自分で書く遺言書は自筆証書遺言
遺言書は自分で書くことができ、自分で作成する遺言書を自筆証書遺言といいます。
ただし、この自筆証書遺言を法的に有効な遺言書にするには、以下の要件を満たす必要があります。
- 全て自筆(*注1)
- 署名・押印がある
- 期日の記載がある
1つでも不備がある場合、遺言として無効になります。
全て自筆ということは、「ワープロによる遺言は無効(*注1)」になります。
(*注1)
財産目録はパソコンでの作成が可能です。
そして、自筆証書遺言には、遺言者の署名押印が必要です。
この署名押印する場所について、特に決まりはありません。
また、使用する印鑑も実印である必要はありません。
認印や拇印でも有効です。
日付に関しては、令和6年1月吉日といった日付の書き方では無効となります。
ちなみに日付は、実際に「遺言書を作成した日」を記載します。
日付は令和●●年●●月●●日、西暦●●年●●月●●日など、明確に分かるように記載する必要があります。
なぜ日付を記載する必要があるのかといいますと、遺言は何通でも記載することが出来るからです。
例えば2通の遺言書が発見された場合、「日付が後の遺言書が有効」になります。
その他には、共同で作成した遺言書や連名の遺言書も無効です。
また、文字が書けない遺言者の補助(手を添えるなどして字を書く補助をするなど)をして、文字を書かせた場合にも無効になる可能性があります。
代筆・録音・ビデオ録画による遺言も無効です。
自筆証書遺言のメリット
自筆証書遺言は以下のようなメリットがあります。
- 単独で作成可能
- いつでも作成可能
- 費用の負担がほとんどない
- 遺言の内容を秘密にしておける
自筆証書遺言は紙とペンさえあれば、いつでも一人で作成できます。
自筆証書遺言のデメリット
自筆証書遺言は、以下のようなデメリットがあります。
- 遺言が無効になりやすい
- 家庭裁判所の検認が必要
- 下手をすると遺言書が発見されない
- 遺言書の内容を改変される可能性がある
自筆証書遺言は「トラブルが多い」という現実があります。
遺言書の作成は、やはり公正証書遺言の形で作成するのが望ましいと言えます。
書き方は自由だが「財産が特定できる」ように書く
自筆証書遺言書の書き方や書く順番は遺言者の自由です。
例えば、財産の順番に○○に相続させる、といった記載の仕方や、相続人の順番に△△の財産を相続させるといった記載の仕方もあります。
ただし、どのような書き方でも、財産が特定できる必要があります。
例えば、AさんとBさんに預金を相続させる、と記載されている場合、AさんとBさんはどのように預金を分割して相続していいのか分かりません。
仮に預金に普通預金や定期預金などがある場合には、割合も不明であれば、どの預金をAさんBさんに相続させていいのかも分かりません。
また、複数の土地があり、土地を1/2ずつ相続させると書いてある場合にも、
- 全ての土地を1/2ずつの共有で相続するのか?
- 違う土地をそれぞれ別で相続するのか?
も分かりません。
財産は具体的に記載する必要があります。
例えば
- 東京都新宿区●●1丁目10番●●の宅地100平方米は、長男Aに相続させる
- △△銀行神楽坂支店にある定期預金は長女Bに相続させる
といった形で記載しましょう。
自筆証書遺言の修正の仕方
遺言を書いていたら、間違えてしまった。
よくあることです。
あまりにも間違いが激しい場合には、作り直しましょう。
ただ、それほどでもない場合には一から作成し直す必要はなく、「加除訂正する方法」で対応することが可能です。
ただし、加除訂正する方法には決まりがあり、この決まりに沿っていない場合は、遺言書自体が無効になります。
加除訂正する方法は、以下のようになります。
- 削除、訂正したい部分を二重線で抹消
- 横書きならその上、縦書きなら右横に修正内容を自筆で書く
- その部分に署名押印の際と同一の印鑑を押す
- 余白に訂正した旨の記載(○行中○字削除○字挿入など)
- その部分に署名
となります。
加除訂正のやり方を間違えると、その加除訂正は無かったことになります。(遺言書そのものは無効とはなりません。)
平成31年1月13日から自筆証書遺言の作成要件等が緩和
平成31年1月13日から、自筆証書遺言に添付する財産目録を、パソコンで作成することが可能になりました。
これは自筆証書遺言を作成するには、添付する財産目録も全て自書しなければならず、財産が多い場合には大変な作業となっていました。
これが
- 通帳のコピー
