遺言書にメッセージを残して相続トラブルを回避

遺言書には付言事項という形で、メッセージを残すことが出来ます。

法的な効力はありませんが、被相続人の思いや考えを残すことは、相続トラブル防止のためにも、非常に重要なことです。

相続トラブルになるかどうかは、遺言書の書き方一つで決まることも

遺言書にはエピソードを添える。

んっ?何のこと?自筆証書遺言のこと?

遺言書には自筆証書遺言や公正証書遺言などの遺言形式があり、公証役場で・・。とても重要なことです。

(遺言の種類については、遺言の種類にて詳しく記載しています。)

今回ご紹介する内容は、遺言書の形式や種類の話ではなく、遺言書の中身の話です。

被相続人(亡くなった方)の方が、生前中に相続人間で相続トラブルにならないようにするための、遺言書に書く内容についてです。

なお、相続人間で相続トラブルを防ぐには

などに記載しています。

ただ、そもそも相続人間でトラブルが発生することを防ぐ、トラブルが発生する確率を低くすることが出来たなら・・。

確率
確率
そもそも相続トラブルの発生を低くすることは重要

それには、被相続人の遺言書の書き方一つで、

  • 相続トラブルに発展するのか?
  • スムーズに終わるのか?

決まると言っても過言ではありません。

そして、その方法は「遺言書にエピソードを加える」ことです。

エピソード
エピソード
遺言書にはエピソードを記入する。

遺言書には相続財産の分割に関する内容以外に、付言事項という形で、相続財産の分割に関係ないことも書き残すことが出来ます。

ちなみに、この付言事項には「法律的な効力」はありません。

法的効力
法的効力
遺言書の付言事項には法的効力はありません。

法的な効力はありませんが、この付言事項に

  • このように相続財産を分割した理由
  • 各相続人への想い

を記載する・しない、のでは大きな違いがあります。

例えば、以下のようなことしか記載していない遺言書は揉める原因になりやすいです。(以下、長男、次男、三男が相続人であるとします。)

  1. 相続間で平等に相続すること
  2. 長男に全て相続させる

例えば、1の場合はそもそも平等という概念は人それぞれですし、2の長男に全て相続させるは、他の相続人(次男,三男)が不満を持つでしょう。

不満
不満
何で俺には財産が1つもないんだぁー。

遺言書には付言事項をつけることが重要です。

何の理由もなく相続財産を長男だけとした場合、相続財産をもらえない次男,三男は、被相続人(亡くなった方)から、愛されていなかったと感じやすくなります。

当然、なんで長男だけなんだ!という怒りや不満が発生します。

あるいは、長男が被相続人をだまして、自分に有利なように遺言書を書かせたのか?など疑心暗鬼も発生しやすくなります。

疑心暗鬼
疑心暗鬼
遺言書の書き方次第では、疑心暗鬼が発生することも。

このような相続人間の状態で、円滑に遺産分割協議が終わるのは至難となります。

でも、以下のような理由で、長男に全財産を相続させるといった場合にはどうでしょうか?

そして、それが遺言書の付言事項に記載されていたら。

付言事項の記載エピソード

以下は、付言事項の記載エピソードの例です。


次男と三男へ!

今回、長男に私の財産を全て相続させることにした。このことについて、次男と三男はきっと不満を持つだろう。

ただ、お前たちが嫌いなわけではない。長男と同じように、お前たちも俺の子であり、気恥ずかしいが平等に愛している。

では、なぜ長男に財産を全て相続させるのか?

次男と三男には内緒にしていたことがある。

それは、長男がお前たちのために、大学進学をあきらめたことだ。

お前たちも肌で感じていただろうけど、当時の我が家は家計が厳しかった。

とても3人を大学まで行かせることは出来なかった。

そんな事情を与してか、長男は自分から大学進学を断念し、代わりにお前たち(次男,三男)に行かせてくれと、俺に進言してきた。

また、そのことを絶対にお前たち(次男,三男)には言うなとも言ってきた。

長男は高校卒業後働き、次男は私立大学Kの理工学部、三男は私立大学Wの法学部に入ったよな。

長男がお前達(次男,三男)並みに頭が良かったのに、進学を断念したのはお前達(次男,三男)のためだ。

決して、やりたい仕事が見つかったからではない。当時、長男はお前達(次男,三男)に、そう言っていたと思うが、それが本当の理由ではないんだ。

そして、お前達が大学に行っている間、長男は働き家計も助けてくれた。

長男の助けがなければ、お前達(次男,三男)の学費を4年間も払い続ける余裕は、当時の我が家にはなかった。

そして、お前達(次男,三男)は大学でも勉学に励み、一流企業に就職したよな。

それは、長男の犠牲なくしては、あり得ないことだったんだ。

全ては俺の不甲斐なさから、長男には苦労をかけてしまった。お前達(次男,三男)と同じように、大学で青春を謳歌したかったはずだ。

でも、愚痴の一つも言わずに、後年の俺の介護までしてくれた。

俺から長男に出来ることは、今ある財産を長男に相続させることぐらいしかできない。

次男と三男なら分かってくれると思う。

そして、決して長男だけをえこひいきしているわけではない。

お前達は全員、俺の自慢の子供だ。

俺の相続で揉めるようなことはだけは、絶対避けてほしい。

兄弟、いつまでも仲良くしてほしい。

それが俺の最後の望みだ。

付言事項で被相続人への疑問が減る

上述の付言事項の記載エピソードは、どうでしょうか?

