エンディングノートは相続開始前でも開封できるメリットがある
遺言書を書いているから、エンディングノートは書く必要がない。
そう思われる方もいるかもしれません。
ただ、エンディングノートには遺言書にはないメリットがあります。
それは相続開始前でも閲覧出来るということです。
遺言書は被相続人が亡くなってから、裁判所で検認という作業が必要です。
(詳しくは遺言書の検認に記載しています。)
遺言書は被相続人の方が亡くなってからしか、その内容を知ることが出来ません。そうなると、
- 介護
- 葬儀
- 延命治療
などの希望があった場合、遺言書では対応出来ない場合があります。
亡くなる寸前まで意識が明確にあり、相続人に希望を伝達出来ればいいのですが、認知症等になった場合、それも出来ません。
具体的にエンディングノートには以下のようなことを記載します。
- 経歴
- 職歴
- 葬儀
- 財産
- お墓
- 思い出
- 家族への想い
- コレクションの処分
- 寝たきりや認知症になった場合への対応
葬儀であれば、知らせたい方の一覧や葬儀の形式や宗派などを記載します。
財産であれば、財産一覧や契約書の有無やありかなどを記載します。
ちなみに土地の売買契約書の有無は、相続した後に土地を売ることを前提にしている場合、譲渡税という税金に影響がありますので必ず記載しましょう。
そして、被相続人しか価値が分からないコレクションなどは、〇〇のお店で高く売れる等の情報も記載しましょう。
そのコレクションの価値が分からない相続人が、遺産整理として処分してしまう可能性があります。
また、被相続人としても無価値として処分されるよりも、同じ価値観の人に引き渡される方が嬉しいハズです。
エンディングノートは遺言書への下準備になる
遺言書は相続開始後に開封されるため、下準備としてエンディングノートを記載することは有効です。
確かにエンディングノートには法的効力はありません。
ただ、生前中に認知症や延命治療が必要な状態になった時に、どうしてほしいかなどの考え方を、大切な人たちに伝えることが出来ます。
そして遺言書に比べて、エンディングノートは気軽に書けます。
遺言書の場合、
- 自筆証書遺言にするか?
- 公正証書遺言にするか?
- 秘密証書遺言にするか?
- 財産をどう相続させるか?
- 相続税はどうなるか?
- 相続人に争いが発生しないか?
など、様々なことを考える必要があります。
また、相続について全く考えていない方にとっては、エンディングノートを記載することによって、財産管理や相続の問題について考えるきっかけや、遺言書を書くきっかけになるかもしれません。
エンディングノートは遺言書への下準備になりやすいという面があります。
そしてエンディングノートを書いた場合には、そのありかを必ず家族などに知らせておきましょう。
立派なエンディングノートや遺言書を書いたとしても、発見されなければ何の意味もありません。
相続税対策を考えることは重要なことですが、生前に被相続人の想いを伝えることも重要です。
そして葬儀に強いこだわりがある場合には、エンディングノートへの記載でなく、生前予約葬儀をする方がいいかもしれません。
遺言書は死後にしか見られないというデメリットがあることを意識しましょう。
エンディングノートで土地の履歴なども伝えるとモアベター
土地をお持ちの方は、エンディングノートで、その土地の履歴や、それらに関する書類のありかを記載しておくのもお勧めです。
例えば、
- 親が購入した土地である
- 親もその親から相続した土地である
- セットバックが必要である(土地に計画道路の予定がある)
こと等や
- 売買契約書のありか
- 地積測量図面のありか
などを記載しておきましょう。
相続後に土地を売る場合、土地の履歴により、譲渡税という税金が大きく変わる可能性もあります。
また、セットバックなどは土地の相続税評価額に影響してきます。
相続に影響力が大きい土地の場合は、相続人に早くその土地の実情が伝わるようにしましょう。
- 遺産分割協議の過程で初めて土地の実情を知った
- 相続税の申告の過程で税理士さんから初めて土地の実情を教わった
ということは出来るだけ避けましょう。
理想は被相続人の生前に、相続人が土地の実情を知っていることです。
そのためには被相続人がエンディングノートに記載し、頭の整理をした上で、事前に相続人に伝えておくのが理想です。
エンディングノートの書き方
エンディングノートは、出版社はもちろん、葬儀業者や金融機関など、様々な所から販売されています。
記載する項目としては、「医療介護」「財産管理」「葬儀」「自分史」などが用意されている場合が多いです。
また、白紙のノートをエンディングとして、自由に記載するという方法もあります。
「既製品を利用するか・自分で作成するか」の違いは以下のとおりとなります。
作成方法 | 長所 | 短所 |
---|---|---|
既製品を利用 | ・項目が用意されており、時間短縮になる | ・ノートとしては値段が高い ・使わない項目も記載されている ・自由に書けるスペースが限られる |
自分で作成 | ・自由に書ける | ・どのように書いていいのか迷う |
エンディングノートと一緒に作成した方がいい書類
エンディングノートを作成する際に、以下のものを一緒に作成することを検討してみましょう。
- 尊厳死の宣言書
- 任意後見契約書
- 財産管理などの委任契約書
尊厳死の宣言書
病気や事故で末期状態になったときに、延命措置をせずに「尊厳死」を選ぶことを医療機関に伝えるための書類です。
延命措置の状態になり、家族に迷惑をかけたくない、と考える場合には検討してみましょう。
任意後見契約書
認知症などにより、判断能力が低下した。
このような場合に備え、将来任意後見人となる人をあらかじめ決めておき、その人に財産管理や介護などの、手続きを頼むための書類となります。
ただ、これは単に書類を作って終わりではなく、公証役場で任意後見契約を締結する必要があります。
財産管理などの委任契約書
寝たきり等、身体が不自由になってしまった。
そのような場合に備え、信頼している人に、金融機関からの「現金引き出し」や「支払い」といった【財産管理】を頼むための書類となります。
これがあれば、委任状がなくても、日常的な財産管理を代理人が行えるようになります。
遺言書を書いたらエンディングノートはいらない?