- 登記事項証明書
- パソコンで作成した目録
等、自書によらない書面を添付することで、平成31年1月13日からOKということになります。
ただし、
- 全頁に署名・押印が必要
- 施工日前(平成31年1月13日)にパソコンで作成された財産目録は無効
という点には、注意してください。
自筆証書遺言書について動画で解説
自筆証書遺言書の作成方法やメリット・デメリットについて、税理士法人・都心綜合会計事務所の税理士・田中順子が解説しています。
字幕が付いておりますので、音を出さなくてもご視聴出来ます。
動画内容
遺言書は自分で書くことが出来ます。
これを自筆証書遺言といいます。
この自筆証書遺言が、遺言として法的に認められるには、全部自分で書いてある、署名がある、押印がある、日付が書かれている、この4つが必要となります。
1つでも足りないと、無効になるので注意しましょう。
ただし、財産目録などはワープロ書きでも大丈夫です。
注意点としては、日付は、必ず実際に遺言書を作った日を書きます。
なぜか?と思うかもしれません。
実は遺言書は、何通でも作ることが出来ます。
そして、何通か遺言書が見つかった場合には、新しい方が有効になります。
このように、どの遺言書が有効なのかは、日付が決め手になります。
そのため、遺言書には必ず作成した日付を書きましょう。
ちなみに、もう文字を書くことが難しいほど弱ってしまった時に、誰かに手を添えてもらって文字を書いた時には、無効になってしまう可能性があります。
もちろん代筆や録音、ビデオ録画による遺言も無効です。
さて、自筆証書遺言には、書き方や書く順番が決まっていません。
書く人が自由に決められます。
財産の順番に、○○ビルは長男に相続させる、XXの土地は次男に相続させる、と書いても大丈夫です。
また、長男には○○を相続させる、次男にはXXを相続させる、と人の順番に書いても大丈夫です。
どちらの書き方でも、誰が何を相続するのかが、分かるように書く必要があります。
例えば、長男 太郎と次男 二郎に、預金を相続させる、とだけ書いた場合、長男と次男は、どの預金を、どんなふうに分けて、相続するのかが分かりません。
また、いくつか土地を持っている場合に、長男 太郎と次男 二郎に土地を半分ずつ相続させる、とだけ書いた場合も、全部の土地を半分ずつなのか、共有という形で相続するのか、それとも違う土地を、それぞれ別に相続するのか等、どちらか分かりません。
こういうことがないように、財産は具体的に書く必要がございます。
例えば、東京都新宿区○○1丁目10番○○号の宅地100平米は、長男 太郎に相続させる、××銀行神楽坂支店にある定期預金は、長女 花子に相続させる、といった形で記載しましょう。
さて、自筆証書遺言を書いていたら、字を間違えてしまった。
あり得ると思います。
あまりにも間違いが多く、内容も大きく変わる時には、遺言書を作り直しましょう。
また、そんなに大きな間違えでなければ、加除訂正をすることができます。
加除訂正には決まりがあります。
その決まりに従っていれば大丈夫です。
決まりに従っていない、間違えた加除訂正をした場合には、その加除訂正は、なかったことになってしまいます。
気を付けて加除訂正しましょう。
では、加除訂正はどのようにすればいいのでしょうか。
まず、加除訂正をしたいところを、二重線で消します。
横書きなら、その上に、縦書きなら、右横に修正する内容を自分で書きます。
そこに遺言書に使った印鑑と、同じ印鑑を押します。
余白に訂正したことが、わかるように書きます。
例えば「〇行中、〇字削除、〇字挿入」などです。
そこに署名をします。
さて、最後に自筆証書遺言のメリットとデメリットを考えてみましょう。
まずメリットです。
一人でも作れる、いつでも作れる、費用の負担がほとんどない、遺言の内容を秘密にしておける。
つまり、自筆証書遺言は、紙とペンさえあれば、いつでも一人で作ることができる、というメリットがあります。
一方、自筆証書遺言のデメリットとして、遺言が無効になりやすい、家庭裁判所の検認が必要、遺言書が見つからない時がある、遺言書の内容が誰かに変えられてしまう可能性がある、ということ等があります。
ただし、自筆証書遺言は法務局で保管してもらえることも出来ます。
さらに、その場合には検認手続きは不要となり、また、書き換えされてしまうこともありません。
せっかく一生懸命作った遺言書が、無効になったら意味がありません。
今回は、自筆証書遺言をご紹介しましたが、やはり公正証書遺言での、遺言書作成をお勧めします。