請求が行使されると、その遺留分の対象財産は共有状態になる、という考え方があります。
そうすると未分割申告になりそうですが、相続税申告では違います。
遺留分侵害額請求は無いものとして、各相続人の相続分を基に課税価格を計算するのです。
遺留分侵害額請求を無視するなんて、ちょっと、と驚かれる方もいらっしゃるかと思います。
さて、遺留分侵害額請求をされていても、相続税の未分割申告とはなりませんので、各種税額軽減措置を使うことができます。
例えば、大きく減税できる配偶者の税額軽減や、小規模宅地等の特例です。
仮に、配偶者に対して遺留分侵害額請求がされていても、遺言書通りに申告をして、配偶者の税額軽減をしてもらうことができます。
また、小規模宅地等の特例対象になる宅地に対して、遺留分侵害額請求がされている場合でも、最初の相続税申告では小規模宅地等の特例は使えます。
逆に、最初の相続税の申告で、小規模宅地等の特例を使わなかった場合には、遺留分侵害額請求で返還や弁償する金額が確定したあと、更正の請求などによって、小規模宅地等の特例を使おうとしても使えません。
ここには大変、注意が必要です。
遺留分侵害額請求がされていても、未分割申告にはならない、ということを覚えておいて下さい。
そして、未分割申告にならない、ということは各種の相続税軽減の特例が使える、ということです。
必ず最初の申告の際に、使いましょう。
遺留分の問題が片付いてから、後で特例を使ってもらおう、と思ってもできませんので、十分に気を付けてください。
また、遺留分侵害額請求の対象となっている財産は、所有権が未確定なので、物納は認められません。
あとの税関係は、遺留分侵害額請求が出されていないのと同じように、計算することができます。
急に「遺留分侵害額請求」と書いてある封書が届いて困っている、という方は、相続の専門家に相談をしましょう。
そして、相続のことなら税理士法人・都心綜合会計事務所にお任せ下さい。
相続のワンストップサービスを提供しております。