遺言認知のメリット

認知とは、法律上の婚姻関係にない男女間に生まれた子供に対して、父親が自分の子どもであるとして認知届するというものです。

認知についての詳しい内容は、隠し子は相続人になれる?また、相続の取り分は?に記載しています。

遺言認知とは、これを「遺言によって行う」というものです。

遺言で行うので、自分(父親)の生存中には認知しない、ということを意味します。

なぜ自分が生きている間には認知しないのか?

理由としては、婚姻関係にない男女間(いわゆる愛人との間)に生まれた子供を、今の奥さんには秘密のままにしておきたい、などの理由があります。

ただ、自分の遺産は、その子供(いわゆる隠し子)にも相続させたい。

秘密
秘密
生きている間は秘密にしたい。でも遺産相続はさせたい。

その打開策として、遺言認知を活用する場合があります。

ちなみに、その隠し子が成人している場合には、本人(隠し子)の同意が必要です。

まとめますと、この遺言認知には

  1. 生前には、隠し子の存在を秘密にし揉め事を防ぐ
  2. 死亡後には、その隠し子に遺産を相続できる

といったメリットがあります。

しかし、この遺言認知は他の相続人にとって、迷惑千万になるケースが高くなります。

遺言認知で想定外の相続人が増える

遺言認知をすると、その隠し子が相続人となります。

「相続人が増える ⇒ 基礎控除額が増える ⇒ うれしい」等の話は、まずないと思った方がいいでしょう。

相続人が増えると、どういったことになるのか?

被相続人A、正妻をB、被相続人Aと愛人の子供をCとして、以下のようなケースを見てみましょう。

AとBの間に子供がいない場合

この場合、もしも遺言認知がなければ、相続人は
Bと「Aの親、あるいはAの兄弟」
ということになります。

しかし遺言認知があると、相続人は【BとC】ということになり「Aの親、あるいはAの兄弟」は相続人になれません。

だれが相続人になる?ならない?の詳しい内容については、相続できる人は誰?パターンを多数ご紹介に記載しています。

遺言認知があると「Aの親、あるいはAの兄弟」は、相続分が減るというレベルの話ではなく、そもそも相続人ではなくなります。

そのため、遺産相続がゼロになっても文句は言えません。

AとBの間に子供がいる場合

この場合はBとその子供の遺産相続分が、遺言認知により減少する可能性があります。

Cにも相続権があるからです。

生前に遺言書の内容に関係なく、長男は自宅、次男は現金、B(妻)はその他一切の財産を相続すると、相続人どうしで決めていたとします。

しかしいざ相続が発生したら、存在すら知らなった人(C)がいきなり相続人となり、Cと遺産分割をする必要が発生します。

Cが相続放棄などをすれば別ですが、そうでなければ遺産分割協議が難航することが簡単に予想できます。

そう考えると、遺言認知のメリットは被相続人にしかありません。

残された家族にとっては、何のメリットもないと言えます。

私が生きている間はもめ事を避けたい。

でも、隠し子にも遺産を相続させたい。

遺言認知をする理由が、このような場合には高い確率で相続が揉めると思った方がいいでしょう。

残された家族に大変な思いをさせないためにも、安易な遺言認知の活用は慎重にすべきと言えます。

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動画で解説

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字幕が付いておりますので、音を出さなくてもご視聴できます。

安易な遺言認知は避けるべき

動画内容

遺言で子供を認知することを遺言認知といいます。

子供を認知するというのは、婚姻関係にない男女の間に生まれた子供に対して、父親が自分の子どもであると認めることをいいます。

婚姻関係がない男女の間に生まれた子供というのは、わかりやすい表現をしますと、いわゆる隠し子のことです。

一般的な認知の方法としては、父親自身が役所に行って手続きをする方法になります。

このとき隠し子が成人していれば、隠し子本人の同意も必要です。

ところが、この方法で子供を認知すると、以降、父親の戸籍にそのことが記載されるようになります。

そうなると、家族に隠し子の存在を知られるのは時間の問題です。

そこで認知の方法には、亡くなる前に遺言書にそのことを書き記して、遺言によって認知をする方法も認められています。

これを遺言認知といいます。

遺言認知を使えば「愛人との隠し子は、奥さんには秘密のままにしておきたいけれど、遺産は遺してあげたい」という父親の思いを実現することができます。

しかし、この遺言認知は、他の相続人にとっては迷惑千万な話となります。

相続人が増えれば、相続税の基礎控除額が増えるという面もありますが、それが嬉しいと感じる相続人はまずいません。

遺言認知で相続人が増えると、相続できる財産が減ったり、そもそも相続人ではなくなる人が出てきたりするからです。

たとえば被相続人に奥さんとお子さん2人がいて、そこに隠し子が現れた場合で考えてみましょう。

もともとの相続分は奥さんが2分の1、お子さんが1人あたり4分の1でした。

しかし、そこに隠し子が加わることで、お子さんの相続分が1人あたり6分の1に減ってしまいます。

また、被相続人と奥さんとの間にお子さんがいなければ、被相続人の親や祖父母が相続人となります。

親や祖父母もいなければ、兄弟姉妹が相続人となります。

ところが遺言認知でお子さんが現れた場合、親や祖父母、兄弟姉妹は相続人にはなれません。

もし、生前の相続対策として、誰が何を相続するかを話し合っていたにもかかわらず、相続人が変わってしまえば、すべて無意味なものになってしまいます。

そう考えると、遺言認知のメリットは父親にしかありません。

残された家族にとっては、何のメリットもないことです。

生きている間はもめ事を避けたいけれど、隠し子にも遺産を相続させたい、という気持ちは理解できますが、ご家族のことを思うのなら、安易な利用は避けるべきと言えます。

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