
孫だけにすべての財産を相続させることは、子供の遺留分という権利があるため非常に困難です。しかし、遺言書と生前贈与を戦略的に組み合わせることで、孫へ多くの財産を引き継ぐことは十分に可能です。この記事では、孫への贈与のメリットや遺留分のリスク、そして税務上の思わぬ落とし穴について詳しく解説します。
親が亡くなった場合、原則としてその子供が第1順位の法定相続人となります。
しかし、ご家庭の事情により「子供には財産を渡さず、可愛い孫にだけ全財産を譲りたい」とお考えになる方もいらっしゃるでしょう。
結論から申し上げますと、孫だけにすべての財産を無条件で相続させることは非常に困難です。
孫は法定相続人ではないため、原則として財産を受け取る権利はありません。
ただし、親である子供がすでに他界している場合は、代襲相続人として孫が法定相続人になります。
子供が健在な状況で孫に財産を渡すには、「全財産を孫に相続させる(遺贈する)」という遺言書を作成する方法が考えられます。
法的に有効な遺言書があれば、指定した孫に不動産や預金などを譲ることが可能です。
ただし、自分で書く自筆証書遺言は形式の不備で無効になったり、紛失や偽造のトラブルを招く恐れがあります。
確実性を高めるのであれば、公証役場で作成する公正証書遺言を利用しましょう。

なお、公正証書遺言の詳しい内容については、2026年最新版!確実で安心な「公正証書遺言」の作成方法とメリット・デメリットに記載しています。
公正証書遺言を作成しても、孫への財産移転が100%確実になるわけではありません。
なぜなら、子供には最低限の遺産を受け取る権利である「遺留分」が法律で強力に保障されているからです。

もし遺言によって孫が全財産を受け取った場合、子供は孫に対して遺留分を請求することができます。
ここで注意すべきなのは、現在の法律では遺留分を「現金」で支払わなければならないという点です。
もし孫が十分な現金を持っていなければ、もらった不動産を売却して支払うなどの苦労を強いることになります。
子供が自ら家庭裁判所で遺留分放棄の手続きをしてくれない限り、孫が金銭請求されるリスクは消えません。
なお、遺留分放棄についての詳しい内容は、遺留分放棄とは?手続きのやり方や放棄すべきケースをわかりやすく解説に記載しています。
遺言書の弱点を補うための有効な手段が、生きている間に財産を渡す「生前贈与」です。
元気なうちから孫へ預金などを少しずつ移しておけば、相続発生時に残る財産が減ります。
結果として、実質的に孫が多くの財産を受け取ることになります。
さらに生前贈与には、孫相手だからこそ得られる強力なメリットが2つあります。
1つ目は、相続開始前7年以内の「持ち戻しルール」の対象外になりやすい点です。
通常、亡くなる前7年間に行われた贈与は相続財産に持ち戻して計算されます。
しかし、法定相続人ではない孫への贈与は、原則としてこの持ち戻しの対象外となります。
2つ目は、遺留分対策として非常に有効な点です。
相続開始の1年以上前に行われた孫への贈与であれば、原則として子供の遺留分を計算するための基礎財産には含まれません。
つまり、早めにコツコツと孫へ贈与しておくことで、将来子供から遺留分を請求されるリスクを大幅に下げることができます。
ただし、生前贈与にも気をつけるべきポイントが存在します。
最大のデメリットは、相続税に比べて贈与税の税率が高く設定されていることです。
そのため、年間110万円の基礎控除を利用する「暦年贈与」などを活用し、税金がかからないよう計画的に行う必要があります。
以前は「教育資金一括贈与の非課税特例」という便利な制度がよく使われていました。
しかし、この特例制度は2026年3月末をもって終了となりました。
現在は、地道な暦年贈与や、生命保険(死亡保険金)の受取人を孫にしておくなどの対策が主流となっています。
また、ご自身の老後の生活費にも十分に注意が必要です。
可愛い孫に財産を渡しすぎて、いざご自身の介護や医療にお金が必要になった時に生活資金が足りなくなっては本末転倒です。
手元に残す資金とのバランスを見極め、計画性を持って贈与することが何より重要です。
孫へ確実に財産を残すためには、遺言か生前贈与のどちらか1つに絞る必要はありません。
生前贈与で少しずつ孫に財産を移しつつ、残った財産を遺言書で指定するという併用プランが最も現実的です。
また、孫が遺留分を請求された時のために、孫を受取人とする生命保険に加入し、対抗するための現金を用意してあげるという解決策もあります。
ただし、ここで税務上の非常に大きな落とし穴があります。
遺言書で孫に財産を渡したり、生命保険の受取人を孫にしたりすると、孫が相続税を納めることになります。
この時、孫にかかる相続税は通常の計算よりも「2割増し(2割加算)」になってしまいます。
さらに、孫は法定相続人ではないため、生命保険の非課税枠の適用も受けられません。
それに加えて、孫が遺贈などで財産を取得すると、過去7年間の生前贈与も持ち戻しの対象になってしまいます。
遺留分対策としては有効でも、結果的に相続税の負担が跳ね上がる可能性があるため、併用する際は細心の注意が必要です。
財産の状況や家族関係によって、最適な相続プランはそれぞれ全く異なります。

孫を思わぬトラブルや重い税負担に巻き込まず、円満に財産を引き継ぐための準備が必要です。
そのためには、早めに専門家と一緒に相続プランニングを始めることが大切です。
あなたの想いを実現する最適な遺産相続に向けて、税理士法人・都心綜合会計事務所と一緒に考えていきましょう。