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死亡危急者の遺言

日本の法律において、緊急時や危急時に認められる「特別方式による遺言」には、以下の4種類が存在します。

  1. 死亡危急者の遺言
  2. 伝染病隔離者の遺言
  3. 在船者の遺言
  4. 船舶遭難者の遺言

この中で、一般の方の身に最も起こり得る可能性が高いのが死亡危急者の遺言です。

具体的にどのようなケースなのか、現実的な場面を想定して見ていきましょう。

最後の力を振り絞った遺言は有効?

例えば、こんな場面を想像してみてください。

長年寝たきりだった父親が、いよいよ最期の日を迎えようとしています。

妻と子供がベッドのそばで心配そうに見守る中、父親は最後の力を振り絞ってこう言いました。

  • 「妻には家を残す」
  • 「息子には家業を継いでほしい」

そう言い残し、父親は静かに息を引き取りました。

さて、この父親の最期の言葉は「遺言」として認められるでしょうか?

結論から言うと、法的な遺言にはなりません。

「最期の言葉なのだから、当然遺言として扱われるべきでは?」と感じる方も多いでしょう。人情としてはその通りです。

しかし、日本は法治国家です。死に直面した状況での発言であっても、それが法的な「遺言」として効力を持つためには、厳密なルール(要件)を満たす必要があるのです。

法治国家
法治国家
日本は法治国家。死亡危急者だからといって、法律が適用されない訳ではありません。

死に直面している状況であっても、遺言として効力を発揮するためには、以下の8つもの要件をクリアしなければなりません。

死亡危急者の遺言の8つの要件

  1. 疾病その他の事由によって死亡の危急に迫られている人が遺言をしようとしていること
  2. 証人3人以上の立ち会いがあること
  3. 遺言の趣旨を遺言者が証人の1人に口授すること(口がきけない場合に通訳人を介することは可能)
  4. 口授を受けた者がこれを筆記すること
  5. 筆記したものを遺言者や他の証人に読み聞かせ、または閲覧させ(見てもらい)、各証人が筆記の正確なことを確認したうえ、署名押印すること(耳が聞こえない人の場合については別途規定あり)
  6. 遺言の日から20日以内に、証人または利害関係人から家庭裁判所に確認の請求をすること
  7. 家庭裁判所が、遺言が遺言者の真意に出たものであるとの心証を得ること
  8. 遺言者が普通方式による遺言をできるようになってから6か月を経過していないこと

信じられないかもしれませんが、以上の8つの要件をすべて満たさなければ「死亡危急者の遺言」としては認められません。

「死に直面している緊急事態なのだから、もっと簡単な手続きで済むはず」と思いきや、悪用を防ぐために通常の遺言よりもはるかに複雑な手続きが求められているのです。

複雑な条件
複雑な条件
死亡危急者の遺言の条件(要件)は複雑です。

想像してみてください。今まさに息を引き取ろうとしている人の言葉を残すために、すぐに証人を集めて手続きを進める余裕が現実にあるでしょうか?

推定相続人や配偶者は証人になれない

さらに厳しい現実があります。普通方式・特別方式を問わず(自筆証書遺言を除く)、遺言には必ず証人の立ち会いが要求されます。

そして民法上、以下の人は証人になることができません。

  1. 未成年者
  2. 推定相続人(将来相続人になる予定の人)、受遺者(遺言で財産をもらう人)、およびこれらの配偶者と直系血族
  3. 公証人の配偶者、四親等内の親族、書記および使用人

つまり、病室に付き添っているはずの

  • 子供
  • 配偶者

は、証人になることができないのです。

たとえ推定相続人が10人いて全員が最期の言葉を聞いていたとしても、法的には意味を成しません。

死亡危急の遺言を成立させるには、亡くなりそうなその瞬間に、急いで推定相続人以外の第三者を3人以上呼び集めなければならないのです。

一刻を争う事態に、これだけの要件を完璧に満たすことは極めて困難であるため、この死亡危急者の遺言制度の実用性には疑問の声も上がっています。

その他の特別方式による遺言の方式

伝染病隔離者の遺言の方式とは、伝染病などの理由で行政処分により交通が遮断された場所にいる人が、警察官1人と証人1人以上の立ち会いのもとで遺言書を作成する方式です。

伝染病
伝染病隔離者の遺言
警察官1人と証人1人以上の立ち会いで遺言書を作る方式

在船者の遺言の方式とは、船に乗っている人が、船長または事務員1人と証人2人以上の立ち会いのもとで遺言書を作成する方式です。

在船者
在船者の遺言の方式
船長か事務員1人と証人2人以上の立ち会いで遺言書を作る方式

船舶遭難者の遺言の方式とは、船が遭難し死亡の危機に瀕している人が、2人以上の証人の立ち会いのもと口頭(*)で遺言を行い、証人がそれを筆記して署名押印し、家庭裁判所の確認を得て成立させる方式です。(*口頭が不可能な場合は通訳人を介することも可能です。)

船舶遭難
船舶遭難者の遺言の方式
船舶遭難の場合に船舶にいる人で、死亡の危急に陥った人が2人以上の証人の立ち会いで遺言書を作る方式

これら3つの特別方式による遺言の場合でも、

  • 遺言者
  • 筆者
  • 立会人
  • 証人

は、それぞれ遺言書に署名押印するなどの厳格な手続きが必要です。

また、最も注意すべき点として、特別方式で遺言をした本人が無事に回復し、普通の方式(自筆証書遺言など)で遺言を作成できる状態になってから6か月間生存した場合には、これらの特別方式の遺言はすべて効力を失います(無効になります)。

つまり「生きて元気になったのであれば、改めて正式な普通方式の遺言書を書き直してください」というルールになっているのです。

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やはり最善の策は、元気なうちに普通方式(公正証書遺言や自筆証書遺言など)で遺言書を作成しておくことです。

普通方式であれば、じっくりと相続税対策を練ることもできますし、家族が揉めないように「付言事項」としてご自身の想いやエピソードを丁寧に書き残すことも可能です。
(詳しくは遺言書にはメッセージを残すことも可能!その効果は計り知れないをご覧ください。)

明日何が起こるか分からない緊急時に、冷静に節税対策を考えたり、相続人間の配慮まで及んだ遺言の内容を決めるのは不可能です。

そして、「まさか自分が突然倒れるなんて」という事態は、いつ我が身に降りかかってくるか誰にも分かりません。

突然死
突然死もあり得ます
突然死、緊急や危急時がいつ我が身に降りかかってくるか分かりません。

分からないからこそ「緊急」であり「危急」なのです。

「そろそろ来るべき時が来たから準備しよう」という都合よく相続が始まることは、ほとんどありません。

相続対策はいつから始めればいいのか?

結論としては、早いに越したことはありません。

相続がいつ発生するかは、特殊能力でもない限り、誰にも予測できないからです。

霊視
霊視
あなたは○○年○○月○○日にお亡くなりになります。アーメン!

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(※お電話での無料相続相談自体は承っておりませんので、あらかじめご了承ください。)

遺言ベスト

動画で解説

死にかけている時の遺言について、税理士法人 都心綜合会計事務所の税理士・田中順子が解説しています。

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死にかけている時の遺言

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