遺留分権利者は基本的に修正申告
被相続人である父が、相続人である長男に遺産の9割、相続人である長女に残り1割を相続させる遺言を残して死亡した。
その後、長女は長男に対して遺留分侵害額請求をしたが、申告期限までに返還すべき又は弁償すべき額が確定しなかったために、遺言書に基づいて期限内申告をすることに。
この場合、長男を遺留分侵害者、長女を遺留分権利者といいます。
そして、遺留分権利者である長女は、遺留分侵害額請求により遺留分侵害者から財産を取得した場合、既に確定した相続税額に不足を生じたときは、修正申告書を提出します。
遺留分権利者は遺留分侵害額請求により財産が増えることになりますので、基本的には相続税が増え、修正申告をすることになります。
遺留分権利者が修正申告をしない場合
遺留分権利者(この場合は長女)が、確定した相続税額に不足が生じたにもかかわらず、修正申告をしないとどうなるか?
この場合、遺留分侵害者(この場合は長男)からの更正の請求があり、その請求を税務署が認めた場合、税務署から遺留分権利者に対し更正をすることとなります。
要は税務署から長女に対して、相続税の税金が少ないですよ。足りない分を払いなさいよ。という通知書が送られてきます。
遺留分権利者の修正申告の加算税・延滞税
遺留分権利者の修正申告においては、正当な理由があると認められるため、過少申告加算税は賦課されません。
延滞税も、相続税の申告期限の翌日から修正申告書を提出した日までの期間は、延滞税の計算の基礎となる期間に算入されません。
遺留分侵害者は基本的に更正の請求
遺留分侵害者(この場合は長男)は、遺留分侵害額請求により財産が減ることになりますので、基本的には相続税が減りますので、更正の請求をします。
この更正の請求の期間は、返還すべき又は弁償すべき額が確定した日の翌日から4か月以内となります。
なお、遺留分侵害者が納付すべき相続税が遺留分を侵害している状態でもゼロだった場合は、遺留分侵害額請求に基づき返還すべき額が確定したとしても、更正の請求をする必要はありません。
動画で解説
遺留分の請求によって財産の移転があった場合、すでに行ってしまった相続税の申告はどうするのか?ということについて、税理士法人・都心綜合会計事務所の税理士・田中順子が解説しています。
字幕が付いておりますので、音を出さなくてもご視聴出来ます。
動画内容
まずは、これがどういう状況か整理をしてみましょう。
たとえば、お父さんが亡くなって、遺言書の内容を確認したところ、長男には不動産や株式、預金などたくさんの遺産を相続させるのに対して、長女にはほんの少しの現金しか相続させない、という内容が書かれていたとします。
もし仮に、相続人がこの2人だけであれば、長女は遺産に対して25%の遺留分をもつため、それに足りない分を長男に請求することができます。
しかし、具体的にいくら請求できるかがはっきりしなかったり、話し合いがもめたりすると、そう簡単に長男からの支払いは受けられません。
そうしているうちに、相続税の申告期限がやってきてしまいます。
そこでとりあえず、遺言書の内容どおりにいったん相続税の申告と納税を済ませます。
そして後日、長男から長女に支払う金額が確定し、無事に支払いが済んだとします。
そうすると長女は、税務署に申告した時よりも相続した財産が増えるので、相続税の支払いが足りていない状態となります。
反対に長男は財産が減るため、相続税を払い過ぎている状態になります。
これをどうするのか、というのが今回の話になります。
この場合、基本的には財産が移転したあとの内容で、申告をやり直します。
申告期限をすでに過ぎている場合は、修正申告や更生の請求という手続きとなります。
修正申告は、税金を少なく納めている人が追加で納める場合に行うもので、更生の請求は税金を返してもらう場合に行うものになります。
この場合、長女が行うのは修正申告となります。
修正申告をしなくてもバレないのでは?と思われるかもしれませんが、長男が更生の請求を行って、それが認められれば税務署から長女に対して、相続税の納税が足りていませんよ、払ってくださいね、という通知書が送られます。
なお、更生の請求ができるのは、遺留分として、長女に支払う額が確定した日の翌日から4か月以内です。
遺留分の請求でもめている、申告したあとに遺留分の支払いがあったという場合は、税理士に相談して下さい。
そして、相続に関することなら、税理士法人・都心綜合会計事務所にお任せください。