遺言書の存在や保管場所は絶対に周知しておく
遺産分割協議成立後に、遺言書が発見された。
あるいは、新しい遺言書が発見された。
何かと面倒なことになります。
遺言書を作成したら、必ず「遺言書の存在や保管場所」を周知しておきましょう。
遺言書が複数ある場合
遺言書は何度でも書き直しが可能です。
そして、遺言書が複数ある場合は、「後の日付のものが有効」となります。

後の日付のものが有効
ただ、後の遺言書のみが有効となるわけではありません。
それぞれの遺言書はあくまでも有効ですが、その内容が衝突する場合には、その衝突している部分の内容は、後の遺言書が有効となります。
前の遺言書で撤回されるのは、内容が衝突する部分だけで、遺言書全体が撤回されるわけではありません。
そして、
- 自筆証書遺言
- 公正証書遺言
- 秘密証書遺言
と遺言書には種類がありますが、遺言書に優越はありません。
自筆証書遺言より公正証書遺言のほうを優先する、というような決まりはありません。
また、公正証書遺言だから撤回できない、ということもありません。

どんな遺言書でも撤回が可能
後の日付の遺言書が、必ず優先されます。
ちなみにエンディングノートには、遺言書のような法的な効力はありませんので、このような有効や撤回などは関係ありません。
遺産分割協議成立後に遺言書が発見された場合
遺産分割協議成立後に遺言書が出てきた場合、原則、その「遺産分割は無効」となります。

遺産分割協議成立後に遺言書が出てきた場合、その遺産分割は無効
なので、遺産分割をやり直す必要がでてきます。
また、遺言書を隠匿していて、後からそれがバレた場合には、隠匿した者は相続欠格となり相続権がなくなります。
ただし、その欠格者に子供がいる場合、その子が代襲相続人になります。
相続人に変化が生じますので、結局遺産分割は無効となります。
また、相続回復請求権(相続権の侵害に対し財産請求や相続人たる地位の回復を要求する権利)によって、遺言の内容(相続権)の実行を求めることが出来ます。
協議が成立しない場合は、遺言書の内容(実現)を訴訟で請求します。
ただ、相続権を侵害された事実を知ってから5年間、相続回復請求権を行使しない時には、時効によって消滅します。
また、相続開始の時から20年を経過した場合には、無条件で(知らなくても)権利は消滅します。
相続税対策をしっかりする、後に相続トラブルを起こさないためにも、遺言書の存在の確認はしっかり行いましょう。
日付の新しい方が必ず優先される
遺言書が複数あったり遺産分割協議成立後に発見された場合について、税理士法人・都心綜合会計事務所の税理士・天野敬佑が解説しています。
字幕が付いておりますので、音を出さなくてもご視聴出来ます。
動画内容
みなさん、もし遺言書がいくつも出てきたら、どうしますか?
そして遺言書が無い、と思って、遺産分割について話し合いが終わってから、ひょっこりと遺言書が出てきたら、どうしたらいいでしょうか?
今回は、遺言書が複数みつかったり、遺産の分け方について話し合いが終わった後になってから、遺言書が出てきたりした場合についてお話します。
遺言書は、実は何度でも書き直しができます。
「あ、あそこを変えたいな」と思ったら、新しい遺言書を作ることができます。
ですから、遺言書がいくつも出てくることも、あり得るのです。
もし、いくつも遺言書が見つかった場合には、日付が一番新しいものが有効になります。
では、新しい遺言書が見つかったら、前の遺言書は全部取り消しになるのでしょうか?
いいえ、前の遺言が、新しい遺言と食い違っている部分だけ、新しい遺言の方にあわせればいいのです。
前の遺言にしか書いていなかったことは、そのまま前の遺言どおりにします。
また遺言書には3種類あります。
自筆証書遺言、秘密証書遺言、公正証書遺言、の3つです。
でもこれらの遺言の効力は同じです。
どれが優先される、とか、どれが撤回できない、ということはありません。
いずれの遺言書も、日付の新しい方が必ず優先されます。
ちなみに今、「終活」などで話題のエンディングノートには、遺言書のような法的な効果はありません。
そのため、遺言書のように日付が新しい方が有効、とか撤回するにはどうしたらいいのか、といったことは関係ありません。
さて、こんな例を考えてみましょう。
ある方が亡くなりました。
相続人が一生懸命、家や銀行などを探しても、遺言書が出て来ませんでした。
そこで、相続人同士が話し合って、遺産の分割方法や割合を決めました。
みんなで納得したので「遺産分割協議書」を作りました。
ところが、その後になって遺言書がでてきたのです。
こんな時は、どうなると思いますか?
結論から言うと、遺言書が出てきたら、出てくる前に作った遺産分割協議書は無効になります。
もう一度、遺産分割をやり直さなければいけません。
なお、遺言書をわざと隠し、後からそれがバレた場合には、わざと隠した人は相続する権利を失います。
ただ、その失った人に子供がいる場合には、その子が代襲して相続人になります。
この場合も、相続人の名前が違うので、遺産分割はやり直しです。
せっかく遺言書を書いても、見つけてもらえなかったら、書かなかったのと一緒です。
遺言を作ったら、その保管場所を探してもらえそうなところにする、またはエンディングノートに書いておく、などの対策をすることが大切です。
その点、公正証書遺言であれば、遺言書の正本を保管してくれますから、安心できます。
遺言を作ろうと思った時、また新しい遺言を作り直したい時などに、お困りの場合は都心綜合会計事務所にご相談ください。