「遺言執行者の指定がない」と相続手続が非常に面倒になる

遺言執行者の指定が無い場合には、何か手続きをするたびに、必要書類に「相続人全員の署名や実印」をもらわなければなりません。

遺言執行者は必ず指定しましょう。

遺言書の内容は自動的に実行されません

相続が発生し、相続人間で特にトラブルもなく、遺言書通りに相続することを決めた。

これで一安心と思いきや、いざ遺言書通りに預貯金や上場株式、投資信託等を換金しようとしたら、金融機関の窓口で出来ませんと言われた。

手続き
手続き
この遺言書では手続きが出来ません。

こんな例も少なくはありません。

遺言書通りに相続することに全員同意しているので、何の問題もないように思うかもしれませんが、遺言書に書かれている内容を実行するには、遺言執行者という存在が必要です。

遺言書さえあれば、名義変更などの手続きが出来るわけではありません。

また、自動的に遺言書の内容通りに、遺産分割されるわけでもありません。

誰かが遺言書を持参して、名義変更や換金の手続きをしなければなりません。

そして、この事務手続きをする人のことを遺言執行者といいます。

そして遺言書において、遺言執行者を指定することが出来ます。

指定
指定
遺言書で遺言執行者を指定することが可能

遺言執行者の指定がない場合には、手続きのたびに必要書類などへ、相続人全員の署名や押印作業が必要となります。
(ちなみに、遺言執行者の指定がある場合には、相続人全員の署名や実印は必要ありません。遺言執行者だけの署名や印鑑で手続き出来ます。)

もしも、相続人のうち1一人でも、何かしらの理由で書類を送ってくれない、連絡がつかない、などの事態になったら、いつまでも遺産分割できないことになります。

その場合、以下のような問題が発生する可能性があります。

  • 換金できない間に、株が値下がりするリスク
  • 遺産の現金を引き出せないので、納税資金が確保できない
  • 一度は遺言書通りに分割することがまとまったが、その後、納得しない相続人が発生

自筆証書遺言で記載している場合、「遺言執行者の指定がない」ことが多いです。

誰からもアドバイスを受けていないことなどが理由の一つだと思われます。

  • 自筆証書遺言
  • 公正証書遺言
  • 秘密証書遺言

など、遺言の形態に関わらず、遺言執行者は遺言書に指定しておきましょう。

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遺言の執行

遺言書に遺言執行者の指定がない場合

仮に遺言書に遺言執行者が指定されていなくても、相続人などの利害関係者が、家庭裁判所に「遺言執行者選任の申立て」をすることは可能です。

申立て
申立て
家庭裁判所に遺言執行者選任の申立てをすることは可能

ただ、相続人間で揉めている場合には、遺言執行者の候補について意見がまとまらない場合も多く、また、選任までに時間もかかります。

遺言できちんと遺言執行者を指定しておけば、わざわざ家庭裁判所に遺言執行者選任の申立てをする必要はありません。

そう考えると、やはり遺言書で遺言執行者の指定をしたほうが賢明です。

遺言執行者は誰が良いのか?

遺言執行者は、遺言書に記載された内容を実行する者です。

遺言執行者には強い権限が与えられることになります。

その執行を妨害した場合には、最悪、相続権の剥奪や刑事罰を科される場合もあります。

刑罰
刑罰
遺言執行者を妨害すると、相続権の剥奪や刑事罰を科される場合もあります。

そして、遺言執行者は弁護士や信託銀行のみならず、相続人もなることができます。

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遺言執行者を複数人選任することは可能

ただ、相続人が遺言執行者に指定された場合には、不公平感などから相続人間で揉める場合があります。

家庭裁判所に遺言執行者の解任請求をする・しないなどの話に展開する場合もあります。

そういうことも踏まえると、利害関係のない第三者(弁護士、税理士、司法書士など)を指定するのがいいかもしれません。

ただし、遺言執行者が業者である場合には注意が必要です。

業者の場合には、遺言の執行手数料がビジネスモデルであり、遺言を執行しないとビジネスになりません。

遺言書の内容通りに遺産分割すると、相続税が大変なことになるなど、必ずしも「遺言書の通りに分割しないほうがいい場合」もあります。

遺産分割
遺産分割
遺言書の通りに分割しないほうがいい場合もあります。

また、相続税対策もしっかり考慮された遺言書だとしても、その遺言書が古い場合には、実際に相続が発生する間に税法が変わり、相続税対策になっていない可能性もあります。

その場合には遺言書の執行を待ち、遺産分割協議などを改めてする必要があるのですが、執行人が業者などの場合には、相続人の不利益に関係なく、すぐに遺言を執行しようとする傾向があります。