エンディングノートについて、税理士法人・都心綜合会計事務所の税理士・田中順子が解説しています。
字幕が付いておりますので、音を出さなくてもご視聴出来ます。
動画内容
亡くなった後のことをどうするのか、自分のお葬式や残す家族への思いを書いたノートです。
「終活」などと言われるようになって、だんだん作る人が増えています。
今回は、このエンディングノートについて、これを作ると、どんな良いことがあるのか、ということをお伝えしてまいります。
さて、みなさんの中には「遺言書を書いたから、エンディングノートはいらない」と思っている方もいるかもしれません。
確かに遺言書は遺産の分け方について、法的な効力があります。
一方で、エンディングノートには法的な効力はありません。
でもエンディングノートには、遺言書にはない、とても良い点があります。
それは、あなたが生きている間にも、家族が見ることができる、という点です。
遺言書は、あなたが亡くなった後に、多分、お葬式などが一段落してから開けられます。
それは、裁判所で「検認」という手続きをしなければいけないからです。
そうすると、もし遺言書に、介護や葬儀について、そして、延命治療について書かれていても、もう全部終わってしまってから、家族はそれを知ることとなります。
亡くなる寸前まで、意識がはっきりとあって、家族に希望を伝えられればいいですけれども、残念ながら、全員がそうとは限りません。
認知症になる方もいらっしゃいます。
そういう時に、エンディングノートがあると役に立つのです。
あなたが生きている間にも、家族が見て、あなたの意志を確認できるからです。
エンディングノートには、経歴や職歴、葬儀について、財産、お墓の希望、自分の趣味で集めたものの処分方法、思い出や、ご家族への思い、そして寝たきりや認知症になった時に、どうして欲しいのか、ということを書くことができます。
例えば、お葬式に関しては、お知らせしたい方の名簿や、葬儀の形式や宗派を書くことができます。
財産でしたら、財産一覧や、契約書のありなし、そして、契約書を保管している場所を書きます。
特に、土地の売買契約書があるかないかは重要です。
それは、その土地を相続した人が土地を売る場合に、「譲渡税」という税金がかかりますが、その金額に影響するからです。
ですから、土地の売買契約書については、必ず書きましょう。
そして、家族には、たぶん価値がわからない、あなたの大切なコレクションなどは、○○のお店でなら、高く売れると思う、などの情報も書いておきましょう。
そうでないと、コレクションの価値がわからない家族が、ゴミとして処分してしまうかもしれません。
せっかくのコレクションですから、あなたと同じように、価値のわかる人に渡せるといいと思います。
ですから、そういう情報を書いておくことも、とても大切です。
さらにエンディングノートは遺言書に比べて、気軽に書けます。
パソコンやワープロで書いても、ノートにペンで書いても大丈夫です。
それに比べて遺言書の場合には、自筆証書遺言、公正証書遺言、秘密証書遺言、と三種類あり、それぞれ作るためのルールが決まっています。
そして、財産をどう相続させようか、相続税はどうなるのかな、こんな分け方だったら、みんな仲良くできるかな、など、沢山のことを考えなければならず、簡単に書けるものではありません。
でも、エンディングノートは、遺言よりずっと気軽に書けます。
そして、エンディングノートを書くことで、相続について、まだはっきりと決めておられない方は、財産や相続について考えたり、決めたりするきっかけとなり、また、遺言書の下準備にもなります。
下準備ができたら、ちゃんとした遺言を書いておこうかな、と思うかもしれません。
最後に、もしエンディングノートを書いたら、そのありかを、必ずご家族などに知らせておきましょう。
せっかくご自分の気持ちを書いたのに、見つけてもらえなかったら、願ったようには実行されないからです。
そして、相続に関するお悩みは、税理士法人・都心綜合会計事務所にお任せください。
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