遺言書にこのような内容が記載されているのと、ただ単に長男に全て相続させるとしか記載されていない場合、どちらがスムーズに相続が終わると思いますか?

もうお分かりですよね。

遺言書にはメッセージと、財産分割をそのようにした理由を書いて下さい。

そうすれば、相続人がその財産分割に対して、納得するかどうかは別として、被相続人に対する疑問は減ります。

疑問
疑問
何で私だけ財産が・・?遺言書の付言事項にエピソードや理由を記入することにより、被相続人に対するこのような疑問がなくなります。

それが、相続トラブルを防ぐことに繋がります。

相続トラブルの芽を摘むように遺言書を書く

遺言書にメッセージを残すことについて、税理士法人・都心綜合会計事務所の税理士・天野敬佑が解説しています。

字幕が付いておりますので、音を出さなくてもご視聴出来ます。

遺言書にはメッセージを残す

動画内容

みなさん、遺産相続で一番避けたい、見たくないことは何ですか?

多くの方は相続人、つまり最も親しい親族が、遺産を巡って揉めることだと思います。

争う一族と書いて、「争族」ともいわれる、相続トラブルは、実は少なくありません。

相続トラブルなんて、お金持ちの家だけの話でしょう、と考えますか?

それは違います。

統計によると、相続人同士の話し合いが揉めて、裁判所に持ち込まれたケースの7割は遺産総額が5000万円以下でした。

そして遺産に実家などの不動産が入っているケースが大半です。

つまり、ごくごく普通の家庭で相続トラブルが起きているのです。

そこで今回は、遺言書で、できるだけ相続トラブルの芽を摘んでおくような書き方をお伝えします。

相続トラブルは、誰かが納得がいかないような遺産分割が指示されると発生しやすくなります。

もともと仲が良くても、不公平だ、と不満を持てば揉めてしまうのもわかります。

ですから、相続トラブルの芽を摘むように、遺言書を書けばいいのです。

言い換えれば、遺言書の書き方次第で、相続トラブルになるか、それとも円滑な相続手続きに進めるかが決まる、とも言えます。

では、どうしたら、そんなことが可能なのでしょうか?

それは、遺言書にエピソードを加えることです。

遺言書には、相続財産の分割に関する内容以外にも、「付言事項」という形で書き残すことができます。

ただし、この付言事項には法的な効力はありません。

それでも付言事項に、どうしてこのような割合で相続財産を分割したのか、相続人それぞれへの思い、これを書くと書かないとでは、大きな違いが生まれます。

なぜなら、一見不公平に見える相続財産の分割方法の裏にある、亡くなった方の気持ちがわかるからです。

例えばお父さんが、自分の遺言で3人の子、長男、次男、三男、に残す財産の分割方法を、次のように書いた場合はどうでしょう?

「長男に全てを相続させる」

これだけでは、次男と三男は不満を持つのも無理はありません。

自分達は親に愛されていなかったのか?と疑うかもしれませんし、なぜ長男だけが全部の遺産をもらえるのかがわからず、長男に対して疑いの目をむけるかもしれません。

こうなったら、円滑に相続手続きをすることは、かなり難しいでしょう。

でもなぜお父さんはこんな遺言を作ったのか、その理由がわかれば、次男と三男も納得するかもしれません。

その理由を付言事項に書くことができます。

例えば付言事項に、このようなエピソードを書いたら、どうでしょうか。

長男が大学進学を考える頃、家計が苦しかった。

そこで長男が、自分は大学進学をあきらめて就職するかわりに、次男と三男を進学させてくれるように頼んできた。

そして、このことは絶対に2人には言わない、という約束をした。

長男の働きで、次男と三男はそれぞれ大学に進学し、立派な企業に就職できた。

家計が苦しかったのは、自分のせいなのに、長男は黙ってずっと支えてくれた。

そして、老後の自分の面倒もみてくれた。

そんな長男にできることは、今ある財産を相続させるくらいしかできない。

長男だけをえこひいきしているのではない、ことをわかって欲しい。

3人、これからも仲良くしてほしい。

遺言書にこのようなエピソードが書かれている場合と、全く書かれていない場合を想像してみてください。

どちらの方が円満に相続できるでしょうか?

もうお分かりですね。

遺言書にはぜひ、メッセージと、なぜ財産分割をそのようにしたかという理由を書いてください。

そうすれば相続人全員が財産分割に納得する、とは保証はできませんが、遺言書を書いた人や、財産を貰うことになった人への疑問が亡くなり、相続トラブルを防ぐことにつながるからです。

遺産分割の割合や、自分の気持ちをどう伝えたらいいか、困った時には専門家に相談をしましょう。

きっと依頼者である、あなたの気持ちが伝わるような、遺言書の作り方のアドバイスをもらうことが出来るでしょう。

そして、遺言書の書き方や相続に関するお悩みがある場合には、都心綜合会計事務所にご相談下さい。

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