
出国税(正確には国外転出時課税)とは株の含み益にも税金がかかるというもので、贈与や相続で株が海を渡る場合でも、出国税の対象になる場合があります。
相続がきっかけで出国税がかかる場合があります。
ここでいう出国税は、正式には国外転出時課税制度のことを指します。
国外転出時課税制度とは、いわゆる富裕層向けの出国税のことです。
この記事では説明をわかりやすくするため、出国税という言葉に統一して解説します。

この出国税とは、1億円以上の有価証券(株式など)を保有しており、出国までの10年のうち5年を超えて日本に住んでいた方が海外へ移住する際に、株式の含み益に対して所得税を課税するという制度です。
具体的な例を挙げてご説明します。
例えば、あなたが1億円で購入した株が2億円に値上がりしたとします。
もしその株を日本国内で売却した場合、1億円の儲け(売却益)となり、その利益に対して所得税がかかります。

しかし、世界にはこの株の売却益に税金がかからない国(シンガポールなど)が存在します。
もしシンガポールに移住してから株を売却すれば、1億円の儲けを無税で手に入れることができてしまいます。

このような、非課税国への移住による日本での課税逃れを防ぐために作られたのが出国税です。
簡単に言えば、お金持ちの方が多額の株式を保有したまま海外に出国した場合、実際に株を売却したかどうかにかかわらず、その時点での「株の含み益」に対して税金をかける仕組みです。

なお、ご本人が海外へ出国した場合、その株を売却せずに持ったまま5年以内(最長10年以内)に日本に帰国して手続きを行えば、納めた所得税を還付してもらうことができます。
相続の場合も同様に、株式を受け取った海外の相続人が5年以内(最長10年以内)に日本へ移住(帰国)したようなケースでは、納めた税金の還付を受けられる手続きが用意されています。
ただし、こちらも株を売却せずに保有し続けていることが条件となります。
ちなみに、この制度は平成27年7月1日以降の出国からすでに適用が始まっています。
上場株式なんて持っていないから自分には関係ない、と思う方もいらっしゃるかもしれません。
しかし、中小企業のオーナー社長などの場合は注意が必要です。
実はこの出国税、上場株式だけでなく自社株も対象に含まれます。
たとえご自身が出国しなくても、海外に住んでいる推定相続人に自社株が渡った場合、出国税の対象になってしまいます。
自社株をお持ちの方は、くれぐれもご注意ください。
「自分は出国しないから大丈夫」と油断していると、思わぬ落とし穴があります。

このように、出国税は相続がきっかけで発生するケースがあるのです。
そして、それは亡くなった方の準確定申告にも大きく影響してきます。
先ほど解説した出国税は、本人が出国する時だけでなく、以下のようなケースでも課税の対象となります。
相続の場合、この「10年のうち5年を超えて日本に住んでいた」という居住要件は、海外に住む相続人ではなく、亡くなったご本人に対して判定されます。
つまり、亡くなったご本人が要件を満たしており、かつ贈与や相続によって株式が海を渡るような事態になれば、本人の出国時と同じように出国税がかかってしまうのです。
もし相続によって出国税が発生した場合、亡くなった方の準確定申告でこの出国税(所得税)を計算し、納税しなければなりません。
出国税がかかるからといって、準確定申告の期限が延長されることはありません。
通常通り、準確定申告の期限は相続開始を知った日の翌日から4カ月以内となります。
出国税は、株を売却して現金を手にしたわけではないのに多額の税金が発生するため、資金繰りが非常に厳しくなる恐れがあります。
しかしご安心ください。
一定の要件を満たして期限内に手続きを行えば、税金の支払いを5年間(最長10年間)待ってもらえる「納税猶予」という制度も用意されています。
この猶予を受けるためには、担保の提供のほか、日本国内で代わりに税務手続きをしてくれる人(納税管理人)を税務署に届け出る必要があります。
さらに注意が必要なのは、海外に住む相続人がいて、相続発生から4カ月以内に遺産分割協議がまとまらなかった場合です。
この場合でも、いったん準確定申告を行い、出国税を納税する必要があります。

遺産分割協議がまとまっていない状態では、その株式は一時的に「海外に住む相続人」と「国内に住む相続人」の共有財産として扱われるためです。
その後、無事に遺産分割協議がまとまり、国内に住んでいる相続人だけが株式を相続することに決まった場合は、手続きをすれば税金を還付してもらうことが可能です。
ただし、この還付手続きは、遺産分割が確定した日の翌日から4カ月以内に行う必要があります。
期限を過ぎると還付が受けられなくなるため、注意が必要です。
このような事態を防ぐため、もし株式を誰に相続させるか決まっている場合は、必ず遺言書に記載しておきましょう。
遺言書がきちんと用意されており、株式を相続する人が日本国内に住む相続人であれば、準確定申告で出国税を納める必要はありません。
「相続人が海外にいる場合は出国税にも注意」ということについて、税理士法人・都心綜合会計事務所の税理士・田中順子が解説しています。
字幕が付いておりますので、音を出さなくてもご視聴いただけます。
動画内容
今回は日本の被相続人から海外の相続人に株式などの有価証券や出資持分などが相続されると、被相続人つまり「亡くなった人に出国税がかかるかも知れない」という、ちょっと変わった税金のお話をいたします。
出国税とは、海外に有価証券を持ち出して課税を逃れる行為を防ぐための制度です。
例えば値上がりした株を日本で売ると、利益の部分に税金がかかってしまいますよね。
この税金を払いたくないために、あえて税金のかからない国に移住して売ったり、その国に住む親族に株を贈与したりして課税逃れをしようとする人がいます。
こうした課税逃れを防ぐために、その財産が国外に出た時点での株の含み益、つまり値上がり部分については日本のルールで税金を払ってもらうというのが出国税となります。
ちなみに出国税というのは説明上の呼び名です。
本当は「国外転出をする場合の譲渡所得等の特例」という「所得税」の一つとなります。
本当に出国税という名前の税金があるわけではないので、そこは注意をしてください。
今回のポイントは、もし海外に住む相続人に株などの有価証券が渡った場合も、出国税の対象になる場合があるということです。
この場合、課税されるのは亡くなった人つまり被相続人ですから、準確定申告においてその含み益の申告が必要になります。
ただし、亡くなった人の日本での居住年数が少ない場合や、有価証券等の所有額が1億円未満の場合には対象にはなりません。
出国税はきちんと手続きをすれば、納税猶予の制度を受けられるケースもあります。
もし相続人が海外にいる場合で有価証券を沢山お持ちの場合は、税理士法人・都心綜合会計事務所にご相談ください。