
公正証書遺言は、遺言者の意思をもとに、法律の専門家である公証人が作成する非常に確実性の高い遺言書です。作成費用や手間はかかりますが、無効になるリスクが極めて低いのが特徴です。さらに、2025年10月からは手続きがデジタル化され、オンラインでの作成も可能になりました。大切な財産を確実に引き継ぎ、ご家族のトラブルを防ぐためにも、遺言書は公正証書での作成を強くお勧めします。
公正証書遺言は、遺言者が公証人に遺言の内容を伝え、公証人がそれを書面に(または電子データとして)書き起こして作成します。
当日にいきなり公証役場へ行って、その場で一からすべてを話し始めるわけではありません。
実務上は、事前に公証人や税理士・弁護士などの専門家と打ち合わせを行い、遺言の原案を作成しておきます。
作成当日は、あらかじめ用意した原案を公証人が読み上げます。
遺言者はその内容に間違いがないかを自分の口で承認(口授)します。
その後、署名・押印(デジタル手続きの場合は電子サインや電子署名等)をするという流れが一般的です。
単にメモを渡して「この通りに書いておいて」と伝えるだけでは、法律上の要件を満たさず無効になる可能性があるため注意が必要です。

また、作成当日は遺言者のほかに証人2人の立ち会いが必要となります。
証人は最初から最後まで同席し、手続きをしっかりと見届ける義務があります。
途中で退席してしまったことが原因で、遺言が無効になったケースも存在します。

公証役場は全国の主要都市に約300か所あり、ご自身で出向く場合はどこでも自由に選ぶことができます。
病気やケガなどで公証役場まで行くのが難しい場合は、別途費用を払うことで公証人に自宅や病院へ出張してもらうことも可能です。
ただし、出張を依頼する場合は、原則としてお住まいの都道府県内の公証役場に限られますのでご注意ください。
さらに、2025年10月のデジタル化により、一定の要件を満たし公証人が相当と認めれば、ウェブ会議システムを利用したオンライン作成も可能になりました。
このように、事前の打ち合わせと日程調整が必要になるため、思い立ったその日にすぐ完成させられるわけではありません。
証人には、誰でもなれるわけではありません。
遺言の内容に利害関係を持つ人などは、証人になれないと定められています。
具体的には、以下のような人は証人になれません。
適当な証人が見つからない場合は、弁護士、司法書士、税理士などの専門家に依頼して証人になってもらうことがよくあります。
また、公証役場に一定の手数料を支払って、証人を紹介してもらうことも可能です。
公正証書遺言を作成する際は、原則として以下の書類が必要となります。
※オンラインで作成する場合、実印と印鑑証明書は不要ですが、代わりにマイナンバーカード(署名用電子証明書)が必要になります。
また、画面上で公正証書案を確認したり電子サインを行うシステムの都合上、スマートフォンやタブレットは利用できません。
必ずカメラやマイク付きのパソコンをご用意ください。
公正証書遺言の作成にかかる公証人手数料は、遺産として引き継ぐ財産の金額によって変動します。
2025年10月の制度変更に伴い手数料の改定が行われ、全体的に数千円程度の値上がりとなっています。
詳しくは、以下のページに記載しておりますのでご参照ください。
なお、作成後に遺言の内容(誰に何を相続させるか等)を変更したい場合は、注意が必要です。
原則として前の遺言の一部を撤回して新たな遺言書を作成することになるため、変更する財産の額に応じて新たに作成費用が発生します。
遺言書は、いつ必要になるか分からないため保管場所に苦労します。
しかし公正証書遺言の場合、2025年10月以降は遺言書の「原本」が電子データとして公証役場のシステム上に厳重に保管されるようになりました。
これにより、紛失や改ざんのリスクは実質ゼロとなっています。
遺言者本人には、希望に応じてこれまで通り紙の「正本」と「謄本」が渡されます。
さらに、希望すれば紙だけでなく、電子データとして受け取り、パソコン等に保存しておくことも可能です。
一般的には、正本を遺言者が大切に保管し、謄本をその他の相続人や証人などに預けておくケースが多いです。
万が一、手元の正本を無くしてしまっても、本人の印鑑証明書と実印、身分証明書を持参すれば再発行してくれます。
また、現在は公正証書遺言のデータが全国の公証役場でオンライン検索できるようになっています。
相続が発生した際、ご遺族は最寄りの公証役場で故人が公正証書遺言を残していたかどうかを調べることが可能です。
遺言書には、主に「自筆証書遺言」と「公正証書遺言」、そして「秘密証書遺言」があります。
一般的に広く普及しているのは、自筆証書遺言と公正証書遺言です。
自筆証書遺言は手軽に作成できる反面、内容の不備などで無効になるリスクがありました。
近年では「法務局における自筆証書遺言書保管制度」がスタートしたことで、自筆証書遺言でも紛失や改ざんのリスクを防ぎ、家庭裁判所での検認も不要にできるようになりました。
保管制度によって自筆証書遺言のデメリットは大きく減りましたが、それでも「どちらで作成したほうがいいですか?」と聞かれれば、公正証書での作成を強くお勧めします。
その最大の理由は、圧倒的な「確実性」にあります。
公正証書遺言は、法律の専門家である公証人が内容をしっかりと確認しながら作成します。
そのため、書き方のミスや表現の曖昧さが原因で遺言書が無効になるという事態がほぼ起こりません。
さらに、証人2名が作成に立ち会うため、本人が自分の意思でしっかりと作成したということが強力に証明されます。
これにより、相続発生後に「親は認知症気味だったから、この遺言書は無効だ」といった相続人同士の揉め事を未然に防ぐことができます。
また、手が不自由で文字を書くのが難しい方でも作成できるという点も、自筆証書遺言にはない優れたメリットです。

もちろん、家庭裁判所での検認も不要なため、相続開始後すぐに預金の解約や不動産の名義変更などの手続きに入ることができます。
確かに公正証書遺言は手間と費用がかかりますが、相続人間の無用なトラブルを回避するためには、やはり公正証書で作成しておくのが一番安心だと言えます。
当サイトでは公正証書遺言をお勧めしていますが、もちろん以下のようなデメリットも存在します。
また、公正証書で遺言を作ったからといって、その効力が絶対に覆らないわけではありません。
公正証書遺言を作成したあとに、新しく自筆証書遺言を作成した場合、日付の新しい自筆証書遺言の内容が優先して有効となります。
遺言書は、最後に書かれた「最新の意思」が尊重されるというルールがあるためです。
状況が変わったからといって安易に自筆で書き直してしまうと、せっかくの公正証書の確実性が失われてしまうため注意が必要です。
変更したい場合は、公証役場に相談して新たに公正証書遺言を作成し直すのが最も安全な方法です。