それは執行することがビジネスだからです。

仕事
仕事
業者にとっては遺言を執行すること自体が仕事

遺言通りではなく、相続人全員が違う形での遺産分割を望んでいたとしても、遺言書の執行が行われた後では、相続人間での贈与などといった話になってきます。

遺言書の執行後に遺産を再分割することは、高額な贈与税や煩雑な事務手続きなどをすることになります。

もはや現実的ではありません。

そういった点を踏まえると、遺言執行者は弁護士、税理士、司法書士などで、信頼のおける方にするのがベストと言えるのかもしれません。

また、遺言書に「遺言書を執行しない条件」等を設けておくのもいい方法です。

いわゆる特約条項です。

相続人の協議の結果しだいでは、遺言書の内容を執行しない、などと設けるのです。

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遺留分侵害額請求をされても遺言執行者は遺言通りに執行できる?

信頼のおける方を遺言執行者にする

遺言執行者について、税理士法人・都心綜合会計事務所の税理士・天野敬佑が解説しています。

字幕が付いておりますので、音を出さなくてもご視聴出来ます。

遺言書に遺言執行者が指定されていないと相続手続きができない?

動画内容

みなさん、遺言書はとても大切で、大きな力がありますから、遺言書さえあれば、亡くなった方の銀行の預金残高をおろしたりできる、と思われているかもしれません。

ところが遺言書があっても、遺言どおりに手続きができるわけではありません。

また自動的に、遺言書の内容通りに、遺産分割される保証もありません。

では何が必要なのでしょうか?

それは遺言執行者です。

今回は、遺言を実行するために必要な、遺言執行者についてお伝えします。

ある方が亡くなり、遺言書が見つかりました。

相続人の間ではトラブルもなく、遺言書通りに相続することに決まりました。

そして、金融機関に行って、遺言書通りに預貯金や投資信託などを解約、換金しようとしたら、窓口で「できません」と言われてしまいました。

こんな例は少なくありません。

遺言書通りに相続すると全員同意しているのですから、何も問題が無いように思うかもしれません。

でも遺言書に書かれている内容を実行するためには、遺言執行者という人が必要です。

遺言書があっても、それだけで名義変更の手続きや、遺産分割が自動的にできるわけではないのです。

誰かが遺言書を持参して、名義変更や換金の手続きをしなければなりません。

この手続きをする人を遺言執行者と言います。

遺言執行者は、遺言の中で指定しておくことができます。

遺言執行者の指定が無い場合には、何か手続きをするたびに、必要書類に相続人全員の署名や実印をもらわなければなりません。

もしも相続人のうち1人でも、病気や海外赴任などで書類を送り返してくれなかったり、行方が分からず、連絡がつかない、などになったりしたら、いつまでも遺産分割ができません。

その間に、株が値下がりしたり、遺産の現金が引き出せなくて相続税を納められないなど、困ったことになります。

一方、遺言執行者の指定があれば、相続人全員の署名や実印は必要ありません。

遺言執行者だけの署名や印鑑で手続きができます。

自筆証書遺言という、自分で作る遺言の場合には、アドバイス無しで、一人で作るため、遺言執行者の指定が無いことが多いので、注意しましょう。

さて、遺言書に遺言執行者が指定されていなくても、相続人などが家庭裁判所に遺言執行者選任、という申し立てをすることは可能です。

ただこの方法は、既に相続で揉めている場合には意見がまとまらない、また時間がかかる、という弱点がありますから、やはり遺言書で先に遺言執行者の指定をしておくことが良いでしょう。

では、誰を遺言執行者に指定すると良いと思いますか?

遺言執行者は遺言書に書かれた内容を実行する人です。

重大な仕事を任され、強い権限を持ちますので、指定には注意が必要です。

遺言執行者を家庭裁判所に決めてもらう以外にも、税理士や弁護士、信託銀行、そして相続人なども遺言執行者になれます。

このうち、相続人が執行人になるのは、他の相続人から不公平なことをするのではないか、と疑われますので、やめておいた方がいいでしょう。

直接利害関係に無い、税理士・弁護士・司法書士などの第三者が、しかも信頼のおける方を遺言執行者にするのがベストと言えます。

遺言を作る時、また遺言執行者について困った時には、専門家に相談をしましょう。

専門家のアドバイスをもらいながら、しっかりとした遺言を作り、また実行してもらえるように手配をしましょう。

それがご家族に喜ばれる遺言の作り方です。

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